JR東日本など3社は、鉄道会社単独では維持困難な路線を国策として残す場合に、維持に対する支援を要望しました。赤字ローカル線を、災害に備えた冗長性や、平時も含めた貨物輸送経路の確保のために維持する場合を想定したものです。
地域モビリティ検討会
国土交通省は、2025年12月24日に「鉄道事業者と地域の協働による地域モビリティの刷新に関する検討会」第2期の第3回会合を開催しました。その資料で、JR東日本、JR西日本、JR九州の3社が、過去の会合で委員から指摘された事項に対し回答した内容が明らかにされました。
項目はいくつかありますが、注目なのは、宮島香澄委員の「再構築目的だけでなく、さらに必要と考える制度やスキームについて具体的な意見はあるか」との質問に対する回答でしょう。
2023年の地域交通法改正で、ローカル鉄道の再構築に関する制度が創設・拡充されましたが、さらに必要な制度がないかを問うたものです。それに対するJRの回答を詳しくみていきましょう。

ローカル線再構築に関する要望
JR東日本、JR西日本、JR九州の3社は共同で、ローカル線の再構築に関する要望として、次の4点を挙げました。
1 鉄道からモード転換後の土地の扱いや鉄道施設(駅・橋梁等)の利活用や撤去の取扱いに対する支援。
2. モード転換した場合における、転換後のモードの事業運営に対する支援。
3 事業者単独では維持が困難な路線を、災害時や有事等に備えたリダンダンシー機能の保持や貨物輸送等の観点で国(や地域)が鉄道として残すべきと判断する場合、その路線の維持・運営に対する支援。
4 省人化モードの開発や刷新感ある地域づくりに相応しい自動運転の社会実装に向けた推進。
「国策」に対する補助を求める
これら4つの要望のうち、目を引くのは3でしょう。
端的にいえば、災害時の迂回路や、平時も含めた貨物輸送といった「国策」のために、赤字ローカル線を維持するのであれば、国や自治体が補助してほしい、ということです。
JR東日本などは「旅客鉄道」を運営する「民間企業」ですので、「貨物列車の経路」や、災害のような「国難」対策のために、自社の旅客収入による内部補助でローカル線の赤字を補填するのは不合理ではないか、という指摘とも受け止められます。
県境区間の維持のため?
JR各社のローカル線では、輸送密度が県境区間で極端に低くなっていることがあります。県境区間は山岳地帯であることが多く、維持費用もかさむのに、旅客は少ないのです。
しかし、そうした区間を維持することがリダンダンシー(冗長性)機能として重要で、災害時の貨物列車の運行などに役立つのです。ならば、その維持には国の支援があってもいいのではないか、という理屈といえます。
当てはまるとすれば、東北地方や中国地方のローカル線の県境区間でしょうか。たしかに、これらの区間は鉄道ネットワークの維持のために存続している側面もあります。
貨物調整金と似た制度?
ローカル線の議論では、「鉄道ネットワーク」という表現が出てきます。ネットワークを維持するのが国策であるのならば、極端に旅客利用の少ない県境区間などに対しては、補助の枠組みがあってもいいのかもしれません。
整備新幹線の並行在来線を運営する第三セクター鉄道には、貨物路線維持を名目とした貨物調整金という制度があります。
貨物調整金は、現に貨物列車が走っていなくても、災害時に備えた区間には、貨物経路確保支援として支払われている場合があります。こうした制度を、JRとして要望したと考えることもできるでしょう。
転換バスへの支援も求める
要望事項のうち、2も注目です。簡単にいえば、ローカル線をバス転換した場合に、転換したバスにも支援してほしいということです。
これまでのJRの鉄道路線廃止の枠組みでは、廃線時にJRが地元に「支援金」という名の手切れ金を渡して、あとは地元に任せるという形が主流でした。
しかし、この枠組みは地元の抵抗が強く、最近のJR各社は、鉄道廃止後もバスの運営にかかわり続ける形が増えています。
そうなると、JRとしては「廃止後は地元に任せておしまい」というわけにいかなくなります。赤字の地域交通をJRが維持し続ける形になり、長期にわたり負担をしなければなりません。
そのため、転換後のバスの事業運営に対し、JRとして支援を求める姿勢を示したのではないでしょうか。
「民鉄より本数が少ない」は認める
そのほかの、質問に対する回答もざっと見てみましょう。
まず、2023年改正地域交通法により認められた「協議運賃」について、「活用されていない」という指摘がありました。これに対しては、「制度の活用についても、今後検討を深めてまいります」と回答し、ローカル線への協議運賃(割増運賃)の適用に前向きな姿勢を示しました。
次に、「JRは民鉄に比べサービスレベル(運行本数・車両数)が低いのではないか」との指摘に対しては、「都市部の路線についてはJR、民鉄とも提供している輸送力に大きな差異は無い」としました。これは首都圏や関西圏のJRの輸送力を見れば、その通りでしょう。
一方で、地方ローカル線については、「JR路線の運行本数は民鉄・3セクと比較して少ない傾向がある」と認めました。
そのうえで、「省力化・スリム化を行うことにより地方ローカル線の持続的可能性を高めているためであり、公的資本や補助金等を活用した運営スキームとなっていないことも要因の一つ」と釈明しています。
これは受け止め方にもよるでしょうが、「補助金なしで維持を求められているのだから、最低限の運行本数になってしまうのは仕方ない」と開き直っているようにも感じられます。ある意味、率直な感想ですが、現在のJRローカル線の課題を凝縮した一文にも読み取れます。
通学定期に見直しの余地
通学定期の割引など、「本来は事業者が負担しなくてよいものはないか」という指摘もありました。これに対しては、「通学定期券の他に、学生割引や各種障害者割引等については、事業者の負担の在り方について見直しの余地がある」と答えました。
学生や障害者に対する割引について、国や自治体にも負担を求める可能性を示唆した形です。
ただし、「地方ローカル線においては、収入に対して路線の維持に係るコストが大きいため、通学定期負担の軽減等により収入が増えたとしても、路線全体の収支に対する改善は限定的」との考えも示しました。
赤字ローカル線の議論において、通学割引の負担割合が減ったとしても「焼け石に水」なので、通学定期の問題はそれほど重要でないという見解を示した形です。
JRの悲願も押し込んで
では、運賃関連でJRが重要視しているポイントは何でしょうか。それは、通学定期の負担に対する回答に付け加える形で示されていました。
この質問は、通学定期の割引を例示して「本来は事業者が負担しなくてよいものは他にないか」というものでした。
これに対し、JR側は最後に「通学定期負担等に加え、運賃制度の見直し(インフレに対応した柔軟な価格設定等)についても課題」と付け加えています。
よく読むと、質問とは直接関係がありません。直接関係ない質問に対し、「総括原価方式の運賃制度の見直し」を回答として押し込んできたように受け止められます。
総括原価方式による運賃制度により、JRは運賃値上げを厳しく制限されています。その見直しこそが、JRが切実に求めていることなのでしょう。(鎌倉淳)
























