北陸新幹線が2015年3月14日に開業しました。開業により北陸エリアの鉄道路線はJR在来線、新幹線と第三セクターが入り交じる分断状態に。これをフリーゲージトレインで再びつなげよう、という構想があります。旗を振っているのは新潟県です。
かつて大阪~新潟間は、特急「白鳥」「雷鳥」「日本海」「つるぎ」や急行「越後」「きたぐに」が駆け抜ける一大幹線でした。北陸新幹線開業前からすでに直通列車はなくなっていましたが、これを再びフリーゲージトレインでつなげようというものです。実現性はあるのでしょうか。考えてみました。
分断された日本海縦貫線
北陸新幹線の開業により、大阪~新潟の日本海縦貫線は分断されました。高速列車が走る区間を順に挙げていくと、大阪~金沢がJR西日本の在来線、金沢~上越妙高が北陸新幹線、上越妙高~直江津がえちごトキめき鉄道、直江津~長岡がJR東日本の在来線、長岡~新潟が上越新幹線です。
これをフリーゲージトレインですべて再びつなぐとすれば、どうなるでしょうか。北陸新幹線が敦賀まで延伸されますので、大阪~敦賀までが東海道・湖西・北陸線になります。敦賀~糸魚川が北陸新幹線、糸魚川~直江津がえちごトキめき鉄道、直江津~長岡が信越本線、長岡~新潟が上越新幹線、というルートになります。
そもそも論として、耐雪仕様のフリーゲージトレインがきちんとできるのか、という問題がありますが、できると仮定して、そういう列車が走ったときにどういう姿になるのか考えてみましょう。
4時間以内で結べそう
まず、上記のルートの所要時間。停車駅数や軌間改変時間がどのくらいかかるかにもよりますが、おおざっぱにいって、大阪~敦賀が1時間30分、敦賀~糸魚川が1時間、糸魚川~長岡が1時間、長岡~新潟が20分。合計3時間50分ほどで、4時間以内で結べそうです。東海道・上越新幹線経由では大阪~新潟間が4時間30分ほどかかりますので、それよりは早くなります。また、3時間50分ならば「4時間の壁」を破りますので、対航空機でも優位に立ちます。
では、そのためのコストはどのくらいかかるのでしょう。必要な工事は、糸魚川駅と長岡駅に新在直通のための接続線を建設することです。いくらかかるかはわかりませんが、新路線をまるまる作るわけではありませんから、巨費とまではいかないでしょう。
低速新幹線なので問題ない
フリーゲージトレインで問題となるのは速度です。九州新幹線長崎ルートのフリーゲージトレインは山陽新幹線に乗り入れない予定ですが、その理由の一つが、フリーゲージトレインの最高速度が時速270㎞程度の見込みで山陽新幹線の時速300㎞に及ばないという点です。
しかし、北陸新幹線の最高速度は時速260㎞、上越新幹線に至っては時速240㎞で、どちらも低速新幹線です。したがって、フリーゲージトレインも問題なく最高速度で走れます。最後は線路容量の問題ですが、両新幹線は余裕があります。
夢物語ではないが
こう考えていくと、フリーゲージによる「日本海縦貫新幹線」は、あながち夢物語ではない気もします。さらに問題を挙げるとすれば、大阪~新潟間の流動がそれほど大きくないことでしょうか。現在、伊丹~新潟の航空便は小型機が1日10往復程度で、総定員は1000人程度とみられます。これは新幹線1列車分の供給で足りるほどの少なさです。途中駅間の需要もそれほど大きいとは思えないため、利用者は限られます。つまり費用対効果には疑問が残ります。
しかも、JR東日本やJR西日本は、「お金を出してまでやらなくて結構」という立場でしょうから、費用を出す可能性は低そうです。したがって、作るとすれば、新潟県が接続線工事費の多くを負担しなければならないでしょう。
とはいえ、3度も軌間可変し新在を自由に駆け抜ける鉄道は、実現すればフリーゲージトレインをフル活用するモデルケースになるかもしれません。将来的にこうした使い方は全国各地で有効なはず。日本全国の鉄道で新在直通が実現すれば、鉄道はもっと便利に、利用しやすくなるのではないかと思います。