「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」が、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産登録に推薦されることが決まりました。2015年秋に文化遺産の候補を事前審査する諮問機関であるイコモス(国際記念物遺跡会議)が現地調査を行い、2016年春に登録の可否を勧告する見通しです。登録勧告がなされれば、2016年夏に世界遺産に正式登録されます。
長崎の教会群は、現存する国内最古のキリスト教会で国宝の「大浦天主堂」(長崎市)や、禁教下に潜伏キリシタンが信仰を守った「天草の崎津集落」(熊本県天草市)など13の文化財で構成されます。なかでも、「頭ヶ島天主堂」(長崎県上五島町)や「旧野首教会堂」(同小値賀町)など、五島列島の離島に点在する教会群は魅力です。
1年遅れで推薦へ
長崎の教会群は、文化庁の公募を勝ち抜いて暫定リスト入りをし、2013年の推薦候補になっていました。ところが、その年は内閣官房が「明治日本の産業革命遺産」を推したため、長崎の教会群は推薦を逃しています。当時の経緯はやや不透明で、それについては「「明治日本の産業革命遺産」世界遺産候補の政治的な決定は残念。推薦決定過程の透明化を」の記事で書きました。つまり、長崎の教会群は、1年遅れでようやく登録推薦にこぎ着けたわけです。
1年先行した「明治日本の産業革命遺産」については、2014年9月26日から、イコモスの現地調査が始まります。ただ、登録範囲が岩手県から鹿児島県までと広すぎて、イコモス勧告ですんなり「登録」となるかは予断を許しません。それに比べると、「長崎の教会群」は登録範囲も限定的で、テーマもはっきりしており、登録勧告に至る可能性は高いとみられます。
禁教令の重みを伝える場所
実際に世界遺産候補の場所をいくつか回ってみましたが、五島列島の小さな島々に、見事なキリスト教会が残されていることにちょっとした感動を覚えます。ヨーロッパから見れば、極東の島国のさらに辺境です。そんな場所に潜むように暮らしてきたキリシタン達の力強さと、禁教令300年の重みが伝わってくる場所です。
世界遺産登録が実現すると、ブームが起こるのは皆様ご存じの通りです。となると、長崎の教会群が正式決定される2016年夏には、長崎ブームが起こる可能性が高く、五島列島への旅行者も急増するでしょう。
五島列島は決して広いとはいえない島々ですし、宿泊施設や交通機関も限られています。ブームとなると混雑して行きにくくなるのは間違いありません。離島の教会群は静けさも魅力ですから、ぜひ一度、静かな登録前に訪れてみてはいかがでしょうか。