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都心から羽田直結の「蒲蒲線」計画の採算性は高い様子。でも本当に東横線と空港線に乗り入れられるの?

東京都大田区が、2012年8月21日に新空港線「蒲蒲線」整備調査のとりまとめを発表しました。今回の調査内容は、需要予測と事業性についてです。簡単にいうと、開業後30年間または50年間のスパンで見れば、採算はとれるし社会経済的に見ても意義のある事業である、ということをPRする内容でした。

東急と京急をつなぐ新線

「蒲蒲線」は東急多摩川線と京急空港駅を連絡する新線で、実現すれば東京メトロ副都心線から東急東横線、東急多摩川線、京急空港線を経由して羽田空港へのルートが繋がる、とされています。

計画には地元大田区が特に建設に熱心で、毎年、調査の「とりまとめ」を発表しています。今年発表された「とりまとめ」の内容は、上記以外は昨年と同じでした。東急多摩川線と京急空港線を東急蒲田地下駅(新駅)で対面接続させる、という計画も昨年のとりまとめに書かれており、変更はありません。

大田区平成23年度 新空港線「蒲蒲線」整備調査報告より

副都心線へ直通できるの?

この計画を見て疑問に思うのは、「副都心線からの直通列車を、東急多摩川線を経由して東急蒲田地下駅まで運行可能な計画」を前提としていることです。

たしかに、副都心線から東横線を経て多摩川線への直通列車走らせることは可能でしょう。しかし、多摩川線各駅のホームは4両編成までの対応です。いっぽう、東横線・副都心線は8~10両編成です。まさか東横線に4両編成の列車を走らせるわけにはいきません。

多摩川線の駅ホームの延伸をすれば8連運転くらいまでは可能になるかも知れませんが、その用地は確保できるのでしょうか。あるいは、多摩川駅と蒲田地下駅だけを8連対応にすれば、途中駅無停車の急行列車に限り、8連での運転をすることは不可能ではありません。しかしそうなると途中の待避駅が必要になりそうですが、現在、多摩川線内に待避駅はありません。

線路容量の問題

また、仮に多摩川線が8連運転可能になったとしても、東横線の線路容量の問題があります。東横線渋谷口からの列車は、ほぼ全てが横浜市内まで運転されています。さらに、今後は相鉄線との直通乗り入れの計画もあります。そんな過密路線に、渋谷口から多摩川線に振り向ける列車の線路容量は残されているのでしょうか。

また、いっぽうの京急空港線の容量の問題もあります。計画によれば、京急空港線の一部列車が東急蒲田駅に乗り入れることになっています。しかし、空港線は今度のダイヤ改正で1時間あたり12本の列車が走ることになっています。うち6本が空港線内がほぼ無停車の快特列車。ここにさらに東横線蒲田直通の列車をどう入れ込むのでしょうか。

大鳥居・東急蒲田間の区間運転列車を設定する、という方法もありますが、そうなると大鳥居駅には折り返し設備が必要になるでしょう。でも、いまの大鳥居駅の構造からして、それを作るのはかなり難題に思えます。また、もしそうした区間列車なら、東急蒲田と大鳥居の二駅で乗り換えが必要になり、利便性は下がります。

上記のような点は、筆者でなくても容易に想像ができることです。その解決策が用意されてこの計画が進められているのなら良いのですが、「とりまとめ」に記述は一切なく、あえてそうした点は避けているようにも思えます。

計画自体は素晴らしいが

念のために書きますが、筆者は蒲蒲線ができれば恩恵を受けるエリアに住んでいますし、この計画自体は実現すれば素晴らしいと思います。反対か賛成かと問われれば間違いなく賛成です。

ただ、解決すべき点を置き去りにして、メリットばかりを強調する「とりまとめ」なるものを読むと、気が重くなるのも事実です。多額の税金を投入する計画なのですから、メリットばかりを強調するのではなく、越えるべきハードルをきちんと明示した報告書を読みたいものです。