テレビ東京系列の「ローカル路線バス乗り継ぎの旅W」の第2弾が放送されました。7月の第1弾放送から5ヵ月、赤江珠緒、三船美佳の両名はそのままで、新たにたけうちほのかを迎えました。
今回の目標は、山形県鶴岡市の湯野浜温泉から、青森県津軽半島の先端・龍飛崎まで、路線バスを乗り継いで3泊4日で到達する、というものです。例によって、この正解ルートを検証してみましょう。
いつものことですが、以下はネタバレ100パーセントです。また、結果論100パーセントです。行ってない筆者が机上で語っているだけです。ご理解のうえ、お読みください。
※以下、掲載時刻は確認しましたが、間違いや勘違いがあると思います。ご容赦ください。また、間違いを見つけましたらご指摘ください。記事は掲載後に加筆・修正することがあります。文中は敬称略です。
「土曜スペシャル ローカル路線バス乗り継ぎの旅W」第2弾 山形県・湯野浜温泉→青森県・龍飛崎
【放送日時】2023年12月16日(土)18時30分~20時54分(テレビ東京系列)
【出演】赤江珠緒 三船美佳 たけうちほのか
【ナレーション】日野聡
実際ルート
最初に、番組で3人が実際に旅したルート(実際ルート)をたどってみましょう。時刻表上の定刻を確認してみました。時刻のはっきりわからなかった部分は筆者による推定です。
▽1日目
湯野浜温泉09:00→09:46鶴岡駅前10:52→11:24イオンモール三川11:55→12:37酒田駅前14:25→14:41北千日町→徒歩8.3km→17:31上藤崎四つ角17:51→徒歩4.5km→すし海道遊佐店→徒歩1km→19:55遊佐駅→徒歩0.5km→鶴屋旅館→徒歩0.2km→パートナー22:00→徒歩7.4km→24:00エリーゼ13
▽2日目
エリーゼ13→徒歩0.5km→茂り松07:26→07:33中藤崎→徒歩14.2km→12:14三崎公園前12:15→12:36象潟駅前13:30→14:31本荘営業所16:00→17:17秋田駅西口18:20→19:31五城目バスターミナル→徒歩0.3km→まろん
▽3日目
五城目バスターミナル06:14→06:28八郎潟駅前→徒歩5.9km→鯉川駅→徒歩→08:57民家09:00→09:56鹿渡駅10:25→10:50八竜ふれあいセンター11:00→11:28能代ステーション12:06→13:04二ツ井駅13:26→13:35道の駅ふたつい14:00→徒歩2.2km→14:30薬師山スキー場前→徒歩8.9km→16:50鷹巣駅前16:51→17:54大館駅前
▽4日目
大館駅前07:27→07:54上陣馬→徒歩5.8km→09:17岩渕公園前09:20→10:20弘前バスターミナル11:15→12:10青森空港13:05→13:40青森駅前15:53→16:42後潟→徒歩2.7km→蓬田村役場→徒歩7.7km→19:31蟹田駅
ということで、4日目19時半ごろに蟹田駅まで到達しましたが、その先へ進むバスが見つからずギブアップ。第2弾は失敗に終わりました。
番組中で気になった部分を検証してみましょう。
※Googleマップのルートは概略です。実際のルートとは異なります。(以下同)
酒田での行き詰まり
一行は、湯野浜温泉を午前09時00分に出発するバスでスタート。鶴岡駅前に到着し、さらにバスを乗り継いで酒田駅前に12時半過ぎに到着しました。
しかし、酒田から北上するバスがありません。酒田市中心部を回るコミュニティバスはあるものの、遊佐方面へ向かうバス路線は、一つも見当たらないのです。
酒田市の路線バスは、少し前まで地元の庄内交通が担っていました。ところが、同社は酒田管内の路線バスを2022年7月末で全廃。現在、酒田市内には、鶴岡管内から来る路線バスと、コミュニティバスしか走っていません。そのため、一行は早くも行き先を見失ってしまいます。
新庄ルート
唯一、市外で出られそうなのが、JR陸羽西線の代行バスでした。同線は長期運休中で、新庄までの代行バスが走っています。
期間限定の代行バスは魅力的ですが、これに乗っていたらどうなっていたでしょうか。
▽1日目
酒田駅前16:20→18:23新庄駅19:20→19:49金山町役場
▽2日目
金山町役場07:22→07:55真室川病院09:50→10:37及位駅→徒歩13.1km→横堀駅前13:50→14:12湯沢営業所前17:30→18:08横手バスターミナル18:10→19:03大曲バスターミナル
1日目に金山町、2日目に大曲市まで行くことができます。しかし、3日目、大曲から先、角館から田沢湖を経て盛岡に抜けようとしても、バスがつながらず、行き詰まってしまいます。
かつては角館から田沢湖へのバスがつながっていて、八幡平を経由すれば盛岡まで乗り継げました。しかし、「角館田沢湖線」は2023年3月31日で廃止。田沢湖から八幡平へのバスも運休中です。
新庄・羽後本荘ルート
したがって、新庄から北上した場合、湯沢から羽後本荘に転じるしかなさそうです。以下のようになります。
▽2日目
湯沢営業所前17:40→18:15首塚18:36→19:51羽後本荘駅前
2日目夜に羽後本荘に到達します。実際ルートでは、2日目に羽後本荘を経て五城目まで到達していますので、新庄経由は劣後します。さらにいえば、2日目に羽後本荘泊では、ゴールできません。
つまり、新庄から北上するルートは上手くいきません。
新庄・仙台ルート
では、新庄から仙台に抜けるルートはどうでしょうか。新庄から、バス旅ファンにはおなじみの「48ライナー」という長距離バスがあり、一気に仙台に出られます。一行はこの情報を酒田で仕入れて、逡巡していました。
仙台に向かった場合は、たとえば以下のような乗り継ぎが考えられます。
▽1日目
酒田駅16:20→18:23新庄駅
▽2日目
新庄駅05:20→07:45仙台駅西口07:50→08:34泉中央駅08:47→09:31大和町バスターミナル10:03→10:16大衡村役場13:20→14:06古川駅前15:40→16:36築館16:48→17:52一関駅前
▽3日目
一関駅前07:50→08:27前沢新町08:35→09:00水沢病院前11:42→11:57金ケ崎高校前13:51→14:10北上郵便局前14:42→15:52志和口→徒歩4.8km→日詰駅前16:59→17:58盛岡駅前18:00→20:45久慈駅前
▽4日目
久慈駅前06:40→07:18下細谷09:24→10:04軽米13:30→14:26八戸中心街ターミナル15:02→16:23十和田市中央17:54→19:27青森駅前
上記のように、酒田発16時20分のバスに乗った場合、当日中に仙台に行くことができず、新庄泊となります。ただし、翌朝の始発バスが05時20分と早いので、仙台には8時前に到着できるでしょう。
しかし、北上する乗り継ぎの接続はいまひとつ。ざっと調べた限りですが、4日目、青森まで行くのが精一杯のようです。
しかも、上記乗り継ぎ最後の十和田市中央~青森駅のバスは、みちのく有料道路経由なので、「ローカル路線バスの旅」として使っていい路線か微妙です。それを使ったとしてもゴールできそうにありません。
鶴岡から新庄へ向かったら
なお、1日目、鶴岡駅の案内所で、一行は仙台ルートの情報を得ていました。となると、鶴岡から新庄に直接向かうこともできたでしょう。その場合は、以下のようになりそうです。
▽1日目
湯野浜温泉09:00→09:46鶴岡駅前13:48→14:32清川駅15:48→16:49新庄駅16:50→19:15仙台駅
鶴岡駅から陸羽西線方面のバスが13時台までないので、すぐには新庄へ向かえず、新庄到着は17時頃。1分乗り換えが実現できれば、最終の仙台行きの48ライナーに乗車できます。
ただし、その後、盛岡経由で4日目までに龍飛崎へ到達することはできないようです。
長々と書きましたが、結論としては、一行が新庄に向かわなかったのは、正しかったといえそうです。
酒田を早く出発していたら
実際ルートに戻りましょう。一行は、酒田市のコミュニティバスで北千日町まで乗り、そこから13kmを歩いて遊佐駅に到着しました。
このとき、一行が乗車したバスは酒田駅14時25分発。しかし、番組でも紹介されていたように、それより早い13時14分発の古湊行きバスがありました。これに乗ると、実際ルートの北千日町より北までバスに乗ることができます。
▽1日目
12:37酒田駅前13:14→13:38古湊→徒歩12.7km→遊佐駅
実際ルートに即して古湊から三崎公園方面を目指して歩き始め、途中で遊佐町のスクールバスの存在に気付いたとして、古湊から遊佐駅まで約12kmです。3時間余りかかったとして、17時ごろには到着できるでしょう。
その場合、遊佐駅を17時過ぎに出るバスで、吹浦方面に向かうことができます。
一行が遊佐駅で見つけたバス時刻表には、吹浦方面に、以下のスクールバスがあることが示されていました。
遊佐駅17:14→17:51女鹿(→徒歩2.2km→三崎公園前)
遊佐駅17:35→17:51吹浦駅前(→徒歩6.5km→三崎公園前)
遊佐町のスクールバスは、一般人の乗車が可能です。したがって、この2本のバスのいずれかに乗れれば、1日目に遊佐から、少なくとも吹浦駅前まで進むことができました。
吹浦周辺に泊まっていたら
遊佐駅から、先発の女鹿行きに乗れれば、終点から三崎公園まで2.2km。後発の吹浦行きなら6.5kmです。この区間は歩かなければならないものの、一行が苦戦した現実に比べれば、負担ははるかに軽いでしょう。
女鹿や三崎公園周辺に宿が少ないので、一行が目標にしていた鳥海温泉に泊まったと仮定すると、以下のようにつながります。
▽1日目
12:37酒田駅前13:14→13:38古湊→徒歩12.7km→遊佐駅17:35→17:51吹浦駅前→徒歩0.8km→鳥海温泉
▽2日目
鳥海温泉→徒歩7.2km→三崎公園前09:30→09:51象潟駅前10:10→11:21栄町一丁目(羽後本荘)11:31→12:47秋田駅西口13:00→14:11五城目バスターミナル14:52→15:10八郎潟駅前→徒歩4.7km→天瀬川16:21→16:37琴丘支所・鹿渡駅17:00→17:10森岳
このように、2日目に五城目を超えて、三種町の森岳まで進むことができます。
さらに3日目以降を見てみると、以下のようになります。
▽3日目
森岳07:15→07:40八竜ふれあいセンター08:00→08:28能代ステーション09:06→10:04二ツ井駅前10:31→10:40道の駅ふたつい→徒歩2.2km→薬師山スキー場12:30→12:51鷹巣大町12:58→13:52大館駅前15:37→16:08矢立ハイツ→徒歩3.2km→岩渕公園前17:20→18:20弘前バスターミナル18:45→19:40青森空港20:15→20:50青森駅前
▽4日目
青森駅前07:05→07:50後潟08:30→09:22外ヶ浜中央病院11:30→12:20三厩支所13:19→13:47龍飛埼灯台
このように、4日目の午後早い時間にゴールできます。
ただし、上記のルートでは、八郎潟~天瀬川(三倉鼻公園)間4.7kmを1時間11分で乗り継げるかが微妙です。実際ルートに即したコースで記しましたが、三種町のコミュニティバスは停留所がないため、天瀬川でうまく乗り継げられない可能性もあります。
その場合、八郎潟から、宿泊施設のある森岳付近まで約18km程度を歩くハメに陥っていたかもしれません。それでも、2日目に森岳までたどり着ければ、全体の行程に影響はありませんし、たどり着けなかったとしても、ゴールは可能です。
話を戻すと、酒田駅での情報収集を適当な時間で切り上げて、13時14分発の古湊行きに乗っていれば、一行が目標にしていた鳥海温泉に18時ごろには到着できた、という話です。その後、順調にいけば、4日目の午後早い時間にゴールできていたでしょう。
大潟ルート
実際ルートに戻ります。一行は初日に庄内平野を脱することができず、深夜というか未明に、遊佐町のラブホテルに投宿します。翌朝、三崎公園までほぼ歩き通してバスを捕まえると、その後は順調に進み、2日目夜に五城目に到達します。
五城目でも宿探しに苦労し、スナックに泊めてもらって凌ぎました。3日目は三種町のコミュニティバスの情報をうまく得て乗り込み、鹿渡、八竜を経て能代に至ります。
このルートで無事乗り継げたので、間違ってはいないのですが、一行が検討した、八郎潟駅から大潟方面に向かう方法もみてみましょう。
▽3日目
八郎潟駅前06:52→07:21ホテルサンルーラル大潟→徒歩4.7km→五明光停車場09:10→09:45八竜ふれあいセンター10:00→10:28能代ステーション11:06→12:04二ツ井駅前12:18→12:29道の駅ふたつい
一行の情報収集では、大潟から八竜まで10km以上の徒歩が必要と見込まれていました。しかし、実際には、五明光からのバスルートを発見できれば、5kmほどの徒歩距離で済みます。そのうえ実際ルートより約1時間早く、道の駅ふたついに到着できるわけです。
この場合、道の駅ふたついで少々買い物をしても、薬師山スキー場からのバスに乗り遅れることはなかったでしょう。牽強付会ではあるものの、実は薬師山での乗り遅れの遠因は八郎潟にあった、と解釈することができるかもしれません。
深浦ルート
実際ルートに戻ります。
3日目の大きな分岐点は、能代でした。国道7号やJR奥羽本線に沿って東の大館へ向かうか、国道101号線やJR五能線に沿って海沿いに深浦へ向かうか。「一桁国道」「本線」が示すとおり、メインは大館ルートですが、深浦ルートも気になります。
ここで深浦ルートを採っていたらどうなっていたでしょうか。以下のようにつながります。
▽3日目
11:33能代ステーション12:20→12:40道の駅みねはま12:45→13:41岩館駅前→徒歩4km→板貝入口15:00→16:05深浦診療所前17:55→19:00鰺ヶ沢駅前
▽4日目
鰺ヶ沢駅前07:20→08:12五所川原駅前08:30→09:43青森駅前11:25→12:14後潟→徒歩4.8km→蓬田村役場前15:05→15:30蟹田駅16:20→17:15三厩駅18:30→19:02龍飛埼灯台
深浦町内はコミュニティバスを利用します。曜日によって運転しない区間があるのですが、ロケ当日は水曜日。上記の乗り継ぎが全てつながります。したがって、能代を12時20分のバスで出れば、途中4kmを歩くだけで、3日目に鰺ヶ沢まで到達できます。
4日目に鰺ヶ沢を7時過ぎのバスで出れば、青森駅に午前中に到着でき、5km程度を歩くだけで、19時すぎに龍飛埼灯台へゴールできます。
深浦・五所川原ルート
さらに、上記のルートでは、次のような乗り継ぎも、時刻表上は可能です。
▽4日目
鰺ヶ沢駅前07:20→08:12五所川原駅前11:45→12:43今泉→徒歩14.2km→大平駅16:35→17:15三厩駅18:30→19:02龍飛埼灯台
今泉~大平の14kmの歩きは峠越えで、標高差は70mほどです。徒歩区間が長すぎるので、青森経由より劣後しますが、深浦から鰺ヶ沢を経て、津軽半島内陸部を北上する道のりは面白そうで、テレビ番組としては魅力的でしょう。
いずれにしろ、能代から深浦方面を選択した場合、4km程度の徒歩はありますが、それ以外の乗り継ぎは難しくなさそうです。つまり、ここで深浦ルートを選択していれば、ゴールの可能性が高かったわけです。
薬師山で乗り遅れなければ
閑話休題。一行は能代から二ツ井駅を経て、道の駅ふたついまで順調に乗り継ぎます。ここで気が緩んだのか、買い物に時間を費やしてしまい、薬師山スキー場を14時15分に出るバスを乗り逃してしまいました。
薬師山発の時刻を知らなかったので、やむを得ない側面もあるのですが、仮にこのバスに乗れていたらどうなっていたでしょうか。
▽3日目
二ツ井駅13:26→13:35道の駅ふたつい→徒歩2.2km→薬師山スキー場14:15→14:36鷹巣大町14:58→15:52大館駅前17:27→17:54上陣馬→徒歩3.3km→矢立ハイツ
▽4日目
矢立ハイツ→徒歩5.7km→岩渕公園前08:35→09:35弘前バスターミナル09:50→10:23浪岡10:37→11:21青森駅前12:18→13:06後潟→徒歩2.7km→蓬田村役場前15:05→15:30蟹田駅前市場ウェル蟹前/蟹田16:20→17:15三厩駅18:30→19:02龍飛埼灯台
3日目に矢立ハイツに到達できます。付近の旅館に宿泊し、4日目に早発すれば、龍飛埼灯台に19時過ぎに到着。日没後の劇的なエンディングとなっていたでしょう。
こうして振り返ると、道の駅ふたついでの買い物は、高く付いたというほかありません。
【続きはこちら】
「ローカル路線バスの旅W 第2弾 湯野浜温泉→龍飛崎」の正解ルートを考える【2】最適解を探してみた