九州新幹線長崎ルート(長崎新幹線)が、新幹線と在来線を乗り継ぐ「リレー方式」で開業する方向になりました。与党の検討委員会が最終調整に入ったそうです。フリーゲージトレインの開発は継続されます。
開業時期めぐり、長崎、佐賀が対立
九州新幹線長崎ルートは博多~長崎間を結ぶ路線です。フリーゲージトレイン(FGT)を開発・導入し、博多~新鳥栖間を現在の九州新幹線と共用、新鳥栖~武雄温泉間で在来線を走行し、武雄温泉~長崎間はフル規格の新幹線を新たに建設する予定です。開業時期は2022年度とされてきました。
しかし、フリーゲージトレインの開発は難航し、国土交通省は2015年12月に、FGTによる2022年度の全面開業は困難と公表しました。
これを受けて、開業時期を遅らせるのかが焦点になっていましたが、沿線の長崎県は予定通りに開業させるよう主張し、リレー方式も容認する姿勢を示していました。一方、リレー方式による開業が全線フル規格化への議論に進む可能性もあり、財政負担を嫌う佐賀県は、開業が遅れてもフリーゲージトレイン導入を優先するよう求めてきました。
与党がリレー方式で最終調整
朝日新聞2016年2月24日付によりますと、与党は2016年1月に、整備新幹線建設推進プロジェクトチームの中に九州新幹線長崎ルートの整備計画を協議する検討委員会を設置し、長崎、佐賀両県知事の意見を聞くとともに水面下で調整してきました。
最終的に検討委は、2022年度までに、新幹線と在来線を武雄温泉駅で乗り継ぐ「リレー方式」で開業させる方向で調整に入ったとのことです。佐賀側が長崎側の主張するリレー方式受け入れを検討する姿勢を確認。今後、リレー方式での2022年度開業を基本に、財政面で佐賀が不利益を被らない方策などを国交省と協議し、3月までに正式な与党案として取りまとめるそうです。
リレー方式が実現すれば、現行の特急「かもめ」より博多~長崎間の所要時間は短縮されます。一方、武雄温泉駅で乗り継ぎが必要になり、対面乗り継ぎにするなら、新たに設備を整える必要もでてきます。
確実に実現可能な方向に
フリーゲージトレインについては、引き続き開発が続けられます。現在のロードマップでは、量産車両が揃うのは2025年度になるとのことで、長崎新幹線はその段階で車両をフリーゲージトレインに切り替えることになるようです。
とはいえ、これまでのフリーゲージトレインの開発経緯からして、2025年度の量産車両導入というスケジュールも怪しいというのが、多くの関係者の偽らざる観測でしょう。
狭軌と標準軌を軌間変更できる高速鉄道のフリーゲージトレインは、世界のどこでもまだ開発されていません。実現不透明な技術を前提にした鉄道建設をこれ以上続けるわけにもいかず、「リレー方式」という確実に実現可能な方向に舵を切ったといえるでしょう。
フリーゲージトレインが実現すれば導入する。実現しなければリレー方式から全線フル規格を目指す。そういう政治的判断だと思います。
とどのつまり、長崎新幹線の最終形は、もう少し時間が経たなければ見えてこないということでしょうか。(鎌倉淳)