「ローカル路線バスの旅Z 第15弾 高野口→潮岬」の正解ルートを考える。成否を分けたショートカット

もっと歩いてもいいくらいだ

テレビ東京系列の「ローカル路線バス乗り継ぎの旅Z」第15弾が放送されました。田中要次と羽田圭介のコンビが、路線バスだけを乗り継いで旅をする番組です。今回のマドンナは鈴木杏樹です。

お題は紀伊半島。高野口駅から3泊4日で潮岬を目指します。チェックポイントは賢島、湯の峰温泉の2カ所。例によって正解ルートを検証してみましょう。なお、以下はネタバレ100パーセントです。また、結果論100パーセントです。行ってない筆者が机上で語っているだけです。ご理解ください。

※以下、掲載時刻は確認しましたが、間違いや勘違いがあると思います。ご容赦ください。また、間違いを見つけましたらご指摘ください。記事は掲載後に加筆・修正することがあります。文中は敬称略です。

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実際ルート

最初に、番組で3人が実際に旅したルート(実際ルート)をたどってみましょう。時刻表上の定刻を確認してみました。オンエアで2日目が水曜日とわかるシーンがありましたので、全日平日ダイヤとして調べています。

▽1日目
高野口駅前09:05→09:45橋本駅前10:26→10:34門前→徒歩2.6km→上野→徒歩3.2km→五條町12:55→(13:02五條バスセンター13:18)→14:15医大病院前/医大病院玄関口14:29→14:45飛鳥駅14:55→15:22明日香奥山・飛鳥資料館西→徒歩4.7km→16:55桜井駅17:19→17:55天理駅18:10→18:54 JR奈良駅

▽2日目
JR奈良駅西口09:11→10:47石打→徒歩1.7km→白樫→徒歩1.1km→永谷辻12:52→13:11上野市駅14:10→14:57汁付→徒歩5.0km→平木17:00→17:54三重会館前18:48→19:22天白→徒歩6.4km→23:02松阪駅

▽3日目
松阪駅07:42→08:27栃原→徒歩2.0km→注連指口09:12→10:00伊勢市駅前10:24→11:26鵜方駅前11:58→12:07賢島駅前12:21→12:30鵜方駅前12:46→12:58磯部バスセンター13:07→13:27五ヶ所13:32→14:08南島道方14:15→14:42神前17:35→18:14 JR伊勢柏崎駅前→徒歩1.6km→柏崎19:57→22:13熊野市駅前

▽4日目
熊野市駅前06:58→07:45新宮駅09:59→11:09湯の峰温泉→徒歩2.1km→渡瀬温泉11:43→12:43新宮駅13:00→13:37紀伊勝浦駅→徒歩5.8km→道の駅たいじ→徒歩6.5km→浦神17:23→17:24瀬田→徒歩2.7km→18:07上の宮

串本町の上の宮に18時07分に着いたものの、最終バスは17時50分に出てしまっており、ギブアップとなりました。潮岬までは約20km残していて、この時間からでは到底歩けません。

ということで、今回は失敗に終わり、田中・羽田コンビの3連勝はなりませんでした。例によって、正解ルートを検証してみましょう。


※Googleマップは概略です。実際の経路を示しているわけではありません(以下同)

ローカル路線バスの旅Z第15弾
Ⓒテレビ東京

「ローカル路線バス乗り継ぎの旅Z」第15弾 紀伊半島ぐるり・高野山~伊勢志摩~熊野古道SP
【放送日】2020年12月26日(土)18時30分~21時48分 テレビ東京系列
【出演】田中要次、羽田圭介、鈴木杏樹
【ナレーター】キートン山田

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五條に選択肢はあったか

まず、高野口から橋本までは、一行が取ったルート以外に選択肢はなさそうです。橋本駅で09時41分発の車庫前行きを見逃しましたが、このバスは3つ先のバス停までしか行かないので、乗る必要はありませんでした。一行は、橋本駅から門前までバスに乗り、そこから上野まで歩きます。

上野に11時43分に到着後、13時47分のバスを待たずに五條まで3.2kmを歩きました。仮に、このバスを待っていたら、五條町12時55分発の大和八木行きに乗れませんでしたので、この徒歩には効果がありました。序盤は、上々の滑り出しといえます。

最初の大きな分岐点に思えたのが、五條です。地図を見ると、南に湯の峰温泉を経て新宮へ抜ける道路があり、東には吉野方面への抜ける道路もあります。しかし、一行はそのままバスを乗り続けることを選択します。

実際のところ、五條から南は方向違いですし、東へ乗り継げるバスはありません。北上して大和高田か橿原方面に向かうほかなく、そのどちらかなら、橿原のほうが伊勢に近いです。一行が乗っていたバスは橿原市にある大和八木駅に向かっていましたので、乗り続けたのは正解といえます。

ただし、このとき、五條から新宮方面へ向かっていたら、別の展開もあり得ました。それについては後述します。

飛鳥資料館でバス待ちしたら

気になったのは、このバスを降りた後の乗り継ぎです。一行は、大和八木駅の手前の医大病院前で飛鳥行きのバスを捕まえ、飛鳥駅、明日香奥山・飛鳥資料館西へと乗り継ぎました。そこで次のバスまで約2時間待ちと知り、4.7km歩いて桜井駅にたどり着いています。

仮に、ここで次のバスを待っていたらどうなっていたでしょうか。

▽1日目
医大病院玄関口14:29→14:45飛鳥駅14:55→15:22明日香奥山・飛鳥資料館西17:38→17:53桜井駅南口/桜井駅北口18:08→18:37天理駅18:52→19:30 JR奈良駅

このように、実際ルートより1時間ほど遅れて桜井駅に到着します。その後、1日目にJR奈良駅に到達でき、実際ルートに収斂します。

とはいえ、桜井駅に到着するのは18時前。案内所は18時に閉まるので、情報収集がほとんどできなかったでしょう。情報収集の時間を獲得できたという意味では、飛鳥資料館から桜井駅まで4.7kmの徒歩は、無駄ではなかったといえます。

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大和八木まで乗っていたら

一方で、橿原から天理へ向かうのに、飛鳥を経由するのは遠回りではないか、という気もします。医大病院前で降りずに、大和八木駅までバスに乗っていたらどうなっていたでしょうか。

調べてみると、大和八木駅からのバスの展開が乏しく、桜井駅まで歩くことになっていたと思われます。いわば、大和八木駅から桜井駅まで、徒歩でショートカットする形です。

▽1日目
五條町12:55→14:24大和八木駅→徒歩5.9km→桜井駅

この乗り継ぎの場合、大和八木駅で情報収集できるのがメリットです。大和八木駅には、奈良交通の乗車券売り場と大きな観光案内所がありますので、ここで聞き込めば、広範囲の情報収集がしやすかったと思われます。

大和八木から桜井までの徒歩距離は5.9kmで、実際ルートより1kmほど延びますが、情報収集をしたうえで、より早く桜井駅に到着できたでしょう。

そして、もし桜井駅に16時前に到着できれば、大宇陀行きの最終バスに間に合います。オンエアで、一行が桜井駅に着いたときに高校生に位置を尋ねた、あの「大宇陀」です。

大宇陀行きのバスに乗った場合、以下のように乗り継げます。

▽1日目
五條町12:55→14:24大和八木駅→徒歩5.9km→桜井駅16:13→16:34野依16:42→16:52榛原駅17:12→17:46針インター

▽2日目
針インター07:48→08:06国道山添08:30→08:58上野市駅

このように、1日目は針インター周辺まで行くことができ、2日目に実際ルートより4時間ほど早く、上野市駅に到着できます。ただ、針インター付近には宿が少なく、宿泊を考えると実現可能性は微妙です。

曽爾村ルート

榛原から曽爾村へ至るルートも検討してみます。

▽1日目
五條町12:55→14:24大和八木駅→徒歩5.9km→桜井駅16:13→16:34野依16:42→16:52榛原駅16:59→17:54曽爾村役場前

▽2日目
曽爾役場前06:31→07:15名張駅前07:25→08:12上野市駅

榛原駅から曽爾村を経て名張に至ります。ルートはきれいにつながりますが、こちらも宿の問題があります。曽爾村には民宿があるようなので、榛原までに電話予約をすれば選択できますが、そうでなければ難しいでしょう。

曽爾村から伊勢奥津へ抜けるルートも見てみます。

▽1日目
五條町12:55→14:24大和八木駅→徒歩5.9km→桜井駅16:13→16:34野依16:42→16:52榛原駅16:59→17:48掛西口(曽爾村)

▽2日目
掛西口06:35→07:17神末敷津/敷津08:19→08:31伊勢奥津駅前09:16→10:16家城駅前/家城12:35→13:16久居駅前13:37→13:59三重会館前14:48→15:22天白→徒歩0.2km→三雲地域振興局15:33→16:02 JR松阪駅

これもルートはつながります。しかし、やはり宿泊地点の問題が立ちはだかります。

奈良盆地の東には笠置山地や高見山地が横たわっていて大きな町がなく、宿も少ないです。現実的に考えて、桜井駅の段階で宿の確認をせずに突き進むのは難しいでしょう。

ということで、実際に一行が大宇陀行きバスに間に合う時間に桜井駅に着いていたとしても、宿の心配から、大宇陀行きバス乗車には二の足を踏んだのではないかと思います。

まとめると、一行が五條からのバスを大和八木駅まで乗った場合、実際ルートより約1km余計に歩いて1時間早く桜井駅に着けますが、情報収集の時間や機会を増やす以外の効果を得ることはできなかったのではないでしょうか。

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針・名張ルート

実際ルートに戻りましょう。一行の2日目以降の行程の決め手となったのは、桜井駅での情報収集でした。案内所では、最初に天理から針へ行く「針ルート」を勧められますが、バスの本数が多いという理由で、奈良駅から石打に入る「石打ルート」を選択します。

直後に、桜井駅からバスに乗り、17時55分に天理駅に到着。そのまま奈良駅方面へ乗り継ぎました。

もし、桜井駅の案内所で最初に提案されていた、針から山添を経て、名張に向かっていたらどうなっていたでしょうか。

▽1日目
桜井駅17:19→17:55天理駅

▽2日目
天理駅07:14→07:47針インター07:48→08:06国道山添→徒歩0.4km→大西12:10→12:40名張駅東口

これを「針・名張ルート」としましょう。山添から名張への接続が悪く、その先、伊勢奥津方面へのバスもありますが、うまくつながりません。

針・上野ルート

しかし、国道山添に8時過ぎに着いたら、上野市へ向かうバスに接続しています。すなわち、以下のようになります。

▽1日目
桜井駅17:19→17:55天理駅

▽2日目
天理駅07:14→07:47針インター07:48→08:06国道山添08:30→08:58上野市駅

これを「針・上野ルート」と呼びましょう。このルートでは、上野市に9時前に到着できます。これだけでも実際ルートより4時間早いのですが、さらに、上野市街地に入ったところにある恵美須町というバス停で乗り継ぐと、以下のようになります。

▽2日目
天理駅07:14→07:47針インター07:48→08:06国道山添08:30→08:54恵美須町08:57→09:39汁付→徒歩5.0km→平木11:00→11:54三重会館前12:40→13:14天白→徒歩0.2km→三雲地域振興局13:33→14:02 JR松阪駅/松阪駅前15:45→16:21栃原→徒歩2.0km→注連指口16:42→17:30伊勢市駅17:52→18:50鵜方駅前

この乗り継ぎなら、2日目に鵜方駅前まで到達できます。鵜方駅前から賢島までは3kmほどなので、この日のうちに歩いてチェックポイントをクリアすることも可能ですが、バスだけで乗り継ぐと仮定すると、以下のようになります。

▽3日目
鵜方駅前09:58→10:15賢島駅前11:16→11:25鵜方駅前11:46→12:42伊勢市駅前13:15→14:02注連指口→徒歩2.0km→栃原16:21→19:33熊野市駅前19:43→20:30新宮駅

▽4日目
新宮駅05:53→07:03湯の峰温泉08:00→08:20本宮大社前10:00→10:59新宮駅11:30→12:18紀伊勝浦駅13:09→13:23下里出張所13:25→13:44瀬田→徒歩2.7km→上の宮14:25→14:57串本駅16:40→16:57潮岬観光タワー

このように、3日目に新宮泊となり、4日目は余裕をもってゴール可能です。上野市内の恵美須町の3分接続を乗り継ぐのは難しそうですが、それさえ成功すれば、その後の難易度は高くありません。

針・上野ルートのバリエーション

その恵美須町の接続ですが、国道山添から上野市へ向かうバスを、駅の手前で乗り継ぐ形です。この乗り継ぎは上野市駅での情報収集をしない前提で、先を見通していないと不可能なので、現実的には実現できないでしょう。乗り継ぎに気づかない、あるいは、気づいても乗り遅れた場合は、以下のような形になります。

▽2日目
天理駅07:14→07:47針インター07:48→08:06国道山添08:30→08:58上野市駅10:20→11:10汁付→徒歩5.0km→平木14:00→14:54三重会館前15:48→16:22天白→徒歩0.2km→三雲地域振興局17:33→18:02 JR松阪駅

2日目、松阪駅に18時過ぎに到着。その後、栃原までのバスはありますが、注連指口からの伊勢へ向かうバスは終わっています。そのため、宿の問題で2日目は松阪泊になり、実際ルートに収斂していた可能性が高そうです。

ただ、徒歩区間が少なく天白の夜行軍がありませんので、乗り継ぎとしては実際ルートよりだいぶラクになり、疲労の軽減につながったことでしょう。

いずれにしろ、天理に泊まって翌朝針に向かっていけば、少なくとも松阪までは実際ルートよりラクに、早く行くことができたことは確かです。

一行は桜井駅の案内所で聞き込みをしたうえで、石打ルートを選んだので仕方のないことです。とはいえ、結果からみれば、天理での選択が今回のゴールの成否を分ける分岐点の一つだったわけで、ちょっと残念な選択でした。

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石打ルート

実際ルートに戻ります。一行は1日目に奈良市内に泊まり、2日目の始発バスで石打に向かいます。始発といっても9時11分発です。

出発は遅いものの、奈良から石打までは30km以上あり、利用価値の高いバスでした。ただ、その後の乗り継ぎが悪く、石打に10時47分に到着後、上野市へのバスは12時46分までありません。一行はこれを待たずに歩いて県境を越え、白樫を経て永谷辻に達します。

県境を越えてもコミュニティバスなどは見つからず、結局は石打12時46分発と同じバスに乗ったので、この約2.8kmの歩きは、結果として時短効果がありませんでした。

津に泊まっていたら

一方、強力な効果を発揮したように感じられたのが、天白から松阪までの夜行軍です。羽田の強引な誘導で、津市内の三重会館前から最終バスで天白に至り、ホテルを探すと言いながら松阪駅まで6kmあまりを歩き切ってしまいました。

田中・羽田コンビお得意の「パワープレイ」で脚力を見せつけたわけで、番組のハイライトにもなりました。

仮に、夜行軍を行わず、2日目に津市内に泊まっていたら、3日目以降はどうなっていたでしょうか。

▽3日目
三重会館前07:35→08:04天白→徒歩0.2km→三雲地域振興局09:23→09:52 JR松阪駅前10:30→11:06出間→徒歩1.0km→イオンモール明和11:30→12:13新茶屋東→徒歩0.8km→明野12:32→12:38小俣郵便局12:45→13:01伊勢市駅前13:15→14:13鵜方駅前14:58→15:07賢島駅前15:16→15:25鵜方駅前15:41→15:57磯部バスセンター16:01→16:42伊勢市駅前17:45→18:32上田口→徒歩2.7km→栃原19:01 →22:13熊野市駅前

このように、松阪市、明和町のコミュニティバスを乗り継げば、伊勢市を経て賢島のチェックポイントを抑えた上で、なんとか熊野市まで到達できます。この乗り継ぎを「明和ルート」と呼びましょう。

この場合、賢島への往路に、一行が実際にたどった「注連指口ルート」を採ると、当日中に行けるのは鵜方までです。つまり、天白の夜行軍をしない場合、「明和ルート」なら実際ルートに追いつけましたが、「注連指口ルート」では無理だった、ということです。

「明和ルート」はコミュニティバスを乗り継ぐので、道筋を間違えずに探し出すのは容易とはいえません。そう考えると、2日目の夜に松阪駅まで到達できことには、やはり意味があったと考えます。

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神前の待ち時間は避けられないか

実際ルートに戻ります。3日目、一行は快進撃で乗り継ぎます。磯部バスセンターから、五ヵ所、南島西方、神前と乗り継いで、柏崎に達します。

そのなかで停滞していた時間があったとすれば、神前の2時間50分待ちでしょうか。この時間、一行は観光にあてましたが、他のルートがなかったか、いったん伊勢市に戻るルートを検討してみます。

▽3日目
賢島駅前12:21→12:30鵜方駅前12:46→12:58磯部バスセンター14:01→14:41伊勢市駅前15:35→16:22注連指口→徒歩2.0km→栃原19:01 →22:13熊野市駅前

このように、磯部で1時間、栃原で2時間以上待つことになり、3日目は熊野市泊まりという結果は変わりません。2日目が松阪泊の場合、3日目に全力を尽くしても熊野市より先へは行けないようです。

なお、実際ルートで、神前からのバスを伊勢柏崎駅前まで乗ってしまい、熊野市行きの柏崎バス停近くまで1.6kmも歩く羽目になっていますが、これは避けられません。神前からのバスは南伊勢町の町営バスだからか、町外の柏崎周辺ではJR駅前にしかバス停がないためです。

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