JR東日本が、2022年3月ダイヤ改正で大規模な減便、減車を行う予定であることを明らかにしました。
深澤社長が明かす
JR東日本の深澤祐二社長は、11月9日の定例会見で、2022年3月春のダイヤ改正において、新幹線と在来線の運行本数の削減(減便)や、1列車あたりの車両台数を減らす(減車)方針を明らかにしました。減便・減車はJR東日本の全エリアが対象で、首都圏を含みます。
減便・減車は、新型コロナウイルス感染症の影響で出張や旅行などの需要が減り、鉄道の利用客が少なくなっているためです。JR東日本の10月の鉄道の利用客は、感染拡大前の2019年と比べて、新幹線は54%、在来線は60%です。直近は利用者の回復傾向がみられるもの、首都圏の通勤電車でも8割程度の回復にとどまっているとみられます。
減便の対象となる路線や本数に関しては明らかにしていませんが、深澤社長は会見で「かなり大規模になる」と述べました。一方で、利用状況が回復するなど、混雑が予想される場合には臨時列車を運行するといった、柔軟な対応を目指すとしています。
ローカル線に関しては、「今回のダイヤ改正での廃線は考えてはいない」としたうえで、ワンマン運転の拡大などのコスト削減策を講じることを明らかにしました。
都心部で落ち込み大きく
実際にどの路線がどの程度、減便・減車となるかが気になりますが、現時点では明らかではありません。
JR東日本の2020年度の輸送密度をみると、首都圏の主要路線で、対2018年度比の減少率が大きかったのは山手線です。63%にまで落ち込みました。そのほか、京葉線(東京~蘇我)が64%、中央線(神田~高尾)が65%、埼京線(池袋~赤羽)が68%など、都心に近い路線で利用減が目立ちます。
郊外路線でも東海道線(大船~小田原)や横須賀線(大船~逗子)が69%、高崎線(大宮~熊谷)が67%、東北線(大宮~古河)が65%など、路線により多少の違いはありますが、7割弱に沈んでいます。
新型コロナの状況が落ち着いた現状では、もう少し利用が回復しているとみられますが、在宅勤務を認める企業が増えたことから、従前と同じ輸送量には当面戻らないと考えるのが自然でしょう。
首都圏は減便中心か
深澤社長は、コスト削減策として減便と減車を挙げましたが、首都圏においては減車よりも減便のほうが人件費削減につながり、編成を変える必要も無いことから、効果は高いでしょう。
そのため、基本編成の両数は維持したまま、日中時間帯を中心に運転間隔を広げる路線が増えるとみられます。輸送密度の減少率をみると、山手線とて例外とは言い切れません。
上野東京ラインや湘南新宿ライン、横須賀・総武線といった附属編成のある路線については、日中時間帯を中心に附属編成なしで運転される列車が増えそうです。
利用者の落ち込みが大きいのは、通勤電車よりも新幹線・特急です。これについては、定期列車を減らし、予約状況をみながら臨時列車で輸送力の調整をはかるとみられます。
地方路線については、日中時間帯を中心に減便・減車・ワンマン化が行われそうです。
JR各社の春のダイヤ改正の概要が発表されるのは、例年12月中旬です。詳細が気になります。(鎌倉淳)