東京メトロの中期経営計画が発表されました。利用者に関わりの深い部分を中心に、内容をご紹介していきましょう。
2021年度までの3年計画
東京メトロの新しい中期経営計画は、2019年3月26日に発表されました。「東京メトロプラン2021」と題され、2019年度から2021年度までの3年計画です。
新中期経営計画では、「安心の提供」「持続的な成長の実現」「東京の魅力・活力の共創」の3つのキーワードが柱とされました。2020年東京オリンピックを見据えた施策が次々と完了する収穫の時期ですが、新たな計画も目白押しです。
路線別に見ていきましょう。
銀座線・渋谷駅が供用開始
まずは銀座線です。銀座線は全駅でのリニューアルを進めていますが、2019年度には、いよいよ渋谷駅で新ホームの供用を開始します。銀座線のホームドアは渋谷駅のみが未設置ですが、同駅新ホーム供用開始で、ホームドア率が100%となります。
日本橋駅、京橋駅、銀座駅、青山一丁目駅、外苑前駅でもリニューアルをすすめ、2020年度までに完了します。
さらに、2021年度までに、浅草駅の折り返し線を整備します。これにより、上野~浅草間の列車増発が可能になります。
丸ノ内線・方南町駅6両化
丸ノ内線では、新型車両2000系の増備を進め、2023年度に全ての車両が入れ替わる予定です。
丸ノ内線の注目点は、方南町駅ホームの延伸でしょう。6両対応の延伸ホームは2019年度に供用開始予定。これにより、池袋駅~方南町駅間で、6両編成列車の運転を開始します。
また、無線式列車制御システム(CBTC)の導入準備を進めます。列車の運転間隔を短くすることができ、遅延時に高い回復効果を得られます。2023年度に導入されます。
日比谷線・虎ノ門駅開業
日比谷線には、2020年度に大きな動きがあります。まず、新駅・虎ノ門ヒルズ駅の暫定開業が2020年度の東京オリンピック前。同駅は銀座線虎ノ門駅との乗換駅指定を受けます。
2020年度には、現在進めている新型車両13000系の導入が完了します。また、東武鉄道が新造する70090型車両も同線内を走り始めます。70090型を使って、東武スカイツリーラインとの直通列車に有料着席サービスを導入します。
朝・夕時間帯の霞ヶ関~中目黒間で列車の増発もおこないます。つまり、現ダイヤで霞ヶ関折り返しの列車を、中目黒まで延長運転するわけです。これにより、霞ヶ関駅の折り返し線が空くので、上記有料着席サービス列車に霞ヶ関発着が設定される可能性が高くなりました。
日比谷線では、3ドア車、5ドア車の混在により、ホームドア整備が遅れていました。2018年度末では、導入率0%です。しかし、20mの4ドア車への統一により、今後急ピッチでホームドア整備が進められます。2021年度の目標が73%で、2022年度に全駅設置完了の予定です。また、前述のCBTCを2023年度に導入します。
東西線は改良工事が進む
東西線では、混雑解消のための改良工事が続きます。まず、茅場町駅ではホームの延伸を行うなどして、日比谷線への乗り換えをスムーズにし乗客の流れを分散します。2022年度供用開始予定です。
木場駅では、ホームとコンコースを拡幅して、利用者の流れを分散して混雑緩和をはかります。2025年度供用開始予定です。
南砂町駅では、ホーム1面、線路1線を増設し2面3線として、列車の交互発着を可能にします。これにより、ホーム上の混雑緩和と、列車の遅延防止を目指します。2027年度供用開始です。
九段下駅では、2019年度に半蔵門線、都営新宿線とあわせた3線共通改札口を設置します。これまでは、東西線だけが独立した改札口でしたが、これをまとめて改札内で3線が乗り換えられるようにします。乗り換えエレベーターも整備します。
飯田橋~九段下間では、折り返し設備の整備を行っています。既存の折り返し線を本線化し交差支障を解消し、西船橋方からの折り返し運転をしやすくします。ダイヤ乱れや将来の列車増発に備えたものです。2025年度供用開始予定です。
東西線では、ワイドドア車両の存在などにより、ホームドアの設置が遅れていました。2018年度末で22%の設置率。2021年度でも57%です。駅の改良工事との兼ね合いもあり、全駅設置は2025年度になる予定です。
有楽町線は5分間隔に
有楽町線では、2019年度に日中時間帯が5分間隔の運転となるのが、大きなトピックスです。夕、夜間時間帯にも増発します。2020年3月ダイヤ改正は大規模になりそうです。
新型車両については、副都心線とあわせて17000系を2020年度に導入開始します。
東京の中心部にありながら、他線から孤立している銀座一丁目駅は、200mほど離れた銀座駅との乗換駅の指定を受けます。2020年度の予定です。
また、南北線と共用する飯田橋駅で、出入口の新設と、改札機の増設が行われます。これはJR飯田橋駅が新宿寄りへ200m移設することにともなう混雑対策です。混雑の激しい豊洲駅でも改札機の増設が行われます。いずれも2020年度に実施されます。
南北線8両化、相鉄直通も
南北線では、全列車の8両編成化が大きなトピックスでしょう。現在の6両から車両を2両増やすほか、駅設備も対応するために改修します。
実施は2022年度で、同年度に予定されている相鉄との直通運転を見据えたものです。相鉄直通列車が、東京側のどの路線に乗り入れるのかは未発表ですが、埼玉高速鉄道は中期経営計画のなかで「東急新横浜線との直通運転」を明記しています。
従って少なくとも新横浜発着の列車が南北線に乗り入れるのは確実です。
このほか、南北線では、2019年度に早朝、朝ラッシュ時の列車が増発されます。
半蔵門線でも新型車両
半蔵門線では新型車両18000系が2021年度に登場する予定です。
2018年度末で43%の導入率のホームドアは、2021年度に79%とし、2023年度に全駅設置が完了します。遅延防止に役立つCBTCは、2024年度に導入されます。
千代田線は一段落
千代田線では、ホームドアの整備が急ピッチで進められており、2019年度に全駅設置が完了します。
千代田線は、小田急の複々線対応や、北綾瀬駅の10両対応が完了したばかりということもあってか、ホームドア以外で新中期経営計画に目立った施策はなく、一段落というところ。北綾瀬駅の高架下商業施設で、リニューアルを実施するくらいでしょうか。
ホームドアは2025年度全線設置完了
ここまで各線別に見てきましたが、メトロ全線にまたがる施策もまとめてみましょう。
まず、各線でも紹介してきたホームドア。2018年度末の全線整備率は67%ですが、2021年度末には89%まで引き上げます。東西線を最後に、2025年度に全駅での設置を完了します。
駅ホームの安全策としては、非常停止ボタンと信号システムの連動化もすすめており、2023年度に完了する予定です。
また、ホーム端部では、線路内進入防止策の機能強化も行われ、線路に入りにくくなります。車両基地などへの侵入防止策の改良も進められます。
新型車両は4種類
中期経営計画期間中に導入が進められる新型車両は4つ。日比谷線13000系、丸ノ内線2000系、有楽町線・副都心線17000系、半蔵門線18000系です。
これらの新型車両の特徴として、車内空調設備の高性能化、座席幅の拡大、車内フリースペースの増設、セキュリティカメラの設置、車両情報管理装置の次世代化、などがあげられます。
旅客の目に触れない部分でも、省エネルギー機器が導入されたり、脱線検知装置が搭載されるなど、性能が向上しています。
車内カメラは、新型車両に設置されるほか、既存車両の大規模改修時にも導入されます。セキュリティカメラは駅構内でも増設、更新され、画像認識機能を使用した不審物や危険物の検知機能を搭載します。
バリアフリー化も推進
駅設備としては2019年度までに多機能トイレの全駅整備と個室トイレの洋式化が完了します。
バリアフリー化も推進し、エレベーターは、2021年度までにほぼ全ての駅で1ルートの確保が完了します。エレベーターの複数ルートについても、2021年度末に66駅で整備します。
駅構内の自動旅客案内装置(行先案内)は、2019年度までにリニューアルが完了します。案内サインについても、2020年度にリニューアルが完了します。
駅ナカ施設としては明治神宮前駅、大手町駅、有楽町駅などで、定期券売り場の跡地などを使った開発を行います。
新たな企画乗車券も
そのほかの新たな施策としては、子ども見守りサービス「まもレール」をJR東日本、都営との3社局で実施します。PASMOなどのICカードで子どもが駅の自動改札口を通過した際、保護者に情報をメールで配信します。
QRコードを使ったチケット販売も進めます。オンライン決済したTOKYO Subway TicketをQRコードにより旅行者向け券売機で発券するスキームを構築します。
さらに、他鉄道事業者との連携も視野に入れた、新たな企画乗車券も発売します。
3年間で4,900億円
東京メトロの新中期経営計画の総投資額は、3年間で総額4,900億円に達します。2019年度だけでも1,850億円です。
参考までに、東急電鉄の2018年度の鉄軌道事業の設備投資計画額は597億円。JR東日本(単体)は5,250億円です。
規模も性格も異なる鉄道会社間ですので、単純に比較はできません。それでも、東京メトロの3年4,900億円という数字が、なかなかに大きいことがわかるのではないでしょうか。
巨額の投資を受けて、東京の地下鉄は、毎年姿を変えていきそうです。(鎌倉淳)