2040年代までに開業する鉄道新線全計画【3】新幹線はどうなる?

北海道新幹線以外は未着工

新春企画として、2040年代までに開業しそうな鉄道新線計画をまとめています。

まだ事業着手していない路線でも、計画の規模によっては、2040年代に開業することは可能な路線があります。

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2040年代までに開業する鉄道新線全計画。最新情報を総まとめ!

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新金貨物線旅客化

新金貨物線は、JR新小岩信号場とJR金町駅を結ぶ総武線の貨物支線の通称です。

近年、新金貨物線を経由する貨物列車は激減しており、1日数往復が走るのみ。そのため、この路線を旅客化して活用しようという構想があります。これが、新金貨物線の旅客化です。

新小岩駅~金町駅間の7.1kmに、普通鉄道もしくはライトレール(LRT)を走らせる計画です。2022年8月から、葛飾区がJR東日本、国土交通省、都などと検討会を開いて計画を検討しています。

途中駅は7駅案と10駅案がありますが、7駅案が有力のようです。

新金貨物線
画像:『新金貨物線旅客化の検討資料』(葛飾区)

国道6号線との踏切問題などがあり、現時点で全面的な旅客化は難しい模様です。そのため、まずは踏切問題のない新小岩~新宿間を第一期として開業後、新宿~金町間を第二期として整備する段階的整備を模索しています。国道6号は立体化する計画があるので、第二期はそれを待っての開業になるでしょう。

葛飾区では、2030年ごろの第一期開業を目指しています。あと5年程度で本当に開業できるかといえば難しいでしょうが、新線を作るわけではないので、旅客化が決まれば、意外と早く進むかもしれません。

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横浜地下鉄ブルーライン

横浜市営地下鉄ブルーラインは、あざみ野-湘南台を結ぶ40.4kmの路線です。あざみ野から先、新百合ヶ丘まで約6.5kmを延伸する計画があります。2019年1月23日に、横浜市と川崎市が事業化を決定しました。

あざみ野~新百合ヶ丘間に4駅を設置します。嶮山(あざみ野ガーデンズ付近)、すすき野、ヨネッティ王禅寺付近です。終点、新百合ヶ丘駅では小田急線と接続します。

開業目標は2030年とされていますが、2024年末時点で工事に着手しておらず、後ろ倒しされるのは確実です。

2024年05月21日の横浜市議会で、市側は、「高速鉄道3号線延伸事業の推進は、昨今の建設物価の高騰や新型コロナウイルス感染症の影響による鉄道需要の減少など新たな課題への対応に時間を要している状況」と説明しています。事業費が高くなり、需要予測は低くなっていて、事業計画の見直しが必要になっていることを示唆しています。

市側は「課題の解消に向けて引き続き取り組むとともに、早期の事業着手に向けた調査・設計の深度化や関係機関との協議などを進めてまいります」とも述べており、「検討段階」に後戻りしたような印象も受けます。

横浜市営地下鉄ブルーライン新百合ヶ丘延伸
画像:横浜市報道発表より
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宇都宮ライトレール

宇都宮ライトレール(ライトライン)は栃木県宇都宮市と芳賀町を結ぶLRTです。

JR宇都宮駅東口~芳賀・高根沢工業団地14.6kmを結んでいます。さらに、宇都宮西口、東武宇都宮駅を経て教育会館前まで約5kmの延伸が計画されています。

JR宇都宮駅西口から教育会館前まで、12箇所の停留所が計画されています。2025年度に軌道事業の特許申請をおこう予定で、2030年代前半の開業を目指します。

さらに、東武宇都宮線に乗り入れる計画もあります。東武宇都宮駅ビルの建て替えにあわせたタイミングで東武線に乗り入れ乗り入れられるよう線路を接続する構想です。ただし、東武直通はまだ構想段階で、具体的な計画はありません。

宇都宮ライトレール延伸
画像:宇都宮ライトレールパンフレット
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北陸新幹線

北陸新幹線は、高崎駅~敦賀駅間470.6km(実キロ)が開業済みです。敦賀~新大阪間はルート詳細を検討中で、着工時期や開業時期は未定です。

敦賀以西には、東小浜付近、京都、松井山手付近、新大阪に駅ができます。いずれの駅も在来線駅と併設される予定です。

京都駅の位置やその前後のルートは未決定で、「東西案」「南北案」「桂川案」の3案があり、南北案と桂川案に絞り込まれたようです。南北案は京都駅に接着し、桂川案は桂川駅に接着します。

工期は、南北案が20年、桂川案が26年です。新大阪駅の工期は25年です。そのため、全線開通までの工期は、南北案が25年、桂川案が26年となります。

南北案で決定し、2025年に着手すれば、2050年の開業となります。ですので、いますぐ着手しても、2040年代の全線開業は困難です。ただし、南北案で京都まで暫定開業するならば、計算上は、2040年代に開業することが可能です。

北陸新幹線延伸地図
画像:国土地理院地図を加工
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秋田新幹線新仙岩トンネル

秋田新幹線では、仙岩峠に新トンネルを掘る構想があります。田沢湖線の赤渕~田沢湖間の約15kmで、2021年7月に、秋田県とJR東日本が整備計画の推進に関する覚書を交わしました。

トンネル計画の詳細は明らかになっていませんが、新線区間の最高速度を160km/hに引き上げた場合、秋田新幹線の所要時間が約7分短縮します。

覚書締結時に、JR東日本は700億円のうち6割(約420億円)までを負担する方針を表明し、実現への意欲を示しました。

工期は11年を見込みます。開業予定は未定ですが、環境アセスなどを含めると15年程度はかかるとみられ、早くても2040年代になりそうです。

新仙岩トンネル
画像:秋田県
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山形新幹線米沢トンネル

山形新幹線では、板谷峠に新トンネルを掘る構想があります。奥羽線庭坂~関根間の約23kmで、JR東日本が2015年に基礎的な調査を開始しました。2022年10月には、山形県とJR東日本が整備計画の推進に関する覚書を交わしました。

新トンネルの仮称は「米沢トンネル」。山形県とJRが2024年度までの予定で地質調査などをおこなっています。新トンネルは200km/h以上で走行できる新幹線仕様で建設される見通しで、完成すれば所要時間が10分程度短縮します。

建設には15年ほどかかる見通し。2025年ごろに事業化が決まったとして、こちらも開業は2040年代になりそうです。

米沢トンネル
画像:山形県

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他の新幹線は?

整備新幹線として最後に残る西九州新幹線の新鳥栖~武雄温泉間については、フル規格で作る可能性もありますが、現時点では佐賀県が受け入れておらず、見通しは立っていません。

整備新幹線の建設が一段落すれば、「次の整備新幹線」の建設が視野に入ります。とくに、四国新幹線や東九州新幹線で沿線での建設運動が盛り上がりつつあります。しかし、実現するにしても、2050年代にできれば早いほうで、実際には2060年代以降になるでしょう。

【続きはこちら】
2040年代までに開業する鉄道新線全計画【4】

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