JR九州ローカル線の2019年度線区別収支。肥薩線は赤字12億円

ワーストは日豊線

JR九州が、2019年度の在来線の線区別収支の一部を公開しました。輸送密度2,000人未満のローカル線13路線18区間についてです。復旧が心配されている肥薩線は全線で合計12億円あまりの赤字となりました。

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情報開示2年目

JR九州が収支を公開した路線は、輸送密度(平均通過人員)2,000人未満だった13路線18区間。利用状況の低い路線について、厳しい収支状況を公表することで、沿線自治体や住民に路線維持の協力を求めることが目的です。

JR九州の線区別収支の公表は、2018年度分が初めて。今回はそれに続くものです。

公表された区間の収支は以下の通りです。20区間ありますが、2区間は2019年度に長期運休が発生したため収支を算出しておらず、実質的に18区間となっています。2018年度は不通だった筑豊線が、復旧により2019年度の統計に加わり、収支公表区間が一つ増えました。

JR九州・線区別収支(2019年度)

線名 区間 営業収支
(百万円)
輸送密度
(人/日)
営業収益 営業費 営業損益
日豊本線 佐伯~延岡 391 1,137 ▲746 858
都城~国分 432 799 ▲368 1,389
筑肥線 伊万里~唐津 38 274 ▲235 214
宮崎空港線 田吉~宮崎空港 95 85 10 1,854
筑豊本線 桂川~原田 39 123 ▲84 467
日田彦山線 田川後藤寺~夜明 -(299)※1
後藤寺線 新飯塚~田川後藤寺 75 242 ▲167 1,272
久大本線 日田~由布院 749 845 ▲96 1,756
唐津線 唐津~西唐津 38 223 ▲185 1,024
豊肥本線 肥後大津~宮地 -(1,854)※2
宮地~豊後竹田 44 333 ▲289 96(463)※3
豊後竹田~三重町 108 282 ▲174 917(1,331)※3
肥薩線 八代~人吉 252 873 ▲621 414
人吉~吉松 58 328 ▲270 106
吉松~隼人 110 480 ▲370 605
三角線 宇土~三角 157 399 ▲242 1,187
吉都線 吉松~都城 86 405 ▲319 451
指宿枕崎線 指宿~枕崎 43 397 ▲354 277
日南線 田吉~油津 207 611 ▲403 1,133
油津~志布志 38 495 ▲357 199

※1:日田彦山線(添田~夜明)に2017年九州北部豪雨に伴い運休が発生しているため、参考値として、カッコ内に2016年度の平均通過人員を記載。
※2:豊肥本線(肥後大津~阿蘇)に2016年熊本地震に伴い運休が発生しているため、参考値として、カッコ内に2015年度の平均通過人員を記載。収支は算出せず。
※3:豊肥本線(肥後大津~阿蘇)に2016年熊本地震に伴い運休が発生しているため、参考値として、カッコ内に2015年度の平均通過人員を記載。

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南九州の路線が厳しく

営業赤字が最も大きかったのは日豊線の佐伯~延岡間で、7億4600万円。前年の6億7400万円から約11%増えています。次いで肥薩線の八代~人吉間が6億2100万円(前年5億7300万円)、日南線の田吉~油津間が4億300万円(同4億8500万円)、肥薩線の吉松~隼人間が3億7000万円(同3億5900万円)、日豊線の都城~国分間が3億6800円(同3億9200万円)でした。

一方、2018年度に赤字額ワースト5に入っていた、指宿枕崎線の指宿~枕崎間は3億5400万円(同4億0500万円)に、日南線の油津~志布志間は3億5700万円(同3億9800万円)に、それぞれ改善しました。

最大赤字となった日豊線佐伯~延岡間は特急が走る線区で列車本数も比較的多いため、赤字額が大きいという事情があります。同線に限らず、列車本数が多い路線ほど赤字が増えやすいため、赤字の大きさそのものが問題になるとは限りません。

いさぶろう

筑豊線が初公表

2019年度の統計で初めて数字が明らかになったのは、筑豊線桂川~原田間。2018月7月豪雨で不通になり、2019年3月に運転を再開しました。公表された収支は8400万円の赤字でした。輸送密度は被災前の534から467に13%低下しています。

2017年7月豪雨で被災し、2018年7月に全線復旧した久大線日田~由布院間は、2019年度で収支が改善し、9600万円の赤字にとどまりました。前年の2億5400万円から赤字額を約37%にまで減らしています。

肥薩線は12億円の赤字

2020年7月豪雨で被災した肥薩線八代~人吉間は、前述したように赤字額ワースト2位の6億2100万円。人吉~吉松間が4位で2億7000万円と大きな赤字を計上しています。

吉松~隼人間を含めた肥薩線全体では、12億6100万円の赤字です。肥薩線の今後の復旧については方針が固まっていませんが、復旧費用が巨額になるのは間違いなく、営業赤字額が大きいだけに心配になります。

明るい話題は、上表で唯一営業黒字を計上した宮崎空港線。1000万円の黒字でした。前年は600万円の赤字でしたが、晴れて黒字路線に転換しています。

輸送密度が2,000人に満たなくても黒字を計上している路線がある、というのは、地方鉄道にとっては一筋の光明でしょうか。(鎌倉淳)

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