神戸空港はこう変わる! 新ターミナル建設で、国際線就航へ

地下鉄は作るの?

神戸空港の新ターミナルの概要が公表されました。2025年の国際線就航に向けて、神戸空港はこれからどう変わっていくのか、みてみましょう。

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2025年に国際チャーター便就航

神戸空港は神戸市営の空港として発足しましたが、2018年に関西空港と伊丹空港を運営する関西エアポートが運営権を取得。現在は関空、伊丹と一体的に運営されています。

2023年9月の「関西3空港懇談会」では、関空、伊丹を補完する空港と位置づけられ、1日の発着回数を現行の80回から2025年に120回へ拡大することで合意しました。同時に、国際チャーター便の運用を開始し、2030年前後には国際線定期便が就航することも決まりました。

こうした状況を受け、神戸市では神戸空港のターミナル拡大に着手。2023年2月に「サブターミナル」の事業者を公募していましたが、このほど竹中工務店を代表とするJVに決定。新ターミナルの概要が発表されました。

神戸空港新ターミナル
画像:神戸市「神戸空港新ターミナル整備の概要」
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フラットな構造

新ターミナルは、現在の旅客ターミナルの西側区域に建設します。

コンセプトは、「海に浮かび、森を感じる」。ロビーの天井や展望デッキなどに地域木材を活用します。正面に緑地をランドスケープとして設け、緑と木に包まれた空間デザインとします。

神戸空港新ターミナル
画像:神戸市「神戸空港新ターミナル整備の概要」

地上2階建てですが、旅客が使う機能はほとんどが1階の吹き抜けのロビーに面しています。

出発・到着ロビーや保安検査場、CIQエリア(税関、出入国管理、検疫)、商業施設などの空港機能を同一平面に集約させているのが特徴です。

神戸空港新ターミナル
画像:神戸市「神戸空港新ターミナル整備の概要」

新ターミナルの南側には、新たに駐機場を整備します。新ターミナルから飛行機への搭乗は、ボーディングブリッジはなく、バスで移動します。

そのため、出発・到着ロビーから飛行機まで、同一平面でフラットに移動できます。

神戸空港新ターミナル
画像:神戸市「神戸空港新ターミナル整備の概要」
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ポートライナーの接続は

以上が、新ターミナルの概要です。気になる点を付け加えていくと、まずはポートライナーとの接続です。新ターミナルは、現ターミナルの西約400mに位置しているため、ポートライナーの神戸空港駅から離れています。

この点については、現ターミナルや神戸空港駅から新ターミナルへは、無料バスを運行して接続する方針です。

では、将来的なポートライナー延伸はどうでしょうか。

神戸市が事業者公募サイトで公表している「入札参加者との対話」では、「ポートライナーの延伸を計画に取り込むべきか」という問いに対し、「現行ターミナルとサブターミナルの移動については、バスなどの交通手段を想定しています」と答えています。

つまり、神戸市として、ポートライナー延伸を計画に織り込む必要のないことを念押ししているわけです。

ただ、平面図をみると、ランドスケープの南側にポートライナーを導ける空間を残してあるようにも感じられます。延伸を考慮したかは不明ですが、新ターミナルのロビーに接着しやすい配置になっていることはうかがえます。

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旅客はどのくらいに?

新ターミナルの延床面積は約14,600平方メートルで、現ターミナル(18,600平方メートル)の8割程度です。2019年の神戸空港の年間旅客数は323万人でしたので、新ターミナルの建設で面積が1.8倍になれば、600万人程度の旅客に対応できるとみられます。

では、神戸市は、今後、神戸空港の旅客をどのように見積もっているのでしょうか。

2022年10月19日の神戸市議会経済港湾委員会で示された資料によりますと、国内線の発着回数が120回に拡大した場合の旅客を約512万人と予測しています。

つまり、2025年の国内線発着枠拡大時に、新ターミナルで十分間に合うと計算しているわけです。

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拡大後の新路線は?

発着回数拡大時に想定されている路線別の旅客数の内訳も示されています。

羽田線が1日20回(10往復)で116万人、那覇が14回(7往復)で67万人、新千歳が12回(6往復)で54万人、成田が10回(5往復)で51万人などとなっています。

神戸空港就航先予測
画像:神戸市会 会議結果 経済港湾委員会資料(令和4年10月19日)

ちなみに、現在の就航路線は、下図のとおりです。

神戸空港ネットワーク
画像:神戸市「令和5年度港湾局予算の概要」

新たな就航先候補での注目は、成田の5往復でしょうか。LCCを想定している可能性があります。

そのほか、函館、庄内、富山、小松、福岡などといった、現在就航していない路線も想定しているのが興味深いところです。

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国際線の想定

2030年の就航を予定している国際定期路線に関しては、東アジア方面が1日30回の年間150万人、東南アジア方面が10回40万人で、合計で年間190万人の利用を想定しています。

主たる路線が東アジア方面なので、韓国、台湾、中国方面の路線を主に想定していて、バンコクやシンガポールなども多少は期待できる、ということでしょう。

欧米路線は想定していませんが、関西空港との役割分担や、2500mという滑走路長の問題があるからでしょう。

CIQ面積が広すぎる

国内線512万人、国際線190万人となれば、合計700万人の利用者数となります。こうなると、今回建設する新ターミナルだけでは間に合わず、さらなるターミナルの拡充が必要になります。

その詳細は明らかではありませんが、今回の入札の対話で、以下のようなやりとりがありました。

質問「ピーク時旅客数に対して、CIQの検査施設の設定が、他の空港に比べて余裕があるように見えるため、規模に関する考え方があればお話を伺いたい」

回答「ピーク時旅客に対して必要なCIQ機能の面積については、CIQ関係者との協議を踏まえて設定しています」

簡単にいうと、「出入国管理設備が過大ではないか」という質問に対し、神戸市側は明確な回答を避けているわけです。

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将来的には国際線専用に?

新ターミナルにおいて、国際線は「チャーター便対応」という位置づけです。ただ、上記のやりとりから察するに、チャーター便のみを想定した旅客数よりも大きめのCIQ機能面積が要件として定義されているとみられます。

ということは、おそらく今回の新ターミナルは、将来的に国際線専用になるのでしょう。

今回の新ターミナルは、2025年の大阪万博に備えて国内・国際線両用として建設するものの、2030年の国際定期便就航にあわせて、国際線専用にするのではないか、ということです。

国内線に関しては、現ターミナルを拡幅するなどして、新たにスペースを手当てするのではないでしょうか。

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海上機能強化も

神戸市では、神戸空港の機能強化として、ターミナルとベイシャトル乗り場方面とを結ぶ歩行者デッキの整備の検討もおこなっています。

また、ベイシャトル乗り場からは、新たにウォーターフロントや須磨海岸エリアを結ぶ海上航路の検討もおこないます。

神戸空港歩行者デッキ
画像:神戸市「令和5年度港湾局予算の概要」
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地下鉄は建設するの?

国内線と国際線で700万人の利用者数となれば、中部空港の約1200万人は及ばないものの、600万人規模の鹿児島空港をしのぎ、地方空港では国内トップとなります。

こうなると、アクセスがポートライナーやバス、海上輸送だけでは心許なく、大量輸送が可能な地下鉄の建設も視野に入るでしょう。

実際、神戸市は、今年度に神戸空港の機能強化としてポートライナーの輸送力増強のほか、地下鉄建設の検討もおこなっています。

仮に地下鉄を建設するとなれば、神戸空港のどこに乗り入れるのでしょうか。

その答えはまだわかりません。ただ、新ターミナルに地下階は設けられておらず、地下空間の利用は白紙になっています。(鎌倉淳)

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