JR各社が2025年お盆の列車利用状況を発表しました。各路線ともおおむね堅調な利用状況でしたが、一部列車は大雨の影響で利用者を減らしました。とくに、「やくも」は対前年で利用者が大幅減となっています。一方、「サンライズ出雲・瀬戸」は大幅に利用者を増やしました。詳細をランキング形式で見ていきましょう。
2025年お盆の利用状況
JR各社は列車利用状況の統計を「年末年始」「ゴールデンウィーク」「お盆」の3期のみ発表しています。当サイトでは、JR各社が発表した統計をまとめて、各期ごとにランキングにしています。
今回は、「2025年お盆の在来線特急利用者数ランキング」です。2025年8月8日~17日の10日間の統計です。
(配信先で表の表示が崩れる場合は、こちらからご覧ください)
順位 | 列車名 | 区間 | 利用者数(万人) | 前年比 |
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1 | あずさ、かいじ、富士回遊 | 八王子~相模湖 | 36.9 | 106% |
2 | ひたち、ときわ | 我孫子~土浦 | 30.6 | 119% |
3 | サンダーバード | 京都~敦賀 | 22.5 | 103% |
4 | リレーかもめ、みどり | 鳥栖~江北 | 20.0 | 92% |
5 | マリンライナー | 児島~宇多津 | 18.1 | 113% |
6 | 成田エクスプレス | 千葉~成田空港 | 15.0 | 108% |
7 | ソニック | 小倉~行橋 | 14 | 96% |
8 | はるか | 日根野~関西空港 | 12.6 | 109% |
9 | 踊り子、湘南 | 横浜~熱海 | 11.5 | 123% |
10 | しおかぜ、南風など | 岡山~児島 | 11.4 | 111% |
11 | しなの | 名古屋~多治見 | 8.6 | 106% |
12 | カムイ・ライラック・オホーツク・宗谷 | 札幌~岩見沢 | 8.4 | 97% |
13 | しおかぜ | 児島~宇多津 | 7.5 | 112% |
14 | しおかぜ、いしづち | 多度津~伊予三島 | 7.2 | 111% |
15 | くろしお | 和歌山~箕島 | 6.5 | 483% |
16 | 北斗、すずらん | 東室蘭~苫小牧 | 6.4 | 86% |
17 | わかしお、さざなみ | 東京~蘇我 | 5.6 | 119% |
18 | きのさき、まいづるなど | 二条~亀岡 | 5.0 | 93% |
19 | しらさぎ | 米原~敦賀 | 4.6 | 110% |
20 | 南風 | 児島~宇多津 | 4.1 | 105% |
21 | やくも | 岡山~新見 | 3.7 | 79% |
22 | 南風、しまんと | 多度津~阿波池田 | 3.7 | 105% |
23 | いなほ | 新潟~村上 | 3.6 | 88% |
24 | ひだ | 美濃太田~下呂 | 3.2 | 84% |
25 | おおぞら、とかち | 南千歳~トマム | 3.2 | 97% |
26 | スーパーはくと | 姫路~上郡 | 2.8 | 107% |
27 | こうのとり | 大阪~三田 | 2.7 | 102% |
28 | うずしお | 高松~徳島 | 2.6 | 106% |
29 | 宇和海 | 松山~宇和島 | 2.4 | 100% |
30 | しらさぎ | 名古屋~大垣 | 1.7 | 104% |
31 | 南紀 | 松阪~紀伊長島 | 1.1 | 365% |
32 | ふじかわ | 富士~富士宮 | 1.0 | 543% |
33 | しまんと、あしずり | 高知~窪川 | 1.0 | 111% |
34 | しらゆき | 直江津~長岡 | 0.9 | 98% |
35 | ふじさん | 御殿場~山北 | 0.7 | 108% |
36 | つがる | 弘前~青森 | 0.7 | 104% |
37 | サンライズ出雲・瀬戸 | 静岡~浜松 | 0.5 | 278% |
38 | いなほ | 酒田~秋田 | 0.5 | 80% |
39 | リゾートしらかみ | 秋田~青森 | 0.5 | 93% |
40 | 伊那路 | 豊川~本長篠 | 0.2 | 445% |
※「マリンライナー」「リゾートしらかみ」は快速列車。
上記のランキングは、JR各社から広報発表された数字をまとめたものです。JR各社によって、区間選定の基準などがばらばらであることをご承知おきください。
ランキング下位では、百人単位の四捨五入が順位に影響している場合もあります。四捨五入の単位が発表元の各社・支社により異なることもあり、1万人以下のランキングの細かい順位の違いにあまり意味がない点も、ご留意ください。
「あずさ、かいじ、富士回遊」が独走
2025年のお盆の特急列車利用者数でトップに立ったのは、中央東線特急「あずさ、かいじ、富士回遊」です。例年、夏に利用者の多い列車で、今年も36.9万人と独走しました。
2位の常磐線特急「ひたち、ときわ」は30.6万人で、30万人台に乗せました。「ひたち、ときわ」は、前年比119%と高い伸び率です。
3位が北陸線特急「サンダーバード」で22.5万人、4位が長崎線特急「リレーかもめ、みどり」で20万人です。順位は昨年と同じですが、九州豪雨の影響で、「リレーかもめ、みどり」は利用者を前年より減らしています。
「NEX」「はるか」好調
今年は日本人の海外旅行需要も回復してきたようで、東西の空港特急も好調でした。「成田エクスプレス」が15万人で前年比108%となり、豪雨の影響を受けた「ソニック」を抜いて6位に浮上。関空特急「はるか」が12.6万人で前年比109%となり、8位につけました。
「はるか」には万博の追い風もあったはずですが、その割に伸び率は一桁にとどまった、と見ることもできます。飛行機で万博を訪れる客は、それほど多くなかったのかもしれません。
南海トラフ地震臨時情報の反動
2024年のお盆は、「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」の影響も受けました。そのため、太平洋岸に近い区間を走る特急で運休が相次ぎ、利用者減に見舞われました。
2025年のお盆は、その反動で、沿岸を走る特急が大幅増となりました。
9位「踊り子、湘南」が123%、15位「くろしお」が485%、31位「南紀」が365%、32位「ふじかわ」が543%、40位「伊那路」が445%などとなっています。
37位「サンライズ出雲・瀬戸」も、278%と大幅増を記録しましたが、前年の落ち込みを勘案すれば、鈍い戻りです。8月9日からの3連休に、山陰地方で大雨が降り、運休が生じたことが、伸び悩んだ理由と言えます。
「やくも」大幅減の理由
「サンライズ出雲」と同じ伯備線を走る「やくも」は、対前年で大きく利用者を減らしました。大雨により、多くの列車が運休となったことが影響したようです。
加えて、車両の問題もあります。前年夏の「やくも」は、輸送力の高い381系を臨時列車に投入していましたが、今年は全て新型車両273系での運行です。273系は381系に比べて定員が少なく、「やくも」全体として、輸送力自体が減ったことも、利用者減につながっているのでしょう。
そのほか、「ひだ」が84%、「いなほ」が80~88%と利用者減に見舞われました。いずれも大雨による運休が生じたことが影響したようです。(鎌倉淳)