京王線「特急」を実質廃止へ。「準特急」と種別統一、2022年春ダイヤ改正

名前は「特急」、停車駅は「準特急」

京王電鉄が2022年春のダイヤ改正の概要を発表しました。京王線で「特急」「準特急」の種別を統合して「特急」とし、停車駅は「準特急」にするのが大きなポイントです。実質的な「特急廃止」とも受け取れます。

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笹塚、千歳烏山停車

京王電鉄が2022年春のダイヤ改正の概要を発表しました。

最大のポイントは、京王線での「特急」「準特急」の種別統合です。統合後の種別は「特急」で、停車駅に笹塚、千歳烏山と高尾線内の各駅を加えます。

要するに、「特急」「準特急」の停車駅を「準特急」に統一し、名称は「特急」とする、ということです。実質的な「特急廃止」と捉えることもできます。

京王2022年春ダイヤ改正
画像:京王電鉄プレスリリース

2度目の「特急の準特急化」

かつての京王線「特急」は停車駅の少ない種別でした。1990年代までの新宿~京王八王子間の途中停車駅は、明大前、調布、府中、聖蹟桜ヶ丘、高幡不動の5駅のみでした。

2001年に「準特急」の種別を新設し、特急停車駅に加えて分倍河原と北野を停車駅に追加。2012年8月改正では、いったん「特急」の運転を中止し、「準特急」を最高種別とするに至ります。

2013年2月に「特急」が復活したものの、途中停車駅は明大前、調布、府中、分倍河原、聖蹟桜ヶ丘、高幡不動、北野の7駅で、直前の「準特急」のものでした。つまり、このとき1度目の「特急の準特急化」が行われています。

2015年9月改正では、「準特急」の停車駅に笹塚、千歳烏山を追加。それ以降、「特急」「準特急」が併存してきましたが、来る2022年春の改正で「準特急」の名称を廃止し、現「準特急」と停車駅が同じ新「特急」が誕生するわけです。つまり、今回は2度目の「特急の準特急化」ということになります。

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運行本数は維持

新たな「特急」の新宿~京王八王子間の途中停車駅は、笹塚、明大前、千歳烏山、調布、府中、分倍河原、聖蹟桜ヶ丘、高幡不動、北野の9駅になります。

日中時間帯の運行本数はこれまでと変わりませんので、「特急」と「準特急」をあわせた毎時9本(京王線6、相模原線3)の速達列車は維持されます。京王では、種別統合について、「調布以東での乗車機会向上や都営線との乗換利便性向上のため」と説明しています。

京王5000系特急

朝ラッシュ時は減便

2022年春のダイヤ改正では、このほか、平日朝ラッシュ時間帯に上り列車の運行本数を「適正化」します。明記されていませんが減便を実施するようで、定時性の向上を目指します。一方、相模原線の平日20時~21時台には、調布駅での乗換の接続時間などを改善します。

土休日は動物園線を「日中のお出掛けに便利な本数・間隔」にします。これは、増便と運行間隔の平準化を示しているようです。また、相模原線・京王多摩センター~橋本間で土休日の日中時間帯の列車種別・運転本数を見直すことも明らかにし、減便方針を示しました。

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京王ライナーが明大前停車

京王電鉄が最近力を入れている座席指定列車については、平日の京王ライナーの停車駅に明大前を追加します。明大前は上り降車専用・下り乗車専用です。

一部時間帯の下り京王ライナーの所要時間の短縮もおこないますが、上記のラッシュ時の減便と関連するのかもしれません。

また、土休日は朝の京王ライナー「MT.TAKAO号」を増発のうえ、通年運行とします。

京王ライナー新停車駅
画像:京王電鉄プレスリリース
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想定の範囲だが

京王電鉄では、笹塚~仙川間で連続立体化(高架化)工事をおこなっていて、完成時には明大前駅と千歳烏山駅が2面4線となります。両駅で緩急接続が可能になることもあり、明大前に加え千歳烏山駅にもいずれ特急が停車することは予測されていました。

また、笹塚駅は都営新宿線方面への乗換駅であり、特急通過は不便という声は以前からありました。こうしたことから、全列車が笹塚、千歳烏山の両駅停車となるのは想定の範囲とみることができます。とはいえ、連続立体化工事が完成していない段階での停車駅変更には、やや意外感もあります。

ちなみに、笹塚~仙川間の連続立体化工事は、2022年度末までを事業期間としています。実際には、京王は「用地取得の進捗状況を踏まえ、今後の事業工程について精査を行っております」とホームページで告知していて、2022年度末までに完成する見込みはなさそうです。現地の工事状況を見る限り、完成まで相当な期間がかかるでしょう。

最終形ではない

つまり、今回のダイヤ改正は、連続立体化を視野に入れた内容であるものの、いつになるかわからない完成を待たずに、想定されていた停車駅変更のみ先行させた、とも解釈できます。

背景として、新型コロナウイルス感染症による利用者減を受け、運用数を少しでも減らすことを視野に入れているのでしょう。「特急」の停車駅を増やすことで、その次の改正での「快速」や「急行」の整理が検討されているのかもしれません。

速達列車の停車駅増と列車種別の整理は私鉄各社で共通の傾向ですし、京王はもともと種別変更が多い会社です。今回の改正による列車種別が最終形にはならないと考えるのが自然でしょう。(鎌倉淳)

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