稲城市が、武蔵野南線の府中本町~稲城間の旅客化を目指す方針を明らかにしました。リニア橋本駅開業を見据え、京王相模原線との接続を狙った形ですが、実現可能性はあるのでしょうか。
武蔵野線の貨物専用区間
武蔵野南線は、武蔵野線の府中本町~鶴見間を指します。この区間は貨物専用となっていて、旅客列車は不定期列車が走るだけで、旅客化はされていません。
沿線自治体から旅客化を望む声があるものの、これまで実現に向けた動きはありません。

稲城延伸を要望
この点について、沿線自治体の稲城市は、2026年2月24日、武蔵野南線旅客化を求める市民からの意見に答える形で、ウェブサイト上に新たな方針を掲載しました。
まず、武蔵野線旅客化について、2015年に東京都が公表した「広域交通ネットワーク計画について」や2016年の国土交通省の交通政策審議会答申において、具体的なプロジェクトとして位置づけられていないことを踏まえ、「実現性は非常に厳しい」としました。
そのため、稲城市としては、「2027年以降のリニア中央新幹線の開通及び京王相模原線橋本駅付近の新駅開業に伴う武蔵野線からのアクセス向上」を目的に、「府中本町駅から武蔵野南線を稲城駅まで延伸すること」に注力し、東京都に対して要望をおこなっていることを明らかにしました。

稲城駅付近で立体交差
武蔵野南線は、京王相模原線と稲城駅付近で立体交差します。稲城駅のホーム端から武蔵野南線の高架までの距離は、50~60m程度にすぎません。したがって、武蔵野南線に駅ホームを設置したら、京王線との乗り換えは容易でしょう。
旅客列車折り返しのため、本線の両側に線路を足して4線化したうえで、ホームを設置する必要がありますが、地図を見る限り、用地買収をすればスペースは確保できそうです。
※配信先で地図が崩れる場合、こちらをご覧ください。
リニアアクセスが容易に
実現した場合、武蔵野線沿線から京王相模原線沿線へのアクセスが容易になります。京王相模原線の終点橋本駅には、リニア中央新幹線の駅ができる予定なので、武蔵野線沿線からリニアへのアクセス経路にもなるでしょう。
そう見ると、武蔵野線稲城延伸は、東京都多摩地区や埼玉県南西部と東海・関西をつなぐ新ルートを構成する役割を担えそうです。広域的にみて有用な路線となる可能性があります。
旅客化が進まない理由
では、この構想が実現する可能性はあるのでしょうか。それを考えるには、武蔵野南線の旅客化が進まない理由をおさらいしておく必要があるでしょう。
川崎市は以前、武蔵野南線の旅客化を求めていましたが、断念した経緯があります。
その理由を2010年に示していて、それによりますと、同線が貨物列車の基幹路線であり、終日の運行本数が多いこと、貨物列車が運行中の工事になることから、工事が長期化して事業費が増大すること、トンネルが地下深く設置されているため、適切な駅間距離での駅の新設が困難であることなどを挙げています。
府中本町~稲城間の旅客化に限った場合でも、貨物列車の本数が多く、工事が長期化することに変わりはなさそうです。ただ、トンネル内に駅を作る必要はありませんし、工事区域は稲城駅周辺に限られますので、工事規模自体はそれほど大きくはならないでしょう。
とはいえ、昼夜分かたず列車が走る貨物線の両側に駅と側線を新設するのは大変で、事業費は高額になるかもしれません。費用便益費を計算した場合、割に合わない結果になる可能性も高そうです。(鎌倉淳)






















