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JR東日本、ローカル線維持「公平性に問題」。有識者会議で指摘

地域モビリティの刷新に関する検討会第2回会合

JR東日本、西日本、九州の3社は、国土交通省が開催したローカル線に関する有識者会議でヒアリングに応じました。JR東日本は、ローカル線に対する過度な内部補助は「利用者の多い線区に対する公平性に問題がある」と指摘しました。

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地域モビリティ刷新検討会

国土交通省は、2025年11月25日に「鉄道事業者と地域の協働による地域モビリティの刷新に関する検討会」第2期の第2回会合を開催しました。JR東日本、JR西日本、JR九州の3社がヒアリングに応じ、ローカル線のあり方に対する意見を述べました。

具体的な意見が多かったのは、JR東日本です。「鉄道は大量・高速・定型輸送が得意な一方、路線維持にかかる固定費やメンテナンスの人員が膨大である」と大前提を説明し、「鉄道と他のモビリティのベストミックスにより、今よりも便利で持続可能性の高い交通体系の実現が可能」と主張しました。

交通体系を考える際は、鉄道だけではなく、他の交通機関と組み合わせて検討することが重要という考え方を明らかにしたわけです。

陸羽東線

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内部補助という大論点

今回の検討会では、JRがローカル線維持に投じている内部補助についてが、大きな論点となっています。

JRは国鉄から継承した赤字ローカル線のほとんどを維持してきました。その赤字は、大都市圏などの黒字で補っています。JRの完全民営化の際に国土交通大臣から示された「現に営業する路線の適切な維持に努めるものとする」という指針に従っているためです。

これについて、JR東日本は「鉄道事業の収入・コスト構造が大きく変化し、内部補助の規模も拡大している」と、時代の変化を指摘。「内部補助についてすべて否定するものではないが、過度な内部補助は、本来高品質なサービスを提供するべき利用の多い線区に対する公平性の観点からも問題である」とあるという考え方を示しました。

利用者の多い線区の輸送改善に投じるべき費用が、ローカル線維持のために消えていくことは、不公平な側面がある、という趣旨です。

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支援の枠組みも求める

そのうえで、「事業者単独では維持が困難な路線を鉄道として残す場合、維持運営に対して国や地方公共団体の支援が入るような仕組みの構築」を求めました。

現状は、JRから分離して「再構築」をおこなえば、国や自治体からさまざまな支援が得られますが、JRのままでは、支援制度は限られます。JR東日本としては、同社の路線として維持する場合も、公的支援を受け入れやすくする仕組みを求めた形です。

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老朽化、災害激甚化も懸念

そのほか、「国鉄から継承した鉄道インフラの老朽化」や「自然災害の激甚化」に関する懸念も表明しました。

老朽化や近年の激甚災害の増加により、ローカル線でも大規模修繕や設備強化の必要性が高まっています。しかし、工事費が膨大であることから、利用者の少ない路線への投資について「株主の理解を得ることは困難」と説明しました。

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JR西日本、九州も訴え

JR西日本も、ローカル線について「設備や車両が老朽化し、更新時期が迫っている」「人材確保が困難」と、JR東日本と同様の懸念を示しました。そのうえで、内部補助だけでなく、「地域全体で鉄道を支える」ことを求めました。

JR 九州も「自らの地域のあるべき交通ネットワークに関する議論に対して、自治体によって温度差がある」などと訴えています。

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委員の共通認識にも

検討会の第1回議事概要も公表されました。そのなかでも、JRに内部補助をどこまで求めるかは、大きな論点として提示されています。

「JR 各社が過度な内部補助に陥ってしまって、全体として最適な鉄道ネットワークの維持ができなくなり、さらにサービス向上のための投資が実現できなくなることが懸念される」(板谷和也流通経済大教授)といったような、JRの考え方に沿うような意見が多く、「大臣指針を堅持してローカル線を維持するべき」と主張する委員はいませんでした。そういう委員を選ばなかったということでしょう。

こうなると、結論の方向性は見えている気もします。さりとて、完全民営化時に示した大臣指針は生きています。過去の経緯と現在の状況をどう調整するのか。難しい議論になりそうです。(鎌倉淳)

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