JR西日本が、新株発行で最大2786億円を調達すると発表しました。国鉄民営化後、JR初の増資ですが、その先に何があるのでしょうか。
最大2786億円
JR西日本は、2021年9月1日の取締役会で新株発行と売り出しを決議しました。国内外の投資家を対象に公募増資と第三者割当増資を実施し、最大で5266万株を発行。現在の発行済株式数の3割弱の増資を行います。最大調達額は2786億円と見込まれます。
1987年の国鉄分割民営化後、公募増資はJRグループで初めてです。
JR西日本は、新型コロナウイルス感染症による鉄道利用者の減少を受け、2020年度の決算が2332億円の最終赤字になりました。2021年度も815億円から1165億円の最終赤字になるという見通しを示していて、今回の増資は、赤字で弱くなった財務体質の改善を図るものです。
前向きな用途だが
調達した資金の使途は、300億円を「鉄道オペレーションの生産性向上」に、300億円を「車両新製」に、700億円を「大阪駅西側エリアの開発」に、300億円を「広島駅ビル開発」に、100億円を「デジタル技術活用」に、それぞれ設備投資資金として充当します。最大約1000億円と見込まれる残額は、長期債務の返済資金に充当します。
車両新製や再開発といった、前向きな設備投資を用途として挙げていますが、内容を見ると、すでに予定されていたものばかりです。「赤字補填」の資金調達では格好が付かないので、大義名分として、進行中の事業名を並べただけに感じられます。
株主に負担をかける以上
発行株式数の3割にあたる新株発行は、既存株主には衝撃的に違いありません。保有株の価値の希薄化という形で既存株主に負担を求めるわけですから、増資後のJR西日本は、業績改善へ強い姿勢を示さざるを得なくなるでしょう。
となると、気になるのが、赤字ローカル線です。JR西日本は、中国地方の山間部を中心に多数の赤字路線を抱えています。株主に負担をかける以上、黒字化の見通しの立たない事業を整理するのは企業として当然で、赤字ローカル線の処理に本腰を入れざるを得なくなるのでは、と心配になります。
JR西日本の株価は、公募増資の発表翌日、16%以上も値下がりして始まりました。公募増資の先にある未来は、株主にとっても利用者にとっても、厳しいものになりそうです。(鎌倉淳)