北陸鉄道再構築計画の概要。石川線に新車6編成を2028年度に導入

25年4月にみなし上下分離

北陸鉄道の再構築計画の概要が明らかになりました。2025年4月にも「みなし上下分離」に移行し、2028年以降に新型車両を導入します。

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再構築計画の概要公表

北陸鉄道は金沢近郊で石川線と浅野川線の2路線を運行する地方私鉄です。近年は慢性的な赤字に陥り、単独での維持が困難として、上下分離を行政に求めていました。

これを受け、金沢市周辺自治体で構成する石川中央都市圏地域公共交通協議会が協議し、2023年8月に両線の維持と上下分離の受け入れを決定。「みなし上下分離」をおこない、支援する方針を明らかにしました。

支援は、国の鉄道事業再構築事業に基づいておこないます。2024年7月31日に開かれた同協議会会合で、北陸鉄道の鉄道事業再構築実施計画の概要が明らかになりました。以下でその内容をみていきましょう。

北陸鉄道石川線

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25年にみなし上下分離を実施へ

まず、北陸鉄道は、これまでの民設民営から、みなし上下分離に移行します。みなし上下分離とは、鉄道会社が鉄道施設を保有し運営するという事業形態の変更はしないものの、施設の整備費や維持費を行政が負担するものです。

北陸鉄道がみなし上下分離を選択した理由は、移行までの期間の短さです。みなし上下分離は、資産譲渡などをしないため、すみやかに事業構造を変更できます。同社の車両や設備は老朽化が著しいため、一刻も早く更新に手を付ける必要があり、短期間で事業構造を変更できる形態を選んだということです。

沿線自治体は鉄道事業再構築実施計画をとりまとめ、早ければ2025年4月にもみなし上下分離に移行します。

北陸鉄道再構築
画像:「北陸鉄道線を中心とした広域公共交通ネットワーク再生戦略(案)」令和6年7月石川中央都市圏地域公共交通協議会

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石川線全編成を更新

目玉となるのは車両更新です。石川線の車両は製造から約60年が経過していて、経年劣化による運行不能が危惧されていることから、「早急な更新が必要」とされました。

石川線の順次全6編成を、現行の車両規格(18m級車両2両1編成・直流600V)で更新します。2025年度より発注手続きに着手しますが、メーカーの供給能力などの関係で、実際の納車は2028年度から2030年度になる見込みです。

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浅野川線線転属も視野

車両更新には不確定要素もあります。というのも、石川線では、IRいしかわ鉄道西金沢~金沢間の乗り入れや、野町から香林坊方面への延伸が検討されているからです。この検討の結果によっては、石川線で別規格の車両を用意しなければならなくなります。

その場合は、新型車両を浅野川線に転属させ、同線の老朽車両と入れ替えます。浅野川線の03系は2023年度時点で車齢が約30年に達しており、早晩、更新が必要になってくるためです。

ただし、浅野川線は直流1500Vで、石川線と電圧が異なります。そのため、新車両は、両電圧に対応可能な形で製造されるとみられます。

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タッチ決済に対応へ

その他の施策としては、石川線の列車の増便や、ダイヤ改正をおこないます。一部は2024年度から先行実施をします。

また、クレジットカードやQRコード乗車券によるタッチ決済も導入。交通系ICカードとしては地域カードのICa(アイカ)が対応しますが、全国交通系ICカードの導入は謳われていません。熊本で話題にもなりましたが、コストの高さへの懸念があるのかもしれません。

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従業員施設も改善

鉄道そのものの観光資源化にも力を入れます。駅ホームの段差に斜路を設置し、サイクルトレインを全駅で対応します。

老朽化している鶴来車両工場も改修、変電所も更新します。乗務員の休憩施設や仮泊施設も更新し、女性専用施設も新設するなど、従業員の使用施設も改善します。

鉄道運転免許取得費用の補助や採用活動の強化も実施します。

北陸鉄道再構築
画像:「北陸鉄道線を中心とした広域公共交通ネットワーク再生戦略(案)」令和6年7月石川中央都市圏地域公共交通協議会

北陸鉄道再構築
画像:「北陸鉄道線を中心とした広域公共交通ネットワーク再生戦略(案)」令和6年7月石川中央都市圏地域公共交通協議会

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LRT化も検討?

支援の規模は、2040年度までの15年間で、総額で約132億3000万円です。このうち、金沢市、白山市、野々市市、内灘町が46億9000万円を、石川県が28億8000万円を負担します。残りの約56億円は国の補助金を活用します。

全体としては、車両更新を急ぎつつ、中長期的に鉄道を地域公共交通の軸に据え、人材を確保して持続可能な公共交通機関として維持していこうという意気込みが感じられます。

中長期的な課題である金沢市中心部への乗り入れに関しては難題ですが、注目点として「香林坊方面への軌道敷設可能性」という文言が盛り込まれました。石川線をLRT化して、市中心部に併用軌道を敷くことも検討していくのかもしれません。(鎌倉淳)

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