東海道・山陽新幹線の割引きっぷ「のぞみ早特往復きっぷ」の設定区間が、2017年11月から大幅に縮小されることがわかりました。山陰、四国発以外は全て廃止となります。JRでは、インターネットの新サービス「スマートEX」の割引プラン「EX早特」を後継と位置づけ、利用を促しています。
「のぞみ」に乗れる割引きっぷ
「のぞみ早特往復きっぷ」は、東海道・山陽新幹線に設定されている紙の割引きっぷです。文字通り「のぞみ」を往復で利用できる企画きっぷで、乗車日の21日前から7日前までの発売。有効期間は7日間で、発売座席数は限定です。
このきっぷを発売しているのは、JR東海、JR西日本、JR四国の3社。それぞれ自社発の発売区間を設定しています。
たとえばJR東海では、名古屋市内・三河安城ゾーン・豊橋ゾーン・浜松~小倉・博多が発売区間です。名古屋(市内)~博多(福岡市内)で約17%引きと、「のぞみ」号が利用できる企画商品のなかでも、割引率が高いのが特徴です。
しかし、JR東海は、2017年10月31日利用開始分を以て、自社設定分の「のぞみ早特往復きっぷ」の発売を終了すると発表しました。かわりに東海道・山陽新幹線の新しい予約サービス「スマートEX」で、「EX早特」などの割引きっぷを設定すると告知しています。
おでかけネットで終了告知
JR西日本は、岡山エリア、福山エリア、広島・山口エリア、山陰エリアから、東京都区内、横浜市内へ「のぞみ早特往復きっぷ」を発売してきました。
また、北九州エリアと福岡エリアからは、東京都区内、横浜市内、浜松、豊橋エリア、三河安城エリア、名古屋市内へも設定しています。
JR西日本が運営するJRおでかけネットで、「のぞみ早特往復きっぷ」を検索すると、『岡山・福山・三原・広島・山口・北九州・福岡エリア発の「のぞみ早特往復きっぷ」につきましては、平成29年10月31日ご利用開始分をもって設定を終了させていただきます』との表示が出ます。
残る山陰エリア発については、2018年3月31日ご利用開始分まで販売が継続されています。これまでどおり米子・松江・出雲市~東京都区内・横浜市内の設定で、価格の変更もありません。
JR四国は変更なし
JR四国は、高松ゾーン、観音寺~宇多津ゾーン、伊予三島・川之江ゾーン、新居浜ゾーン、松山ゾーンから、東京都区内・横浜市内へ「のぞみ早特往復きっぷ」を設定しています。
これについて、JR四国は販売継続を発表しています。同社のこれまでの設定期間は2017年9月30日出発分まででしたが、それを2018年3月31日出発分まで延長するとしています。10月以降も値段や区間の変更はありません。
JR四国の「のぞみ早特往復きっぷ」に関しては、11月以降も変更がないというわけです。
「EX早特」に利用者を誘導
「のぞみ早特往復きっぷ」の後継として、JR東海では、9月30日にスタートする新しいインターネット予約サービス「スマートEX」の割引きっぷを案内しています。
3日前までの予約で割引になる「EX早特」と、21日前までの購入で割引になる「EX早特21」です。10月中をいわば「移行期間」とし、「のぞみ早特往復きっぷ」から「EX早特」へ利用変更を促しているというわけです。
価格比較をしてみると
では、「のぞみ早特往復きっぷ」と「EX早特」「EX早特21」の価格はどのくらい違うのでしょうか。まずは、JR東海設定区間の片道あたりの価格を比較してみましょう。
■名古屋~小倉・博多
のぞみ早特 14,400 円
EX早特(平日) 14,200円
EX早特(土休日) 14,000円
EX早特21 13,000円
ご覧の通り、名古屋発着に関しては、「EX早特」が「のぞみ早特往復きっぷ」より安く設定されています。
ただし、「EX早特」には、名古屋~小倉・博多の設定はありますが、三河安城、豊橋、浜松の各駅発着の設定はありません。これらの駅から小倉、博多へ新幹線で向かう場合、11月以降は、割引きっぷの選択肢が減ることになります。
JR西日本エリアでは?
JR西日本の主な設定区間も見てみましょう。
■岡山~東京
のぞみ早特 14,400円
EX早特(平日) 14,400円
EX早特(土休日) 14,000円
EX早特21 13,000円
■広島~東京
のぞみ早特 15,945円
EX早特(平日) 15,900円
EX早特(土休日) 15,500円
EX早特21 14,000円
■博多・小倉~東京
のぞみ早特 17,485円
EX早特(平日) 17,400円
EX早特(土休日) 17,000円
EX早特21 設定なし
こちらも、「EX早特」が「のぞみ早特往復きっぷ」より、少しだけ安く設定されています区間が多いです。ただ、「のぞみ早特往復きっぷ」では使えた特定市内駅制度が、「EX早特」では使えません。
東京都区内や横浜市内では、特定市内駅制度の恩恵を受けていた利用者が多いと思いますので、そこが別運賃となれば、トータルでは「のぞみ早特往復きっぷ」より「EX早特」はやや割高になります。「EX早特21」では割安になる、という印象でしょうか。
設定区間に変化
JR西日本エリアの「EX早特」は、岡山、福山、広島、徳山、新山口、小倉、博多の各駅発で、東京・品川、新横浜への設定があります。「のぞみ早特往復きっぷ」で設定があった、新尾道、三原、新岩国発の設定が、「EX早特」ではなくなりました。
「EX早特21」では、岡山、福山、新尾道、三原、東広島、広島、新岩国、徳山、新山口の各駅から、東京・品川、新横浜への設定があります。一方、小倉、博多発の設定はなくなりました。
駅によって、「3日前」までの「EX早特」と21日前までの「EX早特21」の設定を分けているわけです。
「のぞみ早特往復きっぷ」が山陰と四国で残されたのは、在来線+新幹線の乗り継ぎ区間のためと思われます。
「スマートEX」は、現時点では新在乗り継ぎの割引に対応していないので、乗り継ぎ区間では「EX早特」を設定できません。そのおかげで、在来線との乗り継ぎとなる、山陰・四国~東京・横浜間の設定が残されたのでしょう。
東京、横浜発でも買える
「のぞみ早特往復きっぷ」から「EX早特」への移管には、改善点もあります。「のぞみ早特往復きっぷ」は、東京・品川、新横浜といった首都圏側が発地に指定されていない「一方通行」のきっぷでしたが、「EX早特」では双方向になります。
つまり、東京・品川発でも、新横浜発でも、これからは山陽エリアへの「のぞみ」の割引きっぷが買えるわけです。片道だけの利用もできますので、「往路は新幹線、帰路は飛行機」といった旅行にも使えます。さらに、「EX早特」には、グリーン車用も設定されます。
「のぞみ早特往復きっぷ」の大幅縮小は、「スマートEX」普及への誘導策とみられますが、首都圏在住者や、グリーン席愛用者には朗報といえる部分も多そうです。(鎌倉淳)