「ローカル路線バスの旅 陣取り合戦」第11弾 栃木県を分析する。意外な敗因は?

どデカ陣地の誘惑

「ローカル路線バス乗り継ぎ対決旅 陣取り合戦」第11弾が放送されました。太川陽介が率いるチームと河合郁人が率いるチームが、栃木県内の市町村を陣に見立てて競いました。

乗り継ぎで気になった部分を検証してみましょう。なお、以下はネタバレ100%です。あらかじめご了承ください。(文中敬称略)

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市町村を取り合う

「ローカル路線バス乗り継ぎ対決旅 陣取り合戦」は、ローカル路線バスを乗り継いで「陣」に見立てた各市町村の名所・名物を体験し、その数を競うテレビ番組です。

その第11弾が2023年6月7日にテレビ東京系列で放送されました。対決したのは、ルイルイこと太川陽介が率いるチームと、A.B.C-Zの河合郁人が率いるチームです。

太川チームには、元HKT48の村重杏奈とお笑い芸人の永野が参加。河合チームには、元バレーボール日本代表の栗原恵に、元サッカー日本代表の大久保嘉人が加わりました。

どちらのチームも使っていいのはローカル路線バスのみ。ただし、両者とも1万円までタクシーを利用できます。

スタートは栃木県宇都宮市の宇都宮駅。ゴールは宇都宮市内の二荒山神社で、最寄りバス停は馬場町です。栃木県内の25市町を陣に見立て、1泊2日で陣取りを競います。ゴール時刻は18時までで、より多くの陣を確保したチームが勝ちです。

今回は面積の広い自治体を取ると2ポイントとなる「どデカ陣地ボーナス」が設定されました。ただし、陣の位置を確認できるのは、2日目の朝8時以降という制約が付いています。

ローカル路線バス乗り継ぎ対決旅陣取り合戦11in栃木
Ⓒテレビ東京

水バラ ローカル路線バス乗り継ぎ対決旅 陣取り合戦 第11弾
【出演】 太川陽介、村重杏奈、永野、河合郁人(A.B.C-Z)、栗原恵、大久保嘉人
【放送日】2023年6月7日(水) 18時25分~21時00分(テレビ東京系列、見逃し配信あり)

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太川チームの実際ルート

まずは、両チームが実際に旅したルートをおさらいしてみましょう。時刻表上の定刻をわかる範囲で確認しました。番組ではっきり示されなかった時刻や距離、経路は、筆者による推定です。ロケは日曜日から月曜日にかけて行われたようなので、1日目が日曜ダイヤ、2日目が月曜ダイヤに依拠しています。

最初に太川チームのルートです。☆は獲得した「陣」の市町村名です。

▽1日目
宇都宮駅09:13→09:59(遅延10:27)陶芸メッセ入口→徒歩0.3km→窯元共販センター(☆益子町)→陶芸メッセ入口12:42→13:16鐺山十字路14:35→14:51台町→徒歩0.4km→15:13真岡駅→SLキューロク館(☆真岡市)→真岡駅前15:40→15:57上三川車庫前→徒歩0.9km→白鷺神社(☆上三川町)→上三川車庫前16:57→17:17石橋駅→徒歩2.2km→17:48マツガミネコーヒー(営業時間外)→徒歩0.3km→グリムの森入口18:15→18:23おもちゃのまち交差点北→徒歩2.5km→19:03道の駅みぶ(☆壬生町)→徒歩2.5km→20:00おもちゃのまち交差点北

▽2日目
おもちゃのまち交差点北07:36→07:54石橋駅08:05→09:05宇都宮駅西口09:25→10:50日光東照宮→徒歩すぐ→安川町10:48(遅延)→11:28中禅寺温泉→徒歩0.3km→華厳滝(☆☆日光市)→徒歩0.3km→中禅寺温泉12:00→12:36東武日光駅12:45→タクシー7km、3,900円→道の駅日光ニコニコ本陣→徒歩すぐ→小倉町13:13→14:14馬場町14:34→15:07若林入口→→徒歩1km→マツガミネコーヒー(空振り)→タクシー→鹿沼市内→17:48馬場町→徒歩0.1km→二荒山神社

放送で明らかにされていたのは、下野市のマツガミネコーヒー(グリムの森)からタクシーで出発し、鹿沼市内に入った付近までです。

国道121号をタクシーで進んだようですので、付近には運転免許センターのバス停があり、16時発の宇都宮駅行きがあります。それに乗れば17時までにゴールできそうですが、実際のゴールは18時ごろのようです。したがって、最終局面の乗り継ぎはよくわかりません。

太川チームが獲得した陣は、益子町、真岡市、上三川町、壬生町、日光市(2陣)の5箇所6陣でした。


※Googleマップのルートは概略です。以下同。

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河合チームの実際ルート

つづいて、河合チームの実際ルートです。

▽1日目
宇都宮駅08:59→09:25芳賀工業団地西→徒歩1.9km→10:20唐桶宗山公園(☆芳賀町)→徒歩1.8km→芳賀バスターミナル11:44→11:56芳賀町役場→徒歩4.4km→13:05道の駅サシバの里いちかい(☆市貝町)→道の駅いちかい14:22→14:51JR烏山駅→徒歩0.5km→山あげ会館(☆那須烏山市)→徒歩0.5km→JR烏山駅15:35→16:07川崎入口→徒歩すぐ→大八寿司(☆那珂川町)→タクシー20km、8,200円→さくら市スバル付近→徒歩4.6km→お食事処勝山(さくら市、営業時間外)→徒歩2.6km→20:00氏家仲町

▽2日目
氏家仲町07:38→徒歩7.1km→朝日屋本店(☆高根沢町)→徒歩0.2km→10:09宝積寺駅→タクシー1,800円+徒歩、計6km→10:47 JR岡本駅西口11:15→11:39宇都宮駅東口/西口13:00→13:37若林入口→徒歩1km→マツガミネコーヒー(☆下野市)→徒歩1km→若林入口14:57→15:32馬場町→徒歩0.1km→二荒山神社(☆宇都宮市)

2日目の下野市の陣にまつわる乗り継ぎの詳細ははっきりしませんが、上記のように乗り継げば、締め切り2時間前に二荒山神社に到着します。ただ、上記乗り継ぎでは、2日目の宇都宮駅での滞在時間がやや長いので、偵察などをしてから下野市の陣に向かったのかもしれません。

河合チームが獲得した陣は、芳賀町、市貝町、那須烏山町、那珂川町、高根沢町、下野市、宇都宮市の計7陣7箇所です。6陣の太川チームを上回り、河合チームの勝利となりました。最終的には、ゴールの宇都宮市の陣の帰趨が勝敗を分けた格好です。

最終日、太川チームは14時すぎにゴールの目の前まで来ていながら、下野市を欲張った結果、宇都宮市と合わせて取り損ね、勝利を逸した形です。

そのため、「太川チームが14時すぎにゴールしていたら勝てた」という話で終わってしまうのですが、もう少し細かい点もみながら、番組で気になった乗り継ぎを検証していきましょう。

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市貝町の陣を狙っていたら

最初に太川チームの検証です。

1日目、太川チームは宇都宮駅09時13分発のバスで益子に向かいました。途中、芳賀町や市貝町を経由しますので、その陣の位置も把握します。しかし、どちらの陣にも立ち寄らず、益子町の陣へ直行。ただ、後で、ルイルイは市貝町の陣に寄らなかったことを後悔します。

では、仮に市貝町の陣を狙っていたら、どうなっていたでしょうか。

▽1日目
宇都宮駅09:13→09:45赤羽小学校前→徒歩5.2km→道の駅サシバの里いちかい(☆市貝町)

益子行きバスを赤羽小学校で降車し、約5kmを歩くと市貝町の陣のある道の駅に着きます。赤羽小学校前到着が定刻で09時45分ですので、バスの遅延などを考慮しても、11時30分には陣に到着できたでしょう。

河合チームが芳賀町の陣を得た後に、道の駅いちがいに着いたのは13時ごろ。すなわち、太川チームが市貝町の陣に直行していたら、獲得できていたに違いありません。

序盤で太川チームが市貝町の陣を押さえることは、河合チームの進路を妨げる効果もあります。そうすると、河合チームは進路に窮し、益子町や真岡市に転じて先手を奪い合う乱戦になっていたかもしれません。

そのほうが番組的にも盛り上がりそうですから、ルイルイにしてみれば、逃した大魚は大きそうです。

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益子からタクシーに乗っていたら

実際ルートに戻ります。太川チームは、益子町の陣を押さえた後、真岡市の陣(SLキューロク館)、上三川町の陣(白鷺神社)と順調に展開しました。しかし、下野市ではマツガミネコーヒーの営業時間が終わっていて、取り逃します。

益子町から下野市までの乗り継ぎにミスはないので、この営業時間外はやむを得ない展開とも感じられます。

ただ、振り返って見ると、益子町でバスを待ち、2時間くらい滞在したのが、もったいなかったようにも感じられます。ここでタクシーを使っていれば、もう少し早く進むことは可能でした。

▽1日目
宇都宮駅09:13→09:59(遅延10:27)陶芸メッセ入口→徒歩0.3km→窯元共販センター(☆益子町)→タクシー12km→SLキューロク館(☆真岡市)→真岡駅前13:25→13:42上三川車庫前→徒歩0.9km→白鷺神社(☆上三川町)→上三川車庫前14:47→15:07石橋駅→徒歩2.2km→15:30マツガミネコーヒー(☆下野市)→徒歩0.3km→グリムの森入口16:48→16:56おもちゃのまち交差点北→徒歩2.5km→17:30道の駅みぶ(☆壬生町)→徒歩2.5km→18:30おもちゃのまち交差点北19:01→19:17石橋駅

▽2日目
石橋駅06:25→06:55東武駅前07:22→08:51日光東照宮/安川町09:10→09:50中禅寺温泉(☆☆日光市)10:00→10:36東武日光駅12:06→13:16馬場町→二荒山神社(☆宇都宮市)

このように、1日目は下野市の陣を確保したうえで、石橋駅まで到達できます。宇都宮市内には戻れませんが、石橋に泊まり、2日目始発のバスに乗れば、7時すぎに宇都宮駅に到着。そこから日光市の陣を目指した場合、13時すぎにゴールできます。早い時間帯のゴールにもかかわらず、合計8陣を獲得していて、勝利の可能性が高かったように思えます。

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鹿沼市へ向かっていたら

実際ルートに戻りましょう。1日目、太川チームは下野市の陣を取れなかったものの、壬生町の陣は獲得し、おもちゃのまち交差点北で終わりました。

2日目、始発バスで石橋駅を経て宇都宮へ向かいました。この後、日光市を狙いにいきましたが、仮に鹿沼市を狙っていたらどうなっていたでしょうか。

▽2日目
おもちゃのまち交差点北07:36→07:54石橋駅08:05→08:43東武駅前08:50→09:27鹿沼駅10:20→11:23古峯神社(☆☆鹿沼市)→タクシー23km→足尾駅前13:20→13:54清滝14:27→14:58中禅寺湖温泉→華厳滝(☆☆日光市)→中禅寺湖温泉15:30→16:03石屋町16:05→17:20馬場町

このように、古峯神社から足尾を経由すれば、時刻表上は鹿沼・日光の両取りが可能です。ただ、あくまで時刻表上の話で、乗り継ぎはギリギリですし、古峯神社に都合よくタクシーを呼べるかという問題もあり、実現可能性はかなり低いでしょう。言い換えれば、日光市と鹿沼市の「どデカ陣地両取り」は事実上不可能な設定だった、ということになります。

ただ、宇都宮を9時頃に出発すれば、昼前には古峯神社に到着しますので、往復して宇都宮市内に戻ることはできます。

▽2日目
東武駅前08:50→09:27鹿沼駅10:20→11:23古峯神社(☆☆鹿沼市)13:00→13:58朝日町14:03→14:38馬場町

この場合の陣数は日光へ往復したのと同じで、馬場町到着時刻も大差ありません。つまり、宇都宮市を朝に出た場合、日光市へ向かっても鹿沼市へ向かっても、同じような結果になっていた、ということです。

これについては、後でもう少し触れます。

つづいて、河合チームの検証です。

【次ページ】河合チームの検証 

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