大阪メトロが中央線の新車両400系を導入します。大阪・関西万博に向けて増備される最新鋭の車両のわかっている詳細を見てみましょう。
「宇宙船」を意識
大阪メトロの新型車両400系の特徴は、なんといってもその外観。前面をガラス張りの展望形状とし、「宇宙船」を意識した未来的なデザインです。カシオの腕時計「G-SHOCK」にも見えてしまいますが、前方四隅に配置したLEDの照明が先進的な印象を与えます。
デザインを担当したのは、大阪メトロでチーフ・デザイン・オフィサーを務める奥山清行氏。JR東日本の豪華列車「トランスイート四季島」や新幹線E7/W7系などを手がけたことで知られていて、400系の外観はそれらに劣らぬインパクトがあります。
前方のガラス張りのデザインは車内からの展望をよくするためだそうです。地下鉄で前面展望を意識した車両というのは斬新でしょう。
クロスシート車を導入
車内は、クロスシート車を1両導入したことが画期的です。クロスシートは片側1列、計2列が両窓際に並んでいます。イラストを見る限り固定式で、進行方向にあわせた回転や転換はしないようです。
クロスシート車両の定員ははっきりしませんが、横2列での座席定員はロングシートより少なくなりそうです。
地下鉄専用車両で1両がほぼクロスシートというのは、名古屋市交通局7000形以来とみられます。大阪メトロでは初めてです。
座席の背を高める
ロングシート車では座席の背を高くして座り心地を向上。荷物棚は使いやすくするため10cm下げています。
天井を落ち着いた配色とする一方、壁面と床面をより明るくし、モダンな雰囲気に。LED照明を採用し、車内空間を明るくしています。
空調装置には学習・予測制御を導入。日常走行で温度や乗車率などのデータを蓄積し、車内環境に応じた運転に活用します。空気清浄機も全車両に設置しました。
Wi-Fi、モバイル電源を装備
車内吊り広告は廃止し、全てのドア上部に21.5インチの案内装置を設置。2画面構成で乗換案内などを表示します。日本語、英語、中国語、韓国・朝鮮語の4か国語で案内します。
全車両に車内Wi-Fiを導入し、先頭車両にはモバイル用電源(USB)付カウンターも設けます。防犯カメラは全車両に搭載で、非常時には乗務員室で確認可能なシステムとしました。
扉が閉まる際に荷物などが挟まった場合や、開く際に指などが引き込まれた場合に、扉の開閉力を一時的に弱めて容易に抜け出せる仕組みも導入しています。
車両の機器の状態を地上設備へ常時送信するモニタリング機能を設けたほか、2024年度に計画している自動運転の実証実験に向けて、指令所からのデータ伝送機能なども備えています。
バリアフリーへの配慮
バリアフリーの取り組みとしては、近年の新造車両と同様に床面高さを4cm下げて、ホームとの段差を縮小しました。ドアの部分の床に黄ラインを入れ乗降口を識別しやすくし、ドアの開閉時にはチャイムが鳴りドア上部のランプが点滅します。開いているドアの位置を伝える誘導鈴も設置します。
優先座席部のつり革・手すりはオレンジ色とし、座席の色を一般座席と異なる色とすることで優先座席をより識別しやすくしました。
万博見据え
400系の導入は2025年に開催される大阪・関西万博開催を見据えたもの。中央線は2024年度中に万博会場の夢洲まで延伸する予定で、それに備えた新車両です。運転開始は2023年4月の予定です。
400系は6両編成を23編成製造します。20系車両の更新と、24系車両の置き替えとして導入します。24系は他路線へ転用する見込みですが、転用先は明らかではありません。400系の導入費用は約300億円を見込み、日立製作所が製造します。
30000A系も導入
中央線では万博期間の輸送力増強のため、400系とは別に、御堂筋線などで走る30000系を改良した30000A系も10編成導入します。車内設備は400系と同水準です。
30000A系は2022年7月に導入予定で、2025年の万博終了後、谷町線に転属する予定です。
大阪メトロが新型車両を導入するのは12年ぶりで、2018年の民営化後では初めて。それだけに、どちらの車両も意欲的です。登場が楽しみです。(鎌倉淳)