JR西日本が、2022~24年度平均で利用者の少ないローカル線の収支状況を開示しました。19路線32区間で、計267億円の営業赤字でした。営業係数で最大を記録したのは芸備線の東城~備後落合間で、9,945円。前年のデータより15%改善しましたが、その理由はどこにあるのでしょうか。
19路線32区間
JR西日本が収支状況を開示したのは、2022~24年度平均で輸送密度が2,000人未満の線区です。今回の対象は19路線32区間。2023年度は17路線30区間でしたので、2路線2区間が増えています。
新たに開示対象に加わったのは、赤穂線播州赤穂~長船間と呉線三原~広間です。過去3年の輸送密度が2,000人を下回ったため、今回の開示対象に加わりました。

営業黒字の15%
開示された線区の合計の赤字額は267億円となります。追加2区間を除くと243億円で、前年開示の233億円より10億円増えました。
JR西日本の2025年3月期連結決算の営業黒字は1,801億円です。したがって、黒字額の約15%に相当する赤字を、ローカル線で発生させていることになります。JR東日本は約21%なので、それよりは比率が低いです。

芸備線は改善したが
100円を稼ぐための費用を示す営業係数が最も高かったのは、芸備線の東城~備後落合間で9,945円。前年度(の過去3年間平均)は11,766円でしたので、15%ほど改善しています。
ただ、営業係数の改善は、「過去3年間」という統計の取り方の問題でしょう。除外された2021年度の輸送密度が13で、算入された2024年度が19だったということによるものとみられます。
要するに、2021年度にコロナ禍の影響で利用者が減ったことの跳ね返りということでしょう。15%改善したとしても、利用者が大きく増えたわけではなく、ちょっと残念な理由かもしれません。
同区間は再構築協議会の対象になっていて、実証事業などをおこなっています。ただ、主要な事業が開始されたのは2025年度からなので、その効果は、今回の統計にはおそらく反映されていません。実際、2024年度の輸送密度19という数字は、2023年度の20より低くなっています。
中国山地のローカル線で
次いで営業係数が高かったのは、姫新線中国勝山~新見の4,510円、木次線の出雲横田~備後落合間で3,725円。芸備線の備後落合~備後庄原間の2,903円と続きます。
中国山地のローカル線が、営業係数の高い区間に軒並み名を連ねています。
いずれの路線も輸送密度が100以下で、利用者が少なく収支率が低いという状況に陥っています。JR西日本として、何とかしたいと考えていることでしょう。
山陰線、紀勢線で赤字額が大きく
営業赤字の金額が最も大きいのは山陰線の出雲市~益田間129.9kmで32億円。次いで紀勢線の新宮~白浜間95.2kmが31億円です。
いずれも、区間長が長いので赤字額が大きいという側面はあるものの、紀勢線の場合、キロ当たりの赤字は3,200万円に達します。芸備線の東城~備後落合間は770万円程度なので、キロ当たり赤字額は、紀勢線が芸備線の4倍です。
特急も走るような地方幹線のほうが、鈍行が走るだけのローカル線より、巨額の赤字を生みやすいのは確かなようです。
これらの区間は一定の利用者がいるためバス転換するわけにもいかず、利用者の少ないローカル線よりも扱いが難しそうです。(鎌倉淳)
























