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観光列車でインフレ激しく。「赤い星」4万円、「はなあかり」は3万円

格差の広がりも

鉄道各社が運行する観光列車のインフレが激しくなってきました。JR北海道は、新たに運行する「赤い星」の石北線でのコースについて、片道4万円程度と発表。JR西日本は、京都から伊賀上野方面の「はなあかり」の値段を3万円程度と発表しました。

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「赤い星」「青い星」

JR北海道は、2027年に始動する「スタートレイン計画」で、運行する「赤い星」「青い星」のプラン概要を発表しました。

ラグジュアリー級の「赤い星」については、石北線方面の札幌~網走間の片道が3~4万円程度。釧網線方面の網走~知床斜里間の片道が2~3万円台と発表しました。いずれも、食事などが含まれたプランで、乗車のみの場合は、1万円程度安くなります。

プレミアム級の「青い星」については、富良野線旭川~富良野間の片道運賃が5,000円程度です。「青い星」に食事付きなどのプランはなく、乗車のみです。

いずれも、乗車のみの場合は駅窓口や券売機で指定席券を販売します。食事付きは、JR北海道のウェブ上での販売とされていて、旅行商品(ツアー)として扱われるようです。

JR北海道スタートレイン「赤い星」
画像:JR北海道プレスリリース

 
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「はなあかり」

いっぽう、JR西日本は、観光列車「はなあかり」を、2025年11月12日、26日、12月3日の3日間、京都~伊賀上野~関間で運行します。団体臨時列車としての運行で、指定席券の一般発売はありません。

価格は、関プランが29,800円。伊賀上野プランが32,800円です。いずれもグリーン車指定席の利用で、スーペリアグリーン車利用の場合は5,000円増となります。

団体ツアーですので、この価格は往復分のようです。片道あたりなら、京都~伊賀上野・関間が15,000円程度ということになります。

はなあかり
画像:JR西日本

 
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「伊予灘ものがたり」は10,000円

観光列車の価格は列車により異なりますが、たとえばJR四国の「伊予灘ものがたり」の場合、乗車のみなら、松山~八幡浜間(62,1km)で4,330円です。内訳は、運賃1,480円、特急料金1,200円、グリーン料金1,700円です。食事料金は5,500円なので、合計で1万円程度です。

車内設備やサービス内容、運行距離の違いがありますので、観光列車の価格を「高い」「安い」と一概に評することはできないでしょう。

とはいえ、「赤い星」や「青い星」、「はなあかり」の価格をみると、観光列車のインフレが激しく進んでいる様子がみてとれます。

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新たな座席種別を設定?

「青い星」については、旭川~富良野間(54.8km)で、乗車のみが5,000円程度とされているので、「伊予灘ものがたり」と同水準です。したがって、特急グリーン車指定席という扱いになるのでしょう。

「赤い星」については、網走~知床斜里(37.3km)で、乗車のみでも最低1万円程度するようなので、既存の「グリーン車指定席」という枠組みでは値付けができません。そのため、新たな座席種別を設定する想定なのでしょう。

「はなあかり」については、京都から伊賀上野は67.1kmなので、今回の往復3万円というツアー価格の値付けは、さすがに高額です。ツアーですので、相応の内容を盛り込むのでしょうが、それでもなかなかの価格です。

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「どれだけ高く売るか」を競う時代に

ただ、観光列車はあくまでも「嗜好品」であり、近郊電車のような「生活必需品」ではありません。したがって、欲しがる人に高く売ることは、非難される話ではありません。

昨今の鉄道事業の厳しさを考えれば、むしろ、「どれだけ高く売るか」を踏まえて、車両や旅行商品の開発を競う時代になってきたともいえます。企業の立場としては、最大の利益が得られる値付けをすることは、当たり前のことでしょう。

そして、高額ツアーであっても、おそらくは売り切れることを予想すると、インフレとともに、格差の広がりを目の当たりにしているということでしょうか。(鎌倉淳)

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旅行総合研究所タビリス代表。旅行ブロガー。旅に関するテーマ全般を、事業者側ではなく旅行者側の視点で取材。著書に『鉄道未来年表』(河出書房新社)、『大人のための 青春18きっぷ 観光列車の旅』(河出書房新社)、『死ぬまでに一度は行きたい世界の遺跡』(洋泉社)など。雑誌寄稿多数。連載に「テツ旅、バス旅」(観光経済新聞)。テレビ東京「ローカル路線バス乗り継ぎの旅」ルート検証動画にも出演。