格安航空会社LCCは、日本の空に定着してきました。当初は赤字を垂れ流してきたLCC各社ですが、近年は黒字決算が増えています。日系LCC各社が2018年に発表した決算を振り返ってみましょう。
ジェットスター・ジャパン
■第7期決算(2018年6月期)
売上高570億円 営業利益11.34億円 経常利益10.91億円 当期純利益9.53億円
【参考】第6期決算公告(2017年6月期)
売上高528億円 営業利益10.99億円 経常利益14.10億円 当期純利益4.98億円
資本金205億円 資本剰余金205億円 利益剰余金-295.94億円
ジェットスター・ジャパンは、増収増益。国内LCCの売上高で首位を守りました。営業利益率は2%程度で高いとはいえませんが、最終損益にあたる純利益は約9億円を確保し、第6期に比べて改善しました。
2018年6月期の決算公告が確認できなかったのですが、依然として300億円近い累積損失を抱えているとみられます。
ピーチ・アビエーション
■第8期決算公告(2018年3月期) 2018.06.28官報
売上高547億円 営業利益57.93億円 経常利益56.77億円 当期純利益37.28億円
資本金75.15億円 資本剰余金74.85億円 利益剰余金55.38億円
【参考】第7期決算公告(2017年3月期)
売上高517億円 営業利益63.02億円 経常利益53.87億円 当期純利益49.44億円
資本金75.15億円 資本剰余金74.85億円 利益剰余金50.34億円
売上高2位のピーチは増収減益です。利用者は伸びたものの、採用増などで人件費がかさんだとのことです。
売上高は過去最高、5期連続の黒字決算を達成しました。10%を超える営業利益率を誇り、高収益体質を維持しています。ただ、最終利益は37億円にとどまりました。
累積黒字も積み上げており、国内LCCで最も健全経営を達成している会社といえます。
バニラ・エア
■第7期決算公告(2018年3月期) 2018.06.25官報
売上高329億円 営業利益8.46億円 経常利益10.95億円 当期純利益12.32億円
資本金75億円 資本剰余金75億円 利益剰余金-107.91億円
【参考】第6期決算公告(2017年3月期)
売上高239億円 営業損失0.60億円 経常損失2.08億円 当期純損失7.11億円
資本金75億円 資本剰余金75億円 利益剰余金-120.23億円
第6期に赤字転落したバニラエアは、黒字転換を達成しました。第6期は7億円の最終赤字でしたが、第7期は12億円の最終黒字となっています。売上高は3割以上も伸びていて、機材増による路線拡大が奏功しているようです。
春秋航空日本
■第6期決算公告(2017年12月期) 2018.06.22官報
売上高91.41億円 営業損失42.39億円 経常損失42.29億円 当期純損失42.48億円
資本金114億円 資本剰余金54億円 利益剰余金 -195.54億円
【参考】第5期決算公告(2016年12月期)
売上高51.62億円 営業損失38.17億円 経常損失37.83億円 当期純損失37.91億円
資本金114億円 資本剰余金54億円 利益剰余金 -152.98億円
春秋航空日本は、創業以来の赤字決算が続いています。売上高は91億円にまで伸び、100億円をとらえる規模にまで拡大した一方で、損失額は前々期と大きく変わらないので、経営体質はやや改善しているといえなくもありません。ただ、機材6機という運航規模の小さな会社で、累積赤字が200億円近くに達してしまったのは重荷でしょう。
「ピーチ・バニラ」が統合で首位へ
2017年10月29日には、新生エアアジア・ジャパンが中部~札幌線に就航し、国内5社目のLCCとして参入しました。この状況も気になりますが、エアアジア・ジャパンの決算広告などは確認できませんでした。
2019年度には、ピーチとバニラの経営統合が控えています。最新の売上高を単純に足すと約876億円となり、ジェットスター・ジャパンの570億円を大きく引き離し、LCC首位に躍り出ます。
ただ、営業利益率は7%台に低下。ピーチの強みである高収益体質に陰りがでるかもしれません。また、ピーチの前期までの累積黒字は55億円で、バニラの累積赤字107億円を埋めきれません。
国内LCCは、ANA系列の「ピーチ・バニラ」とJAL系列の「ジェットスター・ジャパン」の2大陣営がぶつかりあう構図にまとまってきました。2020年には、JAL系列の中長距離LCC「TBL(準備会社)」の参入なども予定されています。LCCの競争は激しさを増しそうです。(鎌倉淳)