近鉄が新型名阪特急「ひのとり」を投入します。運行開始は2020年3月14日。車両の仕様や料金や時刻表など、わかっていることの詳細をまとめてみました。
「アーバンライナー」を置き換え
近鉄の名阪特急は大阪難波~近鉄名古屋間を約2時間で結ぶ全席座席指定の有料特急で、同社の看板列車です。現在は、「アーバンライナー・ネクスト」「アーバンライナー・プラス」の車両で運行しています。
近鉄では、これを置き換え、新たに新型車両「ひのとり」を投入すると発表しました。運行開始は2020年3月14日です。近鉄が名阪間に新たな特急車両を投入するのは、「アーバンライナー・ネクスト」が投入された2003年以来、17年ぶりです。
全座席「バックシェル」
新型車両の形式名は「80000系」で、「ひのとり」は愛称です。スピード感ある車体フォルムや、メタリックレッドの外観デザインが特徴。ゆったりとして気品ある車両のイメージを、翼を大きく広げて飛翔する「ひのとり」に重ね合わせて命名しました。
「ひのとり」は、プレミアム車両とレギュラー車両を備えます。鉄道車両としては日本初の全座席で「バックシェル」を装備。後部座席にはみ出さず、気がねなくリクライニングできます。
客席仕様は?
プレミアムシートは2人掛けと1人掛けの横3列の座席配置。ハイデッカー構造で大型ガラスを使用したことにより、広い眺望を確保しました。
シートには本革を使用。座席の前後間隔は130cmあり、日本の鉄道座席で最大級です。電動リクライニング、ヒーター、コンセント、読書灯などを備えます。車両には横揺れを低減するフルアクティブサスペンションを設置し、乗り心地も改善しました。
レギュラーシートは2人掛けが2列の横4列で、一般的な優等車両の配置です。レギュラーシートでも座席の前後間隔は116cmあり、新幹線のグリーン車並み。フットレストやテーブル、コンセントなどを備えます。
無料Wi-Fiも提供
車内にはサービス設備として多目的に使えるベンチスペースや、コーヒーサーバーなどを設置したカフェスポット、ロッカーなどの大型荷物置き場を用意。喫煙室は1箇所設けます。無料Wi-Fiも提供し、全客室に空気清浄機ナノイーを装備します。
トイレは温水洗浄便座とベビーチェアを設置。多目的トイレにはチェンジングボードやベビーベッド、オストメイト対応設備を配備しています。
セキュリティ対策として、客室やデッキ、大型荷物置き場には防犯カメラが取り付けられます。客室両端の上部には大型液晶ディスプレイを2画面設置し、乗換案内などを4ヶ国語で情報提供します。
11編成72両を投入
6両編成が8編成と、8両編成が3編成の全11編成72両を投入します。先頭車両がプレミアム車両で、中間車両がレギュラー車両です。
6両編成の場合、1号車と6号車がプレミアム車両、2~5号車がレギュラー車両です。8両編成の場合は、中間車両が2両増えます。編成定員は6両編成が239人、8両編成が327人です。
現行アーバンライナー21000系は6両が306名、8両が414名なので、定員は約2割も減少します。シートピッチをゆったり取って、全席バックシェルシートにした結果でしょう。
運行開始時は6両編成3本でスタートし、2020年度中に6両編成5本、8両編成3本を増備し、投入を完了します。
料金は?
定員が減ったことにより、特急料金は値上げとなります。「ひのとり」には特別車両料金が設定され、難波~名古屋間の場合、プレミアム車両で900円、レギュラー車両で200円が加算されます。プレミアム車両の特別車両料金は、アーバンライナーのDX車両より380円高く設定されています(消費税増税後の比較)。
運賃とあわせた大人1人の総額(運賃・料金合計)は、難波~名古屋で、プレミアム車両が5,240円、レギュラー車両が4,540円となります。
価格的には、「新幹線より安く、高速バスより高い」という水準です。「速さよりも、安さよりも、快適に移動したい」という人をターゲットにした列車といえそうです。
「ひのとり」時刻表
2020年3月14日運行開始時の「ひのとり」の時刻表は、以下の通りです。
■平日
難波発 8時・10時・13時・14時・16時・20時
名古屋発 7時・11時・13時・17時・19時・20時
■土休日
難波発 8時・9時・11時・15時・16時20分・19時
名古屋発 8時20分・12時・14時・16時25分・18時・19時
全編成が揃う2020年度中には、大阪難波と近鉄名古屋をそれぞれ毎時00分に発車する特急と、停車駅が少ない名阪特急を全て80000系「ひのとり」で運行します。大阪難波~近鉄奈良間の一部の特急でも使用される予定です。(鎌倉淳)