整備方針が決まっていない九州新幹線長崎ルートの新鳥栖~武雄温泉間について、与党の検討委員会が「フル規格」の結論を出すようです。
与党検討委が整備方針
長崎新幹線は博多~長崎間を結ぶ整備新幹線です。博多~新鳥栖間は既存の九州新幹線を使い、武雄温泉~長崎間は路線を新設します。残る新鳥栖~武雄温泉間は、在来線の線路を活用し、フリーゲージトレインを走らせる構想でした。
しかし、フリーゲージトレインは開発が頓挫し、すでに導入が断念されています。当面は、新幹線と在来線を武雄温泉駅で乗り継ぐ「リレー方式」で2022年に暫定開業し、新鳥栖~武雄温泉間の整備方式について、議論が続いていました。
これについて、長崎新幹線の今後の整備方針を話し合う与党検討委員会の会合が2019年8月5日に開かれます。佐賀新聞8月1日配信によりますと、「与党検討委員会がフル規格で整備する方針を示す」とのことで、「佐賀駅を経由するルートが適当であるとの見解をまとめる方向」で調整しているようです。
これまでにない展開
整備新幹線の建設スキームでは、地元自治体の同意が欠かせず、財政負担や在来線の移管にも自治体が応じなければなりません。しかし、佐賀県は新幹線の整備を求めておらず、当然、財政負担や在来線移管にも応じる姿勢を見せていません。
このため検討委がフル規格の整備方針を示せば、地元が求めていない新幹線の建設について、与党が整備方針を示すことになります。与党が地方自治体に新幹線を「押し売り」するわけで、これまでにない展開です。整備新幹線のスキームができてから、初めてのことでしょう。
実際には、佐賀県が同意しなければ着工はできないとみられますが、こうした与党の姿勢に、佐賀県がどう対応するかが今後の焦点となりそうです。
JR佐賀駅ルートに
上述したように、フル規格で建設する場合、JR佐賀駅を通るルートを前提とする方針も決まりました。
佐賀空港の機能を高める「南ルート」や、長崎自動車道沿いに建設し費用を抑える「北ルート」を推す声もありますが、開業後の採算面でもっとも有利な佐賀駅ルートを示しました。この点は、現実的な姿勢といえそうです。
与党は8月末にまとめる2020年度予算の概算要求に、環境影響評価(アセスメント)の費用などを盛り込む方針です。そのため、現段階で「フル規格」の結論が必要だったのでしょう。
とはいえ、史上初の「押し売り新幹線」が実現するのか。まだ先は見通せません。