JR6社「コロナ決算」を読み解く。JR九州が健闘、JR四国が心配

JR東海は落ち込み大きく

JR旅客6社の2020年度第一四半期の決算がまとまりました。新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言が出された時期で、各社とも対前年度比3割程度の鉄道運輸収入となりました。そのなかで健闘したのはJR九州。JR四国は心配な内容です。

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JR6社決算

さっそく、JR旅客6社の2020年第1四半期(4-6月期)決算を見てみましょう。JR四国は今年度が四半期決算初開示です。下表では、各社の鉄道旅客運輸収入と、連結決算の営業収益、営業損失をまとめてみました。

会社名 鉄道運輸収入 前年度比 営業収益 前年度比 営業損失
JR北海道 57億円 33% 207億円 51% 239億円
JR東日本 1802億円 39% 2313億円 44% 1470億円
JR東海 663億円 19% 1287億円 27% 836億円
JR西日本 721億円 32% 1633億円 45% 942億円
JR四国 22億円 37% 44億円 37% 76億円
JR九州 132億円 35% 618億円 62% 157億円

鉄道運輸収入は7割減

鉄道運輸収入は、5社で対前年比30%台です。コロナにより6-7割程度の運輸収入が失われた、というのが平均的なところです。

落ち込みが小さかったのがJR東日本。対前年度比39%でした。首都圏の通勤・通学という「必要不可欠」な需要に支えられたのでしょう。

逆に、落ち込みが大きかったのがJR東海。対前年度比19%です。同社は東海道新幹線に収益を大きく依存しているため、「不急不要」の旅行や出張の急減が経営の根幹を揺らしました。

それにしても、JR四国の運輸収入が3ヶ月間でわずか22億円というのは、改めて驚かされます。JR東日本の1802億円の1%に過ぎず、同じ「JR」といっても、経営格差が非常に大きいことがわかります。1日あたりにするとわずか2400万円です。

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営業収益は差が開く

次に、連結決算の営業収益を見てみます。これはJR各社で差が開きました。

健闘したのはJR九州。対前年度比で62%です。多角化により、鉄道事業に過度に依存しない体制を築きつつあることが察せられます。JR北海道51%、JR西日本45%、JR東日本44%と続き、これらの会社も鉄道事業の落ち込みを関連事業でカバーしています。

JR四国の営業収入は対前年比37%で、鉄道運輸収入と同程度の落ち込みとなりました。もっとも落ち込んだのはJR東海で、対前年度比27%となりました。東海道新幹線に頼る収益構造の結果といえます。

東海道新幹線のデータだけを取り出してみると、2020年度第1四半期の収入は547億円。前年度が3265億円でしたので、約17%に落ち込んでいます。東海道新幹線の落ち込みが、同社全体の足を引っ張ったことがわかります。

ただ、同社の営業損失は836億円でしたので、東海道新幹線の収入が1500億円程度にまで回復すれば、おおむねカバーできそう。つまり、通常の5割程度にまで東海道新幹線の旅客が回復すれば、連結決算が黒字になりそうです。それほど高いハードルではありませんので、JR東海の経営を当面心配する必要はなさそうです。

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JR四国が心配

JR6社の「コロナ決算」を見比べて、特筆すべきはやはりJR九州の強さでしょう。鉄道事業の収入が3分の1に落ち込んでも、通常の6割の営業収益を確保したのは驚きです。詳細をみると、不動産賃貸が対前年度比76%、流通・外食が75%と引っ張りました。

JR九州の連結営業赤字は収益の25%にとどまり、「鉄道がなくても生き残れる会社」になっていることがうかがえます。

JR北海道もわりと健闘しており、鉄道運輸収入が3分の1になっても、営業収益は半減で踏みとどまりました。JR北海道は札幌駅周辺の小売業や不動産賃貸業が収益に大きく貢献していて、今決算で両セグメントを足した売上は99億円。バスなどを含めた運輸業の93億円を上回りました。コロナ禍によって、企業として進む道が改めてはっきり示された、といえるかもしれません。

最も心配なのはJR四国でしょう。そもそもの収益基盤が脆弱なのはいまさらの話ですが、鉄道事業以外の収益源が育っていないことが見て取れます。連結営業収益の1.7倍もの営業損失を出してしまったのは、気がかりというほかありません。(鎌倉淳)

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