3月16日に決まった「九段下の壁」撤去。東京メトロと都営地下鉄の一体性をPRするも、統一運賃の導入見通しはメド立たず

九段下駅で東京メトロ半蔵門線と都営新宿線を隔てる「壁」が撤去されます。この工事はすでに行われてきましたが、3月16日から利用可能になると発表されました。

東京都交通局と東京地下鉄は、この「九段下駅の乗換改善」のほか、新たなサービスとして、「乗換駅の追加指定」「改札通過サービスの導入」を開始すると発表しました。これらのサービスもいずれも3月16日より実施されます。

九段下駅では、都営新宿線と東京メトロ半蔵門線のホームが同一階に隣合わせに位置しており、4番線(半蔵門線押上方面)と5番線(都営新宿線新宿方面)は構造上は同一ホームです。しかし、ホームの中央部に壁が存在しており、ホーム間で乗り換えることはできませんでした。これが、3月16日より同じホームで対面乗換えが可能になります。

九段下駅

また、改札階では、西側の改札口付近にあった壁が撤去され、3番線(半蔵門線渋谷方面)と6番線(都営新宿線本八幡方面)の乗換えも改札の通過が不要になります。要するに改札内が一体化されます。

「乗換駅の追加指定」は、都営新宿線の岩本町駅と東京メトロ日比谷線の秋葉原駅です。両駅は近距離にありますが乗換駅とされていませんでした。これにより、日比谷線の上野方から新宿線の新宿方への移動の場合、運賃が大幅に安くなるケースがあります。

「改札通過サービス」は市ヶ谷駅と春日駅・後楽園駅で実施されます。市ヶ谷駅では、都営新宿線の利用者が乗換専用改札口から東京メトロの駅構内を通過し、東京メトロの出口まで行くことが可能になります。春日駅・後楽園駅では、東京メトロ後楽園駅の利用者が乗換専用口から都営地下鉄の駅構内を通過し、都営地下鉄春日駅の出口を利用できるようになります。

これらのうち、マスコミでは「九段下の壁撤去」のニュースが大きく取り上げられていますが、正直なところ、九段下の工事は多くの利用者にとっては関係ないでしょう。新宿線の九段下より新宿方面の駅には市ヶ谷、曙橋、新宿三丁目、新宿がありますが、半蔵門線の渋谷方面から利用してきた場合、市ヶ谷へは永田町で有楽町線に乗り換えるのが安くて便利ですし、新宿三丁目や新宿へは渋谷や青山一丁目で乗り換えるほうが早いです。メリットがあるのは曙橋駅利用者のみといえます。

利用者にとってメリットが大きいのは岩本町と秋葉原の乗換えでしょう。日比谷線は東西方向の路線との接続が不便なのですが、今回の措置でそれがやや緩和されます。ただ、いったん地上に出ての乗り換えは億劫なもので、利用者がどの程度増えるのかはわかりません。新宿線はJR総武・中央線と並行していますので、秋葉原でJRを使って東西に移動するほうが便利、という人も多いでしょう。

こう考えていくと、今回開始されるサービスは、実質的な利便性の追究というよりは、東京メトロと都営地下鉄の一体性をPRする象徴的な内容にも思えます。ただ、これで利用者が一体性を実感できるかどうかは疑問です。最も重要なのは統一運賃制度の導入ですが、この導入のメドは立ちません。一都市に複数の地下鉄運賃が存在するというのは、世界的に見ても珍奇な制度で、外国からの観光客にも不評です。象徴的な措置をPRするだけでなく、本質的な問題に早く切り込んで欲しいものです。

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