尾瀬ルート
「ローカル路線バス乗り継ぎの旅Z 第19弾」のルート検証、話を1日目に戻します。一行は道の駅尾瀬かたしなから、日光方面へ抜けるバスに乗ってしまいました。ただ、一行は案内所で尾瀬方面への徒歩ルートも案内されています。これに従って尾瀬方面へ向かっていたら、どうなっていたでしょうか。
▽1日目
谷川岳ロープウェイ10:25→11:15上毛高原11:35→13:07道の駅尾瀬かたしな13:25→13:57大清水14:00→14:15一ノ瀬→徒歩7km→尾瀬沼山峠17:00→17:45道の駅尾瀬檜枝岐前
▽2日目
道の駅尾瀬檜枝岐前08:54→09:20内川10:45→12:15会津田島駅前14:15→14:40会津下郷駅前15:00→15:30湯野上温泉駅前15:30→15:40小沼崎→徒歩5.5km→芦ノ牧中央待合所17:09→17:54若松駅前18:58→19:41強清水→徒歩3.1km→金の橋(宿送迎ならここでOK)→徒歩3.1km→長浜
▽3日目
金の橋07:28→長浜07:32→07:46猪苗代駅08:10→08:43小野川湖入口09:09→09:33早稲沢→徒歩17.7km→白布温泉14:33→15:06皇大神社前15:30→15:57川西中学校前→徒歩4.9km→置賜総合病院前17:21→17:40長井市役所・長井駅前
▽4日目
長井市役所・長井駅前06:32→07:38山形駅前08:47→09:34天童駅前10:25→10:58村山駅前12:31→12:51尾花沢待合所14:19→14:53銀山温泉
このルートのポイントは、2日目に会津下郷から須賀川方面に抜けずに、会津若松へ向かうこと。そして、会津若松で泊まらずに、猪苗代町内に入ってから泊まることです。そして、白布温泉へ向けてバスを乗り継ぎ、白布峠を越えていけば、ゴールが可能でした。
途中の県境越えは2回のみ。群馬県から福島県(尾瀬越え)と、福島県から山形県(白布越え)を徒歩で乗り切れば、他に県境越えはないのもメリットです。
尾瀬ルートのハードル
と書いてはみたものの、尾瀬ルートも簡単ではありません。まず、一ノ瀬から沼山峠まで7kmを2時間45分で歩ききれるかという問題。コースタイムは3時間半くらいなので、普通に歩くと間に合いません。
一行の脚力からすればコースタイムを大幅に上回ることは可能でしょうが、トレッキングルートですので、一般道と同様のペースというわけにはいかないでしょう。
もし沼山峠17時発の最終バスに乗り遅れたら、さらに9.5kmを歩いて、御池ロッジに泊めてもらうか、宿送迎を仰ぐほかなさそうです。ただ、その場合でも、翌朝、尾瀬御池08時30分発のバスに乗れば、上記ルートに収斂します。
※上記のGoogleマップの距離は、大回りに計算されています。
また、会津下郷から須賀川へ向かってしまうと、須賀川着が3日目09時00分となり、その後が苦しくなります。18時頃に到着する会津若松に泊まってしまってもアウトです。
3日目の白布峠越え17kmは、想像するだけで大変そうです。さらに、白布から米沢行きのバスも、米沢駅まで乗ってしまうとゴールが難しくなり、米沢市内でのショートカットの乗り継ぎが必要です。
4日目の土曜日は、米沢市内も長井市内もバスの多くが運休します。そのため、なんとしても3日目に長井市内に入り、4日目早朝の山形行きバスに乗らなければなりません。
こうしたさまざまなハードルを考えると、尾瀬ルートが正解だったと表現することにはためらいが生じます。
尾瀬ルートの実現性
ただ、放送を見ていると、田中・羽田一行は、現実に尾瀬ルートを検討していますし、その後の行程で、会津若松から米沢に抜けるルートを意識していたこともうかがえます。
であるなら、尾瀬ルートを選んでいれば、須賀川に向かわずに会津若松に向かうことはできたでしょうし、会津若松駅で情報収集すれば、その日のうちに猪苗代町に入って、翌日に米沢へ抜けられることを知ることができたでしょう。
要は、尾瀬ルートは実際ルートに比べれば、乗り継ぎの難易度が低いのです。言い換えれば、ゴールへの道筋が見つけやすいルートです。尾瀬越えと白布越えはハードですが、尾瀬に突入しさえすれば、ひいひい言いながらゴールできていたのではないか、という気がします。
新潟ルート
最後に、もう一つの可能性として、新潟ルートも検討してみます。
谷川岳ロープウェイから越後湯沢方面に抜けるには、谷川岳を歩いて越える方法がありますが。ヤマレコで実際歩いた人のログを見てみると、土樽まで約6時間半だそうです。土樽から湯沢への最終バスは16時42分ですので、谷川岳ロープウェイを10時25分に出た場合、ギリギリ間に合うと仮定すると、次のようになります。
▽1日目
谷川岳ロープウェイ10:25→徒歩14km→土樽駅16:42→17:04湯沢駅
ただ、谷川岳へは本格的な登山ですので、相応の装備なしに挑むことはできないでしょう。したがって、登山ルートは無理として、一般道を通ると仮定すると、以下のようになります。
▽1日目
谷川岳ロープウェイ10:25→11:15上毛高原駅11:53→12:23猿ヶ京→徒歩14.3km→西武クリスタル18:15→19:03湯沢駅前
三国峠は新トンネルができて歩きやすくなったようですが、その前後の危険な難路は変わりありません。そこを乗り越えたとしても、1日目は越後湯沢に着くのがやっとです。以下、2日目朝に越後湯沢を出たとして、ルートを見てみます。
▽2日目
湯沢駅前07:27→08:08六日町駅角/六日町駅前09:55→10:43小出営業所前11:50→12:29小千谷車庫前13:15→14:16長岡駅大手口14:40→15:34済生会病院→徒歩5.1km→燕駅前16:55→17:32横町17:41→18:50万代シティ18:58→20:13新発田営業所
▽3日目
新発田駅10:15→10:46上荒沢→徒歩16.2km→下関営業所14:55→15:38村上営業所16:00→17:00北中17:11→17:22勝木営業所17:44→17:58府屋中町→徒歩5km→鼠ヶ関駅
▽4日目
鼠ヶ関駅前07:39→08:00あつみ温泉駅前/あつみ温泉駅09:04→10:09エスモールバスターミナル(鶴岡)10:48→11:16イオンモール三川→徒歩8.7km→余目駅13:40→14:50新庄駅/新庄駅前15:00→15:35尾花沢待合所16:04→16:31銀山温泉
3日目の新発田~村上間が苦しいですが、そこを乗り越えれば4日目に銀山温泉にゴールできます。
新潟ルートの実現性
新潟ルートは、越後湯沢~鶴岡間で第10弾のルートをほぼトレースしていますが、鶴岡~新庄間が異なります。JR陸羽西線が長期運休中のため、代行バスが走っており、それを利用できるためです。
第10弾で苦戦した鶴岡~新庄を、鉄道代行バスでスムーズに移動できるので、4日目が土曜日にもかかわらず、鼠ヶ関から一気にゴールできるのです。
それを知っていれば魅力的に感じられますが、現実問題として1日目の三国峠越えが厳しすぎます。さらに、第10弾と丸かぶりということもあり、出演者として選択しづらいルートでしょう。
ただ、挑戦していればゴールできた可能性はありましたので、実現可能性がなかったとまではいえないでしょう。
最適解は?
ここまで、いくつもルートを検討してきました。このなかで、どれが最適解かと言われると難しいのですが、乗り継ぎとしてきれいなのは、上蓬田ルートではないか、と思われます。下記に整理して全体を再掲します。なお、2日目は、矢板駅から野崎駅に向かうルートとしています。
▽1日目
谷川岳ロープウェイ10:25→11:15上毛高原駅11:35→13:07道の駅かたしな15:29→16:27湯元温泉16:40→17:48東武日光駅18:05→18:35下今市駅18:40→19:16鬼怒川温泉駅
▽2日目
鬼怒川温泉駅06:53→07:04新高徳駅07:10→07:56矢板駅→徒歩5.1km→野崎駅10:45→11:11大田原市役所11:47→12:15那須塩原駅東口/西口12:30→12:45黒磯駅西口14:50→15:43追分→徒歩3.2km→関の森公園16:26→16:58白河駅前17:30→18:13石川駅前
▽3日目
石川駅前06:50→07:25上蓬田07:30→08:35郡山駅前08:45→09:34太田熱海病院/太田病院前10:00→10:49本宮駅前11:30→11:41大山字岩ヶ作交差点→徒歩6.3km→若宮二丁目13:15→14:23福島駅東口14:55→15:44国見役場→徒歩5.8km→越河清水17:37→18:06白石駅19:14→19:55遠刈田温泉
▽4日目
遠刈田温泉07:22→07:52村田役場前→徒歩0.3km→村田中央08:25→08:48川崎中央→徒歩0.3km→かわさきまち09:40→10:56仙台駅前/仙台駅西口11:05→12:51尾花沢待合所14:19→14:53銀山温泉
この乗り継ぎで、徒歩距離は計算上約20kmです。決して短いとはいえませんが、時刻表上で無理な乗り継ぎや、無茶な峠越えはありませんので、ルートを見つけ出せれば実現できたと思います。
最後の仙台駅での乗り継ぎ時間が短いですが、仮に乗り遅れても次便の尾花沢方面行きに乗れば、ゴールできます。
▽4日目
10:56仙台駅前/仙台駅西口13:05→14:51尾花沢待合所16:04→16:31銀山温泉
そのほか、ベターなのは宇都宮ルートでしょうか。県都へ向かえば、夜遅くまでバスがあるのでは、と想像すれば、選択できないルートとまではいえません。ただ、日光から宇都宮へ向かうのは、ゴールと逆方向に感じられるので、気持ちとして選びにくいでしょう。
また、フェスタで議論せずに、本宮まで速歩で進んでいれば、健脚自慢の田中・羽田コンビの面目躍如という乗り継ぎが実現できていたことでしょう。本宮市内のバス情報を得られていれば可能性がありましたが、そのチャンスは、放送を見た限りではなさそうです。
土日限定の魅力
実現可能性がもっとも高かった成功パターンを考えてみると、実際ルートで遠刈田温泉から川崎町へ抜けるルートでしょう。白石駅で早起きして情報収集の時間を設けたにもかかわらず、このルートを探し出せなかったのは、本当にもったいないことでした。
まとめると、田中・羽田コンビは、無理なく選択しうるルートをオーソドックスに乗り継いだと評価できます。3日目までクリーンヒットはありませんでしたか、凡ミスもなかったと言っていいでしょう。白石までの深夜の行軍では、持ち前の脚力で粘りをみせました。
悔やまれるのは、4日目、「土日限定」の長距離バスの魅力にとりつかれてしまったことでしょう。最近、チームとして、保守的なルート選びで敗れていただけに、観光地の山を越える斬新なルートに挑戦してみたかった、という気持ちもあったのかもしれません。
演者のそうした気持ちを見抜いて、制作側が罠を仕掛けたとまでは思いませんが、結果的に、見事に引っかかってしまったという印象もぬぐえません。
微妙に難しいお題
全体を振り返ると、微妙に難しいお題でした。複数のゴール可能な乗り継ぎが存在し、いくつかは現実的なので、「難題」とはいえません。しかし、どのルートもハードな徒歩を要求していて、バスだけできれいに乗り継ぐことができないように設定されていました。そう考えると、難易度としては「やや難」くらいに感じられます。
3度目のカド番ともなると、制作側として簡単なお題を出題するわけにもいかず、さりとて無理難題を出して辞めさせるわけにもいかず、この程度の按配になったのでは、と推察します。
そもそも、田中・羽田コンビは健脚であるが故に、少々の距離なら歩いてしまうことから、最近は、それを前提としたゴール設定になっていました。
余裕のある設定にすると、パワープレイで早々にクリアしてしまう可能性があるので、出題側もコンビの脚力を意識して、歩くことを前提に、一つのミスも許されないようなルートを作らざるを得ないのでしょう。
「バス歩き旅」の潮時
結果として、最近の「Z」は、「バス乗り継ぎ旅」というより「バス歩き旅」の企画になっていました。今回、羽田が矢板駅を出たところで「歩くとバス旅っぽくなってきますね」と漏らしましたが、最近の「Z」の傾向を見事に言い当てています。
もちろん、それこそが「Z」の見どころであり、真骨頂です。とはいえ、潮時を感じさせるコメントにも受け取れました。
とまれ、「ローカル路線バスの旅Z」は、第19弾を以て終了となりました。プレ放送だった特別編を含めて20回。全国でローカル路線バスが次々と廃止されていくなか、田中・羽田コンビは、路線の隙間を埋めるように歩き、見事に乗りつないでくれました。
太川・蛭子コンビと比較されつつも、田中・羽田コンビは、自慢の脚力で独自の存在価値を放っていたと思います。太川・蛭子コンビでは到底できないであろう乗り継ぎを、何度も実現してくれました。
5年間にわたり、素晴らしい旅を視聴者に届けてくれたことには、感謝しかありません。本当にありがとうございました。(鎌倉淳)