茨城空港「500円バス」廃止へ。補助金打ち切りで値上げ確実に

格安旅行者には残念

東京駅と茨城空港を結ぶ「500円高速バス」が廃止され、値上げの見通しとなりました。茨城県がこれまで支給していた補助金を、2019年度で終了する方針を明らかにしたためです。

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「ワンコインで利用可能」

東京駅~茨城空港を結ぶ高速バスは片道あたり1日6~9便運行されています。所要時間は1時間40分~2時間半。通常料金は1,530円ですが、茨城空港発着の飛行機の搭乗者は500円で利用できます。「ワンコインで利用可能」と茨城空港もPRしてきました。

この「500円バス」は、茨城県の補助金を受けた価格設定です。これについて、茨城県の大井川和彦知事は2019年1月22日の記者会見で、バス会社への県補助金を年度末の2019年3月末限りで打ち切る方針を明らかにしました。

県は補助金として年7,500万円の予算を計上してきましたが、2020年度は計上しません。これにより、茨城空港への「500円バス」は廃止となり、通常価格になる見通しです。

茨城空港
画像:茨城空港ウェブサイトより

就航対策として導入

「500円バス」は、茨城空港が開港した2010年から実施されています。茨城空港は、開港当初、就航便の誘致に苦労したため、その対策として導入された施策です。

しかし、近年は発着便が増加。茨城空港は航空自衛隊百里基地と共用で、「1時間1便」という運航ルールがあるため、今後の増便は厳しい状況になってきました。

利用者も着実に増加し、近年は毎年10万人以上が利用しています。2018年度は過去最高の11万8882人を記録しました。こうしたことから、就航対策としての「500円バス」は当初の役割を終えたという判断になったようです。

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政策転換

同日の定例会見で大井川知事は「茨城空港に到着したとくにインバウンドの利用者がまっすぐ東京に行ってしまっているのではないか。地元である茨城県で消費することなく、そのまま東京へ行って、また東京から茨城空港を使って帰っているのではないか」と懸念を示しました。

つまり、茨城県の予算で500円バスを利用して東京に行って帰ってくるだけで、茨城県にお金を落としていないのではないか、と分析しているわけです。

就航誘致の段階では、東京を最終目的地とする需要を取り込んででも就航便を誘致することが優先事項であったわけですが、当初の目的を達したいま、東京駅への連絡バスに補助金を投じる必要性はなくなったわけです。

大井川知事は会見で、「県内の周遊の交通ルートに予算を重点配分して、例えば、県内での個人観光客の交通手段が無いという問題をクリアすること」などに政策の舵を切る姿勢を示しました。

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格安旅行者には残念

「500円バス」廃止後に、東京駅~茨城空港間のバスがどうなるのか、現時点では不明です。とりあえずは通常価格である1,530円に統一される可能性が高いでしょう。

茨城空港は、スカイマークやアジア系LCCなど、低価格の航空会社が就航しています。東京駅から500円でアクセスできることは、そうした航空会社を愛する格安旅行者にとっては、大きな魅力となってきました。茨城県の懸念は理解できるとはいえ、この魅力が失われることは残念でしょう。

一方で、首都圏のLCC拠点である成田空港へは、東京駅から1,000円のバスでアクセスできます。成田空港の格安便は茨城空港よりも豊富ですし、茨城空港の500円バス廃止は、格安利用者にとって大きな問題にはならないでしょう。今後、茨城空港は北関東エリアの利用者のための空港として、存在感を発揮していきそうです。(鎌倉淳)

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