国土交通省が、北陸鉄道の鉄道再構築実施計画を認定しました。2025年4月に「みなし上下分離」に移行し、2028年以降に新型車両を導入します。
2025年再構築開始
北陸鉄道は金沢近郊で石川線と浅野川線の2路線を運行する地方私鉄です。近年は慢性的な赤字に陥り、単独での維持が困難として、上下分離を行政に求めていました。
これを受け、金沢市周辺自治体で構成する石川中央都市圏地域公共交通協議会が協議し、2023年8月に両線の維持と上下分離の受け入れを決定。2024年11月に、国交省に対し、鉄道事業再構築実施計画を申請しました。
2024年12月26日付で国がこれを認定し、2025年4月以降、北陸鉄道の再構築が開始されることになりました。
みなし上下分離へ
再構築により、北陸鉄道はこれまでの民設民営から、みなし上下分離に移行します。みなし上下分離とは、鉄道会社が鉄道施設を保有し運営するという事業形態の変更はしないものの、施設の整備費や維持費を行政が負担するものです。
みなし上下分離への移行により、北陸鉄道の施設の整備に要する費用と、修繕に関する費用の全てを、石川県と沿線市町が負担します。また、鉄道施設などの維持管理費については、一定金額を上限に、沿線市町が負担します。
石川線で車両更新
再構築事業の目玉は車両更新です。石川線の車両は製造から約60年が経過していて、経年劣化による運行不能が危惧されていることから、早期に更新をおこないます。
石川線の順次全6編成を、現行の車両規格(18m級車両2両1編成・直流600V)で更新します。2025年度より発注手続きに着手しますが、メーカーの供給能力などの関係で、実際の納車は2028年度から2030年度になる見込みです。
新型車両の導入により、CO2排出を削減し、乗り心地の改善や、新型車両効果による利用者増を図ります。新型車両導入の事業費は39.5億円を見込みます。
軌道と駅も改良
軌道と駅の改良もおこないます。
軌道については、レールの重軌条化や道床交換をすすめ、安全性の向上や走行振動の抑制を図ります。乗り心地が改善し、騒音も低減します。
また、駅ホームの段差を解消し、スロープを設置します。コミュニティスペースの設置も図ります。
軌道と駅の改良の事業費 は72.2億円を見込みます。
キャッシュレス対応も強化
また、クレジットカードやQRコード乗車券によるタッチ決済も導入します。交通系ICカードとしては、北陸鉄道グループで利用可能な交通系 IC カード「ICa」(アイカ)が対応します。
こうしたキャッシュレス対応強化の事業費は2.6 億円です。
日中時間帯に増便
石川線では、ダイヤ変更や増発もおこないます。まず、日中時間帯に増便し、昼間時間帯の利便性向上を図ります。
さらに、新型車両導入に合わせ、朝夕通勤時間帯の増便に取り組みます。
パーク・アンド・ライドの利用も促進します。駅付近の駐車場などとの連携を図り、北陸鉄道線の利用者増加と、金沢市内中心部へのマイカー流入の抑制を図ります。
利用者増の目標掲げる
新型車両導入、軌道・駅の改良、キャッシュレス対応には、社会資本整備総合交付金を活用します。事業費の総額は222.5億円です。
鉄道再構築事業の実施により、2023年度に266万人だった利用者を、314万人まで引き上げる目標を掲げます。
沿線自治体では、中長期的な計画として、金沢市中心部への乗り入れにも検討しています。北陸鉄道が、これから大きく姿を変えそうで楽しみです。(鎌倉淳)