日本航空(JAL)がジェットスター・ジャパンの出資比率を引き上げ、50%としました。日本のLCC勢力図はどう変わるのでしょうか。
三菱商事から買い取り
格安航空会社LCCのジェットスター・ジャパンが2011年に設立されたとき、JALは33%を出資。その後、ジェットスター・ジャパンは増資を重ねましたが、出資比率は変わりませんでした。
ところが、2019年9月30日までに、JALは三菱商事が保有していた同社株の16.7%を買い取り、出資比率を50%に高めました。これにより、ジェットスター・ジャパンの出資比率はJAL50%、豪カンタスグループ33.3%、東京センチュリー16.7%となっています。東京センチュリーは大手総合リース会社で、伊藤忠商事の持分法適用会社です。
「ジェットスター」の本家本元はカンタス系列の豪・ジェットスターです。ジェットスター・ジャパンでは、これまで、JALとカンタスは同じ出資比率でしたが、今後はJALが筆頭株主として同社を先導していくことになります。JALはジェットスターを連結子会社にはせず、事業面での連携を強化するにとどめます。
ピーチが国内最大手に
ジェットスター・ジャパンは、これまで国内LCCで売上高首位でした。しかし、ANA傘下のピーチ・アビエーションがバニラエアを吸収合併し逆転。国内LCCの最大手はピーチとなっています。2019年に発表された決算の売上高では、ジェットスターが605億円、ピーチが604億円、バニラ331億円。単純計算で、バニラを合併したピーチが売上高935億円となり、ぶっちぎりで首位に立ちます。
ピーチの出資比率はANAホールディングスが77.9%、ファーストイースタン・インベストメントグループ(香港)が7.0%、INCJが15.1%で、ANAが4分の3以上の株式を保有して支配的な地位にいます。
ジップエアとの棲み分けは
一方のJALは中長距離LCCを運航するジップエアトーキョーを、100%出資の子会社として設立済みで、2020年に運航を開始する予定です。
ジェットスター・ジャパンも、エアバスA321LRを2020年に導入し、東南アジアなど中距離国際線への進出を検討しており、ジップエアと事業領域が重なります。今回、JALがジェットスター・ジャパンの筆頭株主になり、「JAL」色を鮮明にしたことで、今後はジップエアとジェットスターの関係性も議論になりそうです。
中長距離路線にはピーチも参入を表明していて、これからしばらくは、国内LCC各社の主戦場となりそうです。
独立系は苦戦
他の国内LCCとしては、中国の春秋航空系列の春秋航空日本(スプリング・ジャパン)と、マレーシアのエアアジア系列で楽天やノエビアなどが出資するエアアジア・ジャパンがあります。
両社とも国内大手航空会社の出資を受けない「独立系」ですが、いずれも国内路線のネットワーク作りには苦戦しており、いまのところ限定された区間に就航しているだけです。
決算を明らかにしている春秋航空日本の売上高は95億円。エアアジア・ジャパンの売上高はさらに少ないとみられ、LCC大手2社の背中は遠くかすんでいます。(鎌倉淳)