北陸新幹線の敦賀~新大阪延伸の着工のメドが立っていません。国交省は、与党や沿線自治体が求める2023年度当初の着工を正式に断念しました。
環境アセスが進まず
北陸新幹線敦賀~新大阪間は約140km。敦賀のほか、東小浜付近、京都、松井山手付近、新大阪に駅を設けます。2017年3月にルートの概略が決定し、2019年11月に環境影響評価方法書を公表。現在、環境影響評価(環境アセスメント)を進めている段階です。
開業時期は未定ですが、与党整備新幹線建設推進プロジェクトチームが2020年12月に、2023年度初頭の着工を求める決議を採択。当時の赤羽一嘉国交相が「重く受け止める」と表明した経緯があります。
しかし、環境アセスメントは難航。新型コロナウイルス感染症の影響に加え、工事が予定されているエリアの住民の反対もあり、手続きが想定通り進んでいないようです。
国交省が与党に伝える
通常は、環境アセスメントを踏まえて、鉄道建設・運輸施設整備支援機構が詳細ルートを決定し、政府、与党が財源を確保します。その後、機構がまとめた工事実施計画を国が認可した時点で着工となります。
下図は、JR東海がリニア中央新幹線建設の説明会資料で示した、環境アセスメントから建設までの流れですが、北陸新幹線でも大枠は変わりません。
現実には、北陸新幹線新大阪延伸の環境アセスメントは終わっておらず、ルートの詳細すら示されていません。そのため、4ヶ月後の2023年度初頭に工事実施計画を認可できるわけもなく、年度末を控えて、国交省が与党に正式に着工断念を伝えたということのようです。
2兆円で作れるのか
北陸新幹線新大阪延伸では、京都府内の山間部に長大トンネルを掘り、大阪府内は大深度も検討するなど、難工事が予想されています。京都府内では環境に対する影響を心配する声も高まっています。
ルートに関しては、京都市内を南北に通るのか、東西に通るのかは大きな関心事ですが、それすら明らかにされていません。
総事業費は約2兆1000億円と見積もられていますが、その財源の裏付けも取れていません。そもそも、金沢~敦賀間や、北海道新幹線の建設費用が上振れする状況で、本当に2兆円あまりで新大阪まで作れるのか、という疑問もあります。
当然の話だが
ということで、「23年春の着工先送り」は、部外者からみれば当然の話にしか思えません。というよりも、環境問題や財源のハードルが高く、そもそも本当に作れるのか、という疑問すら漂います。
事業費が3兆円規模に上振れする可能性は小さくありませんが、その場合、沿線自治体の負担も相当な金額になるはずで、京都府民や大阪府民は納得するのでしょうか。
国交省は、着工の先送りと引き換えに、着工後に予定していた詳細な地質調査や地下水への影響分析などを、前倒しして行う案を示しました。
新幹線を早く作りたいという地元関係者の気持ちは理解するものの、まずは環境アセスを進めて、詳細ルートを公表し、事業費を精査するのが先決のような気もします。(鎌倉淳)