北陸新幹線新大阪駅が、400mの延長で建設されることが明らかになりました。何を意味しているのでしょうか。
延伸各駅の詳細を公表
鉄道・運輸機構は、2024年11月22日に、北陸新幹線敦賀・新大阪間の建設に関する新たな資料を公表しました。
内容は、小浜(東小浜)、松井山手、新大阪の各駅の詳細です。駅の具体的な位置や深さなどが初めて示されました。
新大阪駅の注目点
なかでも注目を集めたのが、新大阪駅です。
資料によりますと、北陸新幹線の新大阪駅は、東海道新幹線新大阪駅南側の駅前ロータリー付近の地下に、東西方向で設置します。
駅構造は2面4線、延長は約400m、幅は50~60mです。駅の深さは、駅周辺の既設構造物に支障しないように決定します。
「延長」の意味
気になるのは、新大阪駅の400mという「延長」です。
今回公表された他駅の「延長」は、東小浜駅が310m、松井山手駅が330mです。
比較すると、新大阪駅の400mは、他駅より70~90m程度長く設定されています。
「延長」が「ホーム長」を意味するのであれば、400mホームは新幹線列車の16両編成に相当します。
しかし、北陸新幹線は最長12両編成なので、ホーム長は300mほどで足ります。東小浜駅や松井山手駅も、それを前提としているようです。
新大阪駅だけが400mの長さで建設するのであれば、将来的に、16両編成が走る山陽新幹線への直通を想定しているのではないか、と勘ぐりたくなります。
分岐部の空間が必要に
ただし、新大阪駅は、東小浜駅や松井山手駅と構造が異なります。
新大阪駅は2面4線で、折り返し設備も備えるため、分岐部が長くなります。これに対し、東小浜駅や松井山手駅は2面2線です。分岐部があったとしても、新大阪駅に比べれば短い距離で済みます。
「延長」が駅構内の分岐部を含めた駅構造全体を指すのであれば、新大阪駅の場合、地下構造として、70~90m程度の分岐部空間が必要になる、という意味かもしれません。
構想は存在するが
新大阪駅に山陽新幹線用の地下ホームを建設する構想は存在します。
新幹線が四国や西九州、東九州へ延伸した場合、新大阪駅での折り返し列車の発着本数が増えるため、現状の山陽新幹線ホームだけでは容量が不足すると見込まれているからです。
国土交通省は、2018年に『山陽新幹線(新大阪駅)への乗り入れのための新たな取組みについて』という文書を公表し、「新大阪駅の容量が既に逼迫しており、新大阪発着の列車の設定には制約があることから、例えば、地下に新たなホームを設けるなどの対策が有効である」という方針を示しています。
したがって、将来的に、北陸新幹線の新大阪駅地下ホームを山陽新幹線と共用にし、新神戸方面への連絡線を作る可能性はあるでしょう。そうすれば、北陸新幹線が山陽新幹線に乗り入れることも考えられます。
実際、北陸新幹線新大阪駅は、東海道・山陽新幹線と並行に設置されます。すなわち、山陽方面に延伸しやすい方角となっています。
直通できないのでは?
山陽新幹線と北陸新幹線は、保安装置の違いなどから、直通はできないとされています。北陸新幹線の「米原ルート」が否定される論拠の一つにもなっています。
しかし、長い目でみて、技術開発が不可能とまではいえないでしょうし、仮に直通が難しいとしても、駅構内のみ共用することも考えられます。
いずれ山陽新幹線が乗り入れてくるなら、いま、16編成のホーム長で建設するという考え方はありうるでしょう。
地下構造に後から手を付けるのは大変ですから、最初に作ってしまったほうが効率的なのは確かです。
西側に引き上げ空間なし
しかし、違う見方もできます。概略図を見る限り、北陸新幹線新大阪駅の西側に空間はありません。
つまり、行き止まりの構造になるようで、西側に引上線を設けるわけではなさそうです。
行き止まり構造の場合、ホームはカベにぶち当たる形で途切れます。すなわち、将来的に山陽方面に線路を延ばすのであれば、その工事の際に、ホームを延伸することは可能でしょう。
となると、いま、16両編成のホームを建設する必要はない、ともいえます。山陽方面への連絡線を建設する際に、ホーム延長を同時におこなえばいい話です。
さらにいえば、東海道新幹線に乗り入れない山陽新幹線列車に、16両編成は過剰です。四国・九州新幹線への乗り入れも予想されますが、それらの新幹線で16両編成は走れません。そう考えると、山陽新幹線の新大阪駅地下ホームが、16両に対応する必要性は高くありません。
16両対応ホームではない?
つまるところ、「400m」は、分岐部を含めた駅構造の長さを示しているにすぎず、16両編成対応のホームを設けるという意味ではないようにも受けとめられます。
北陸新幹線の新大阪駅が、将来的な西側への延伸、つまり山陽新幹線への乗り入れを視野に入れた形で建設されるのは確かでしょう。将来的に、ホーム延伸もできる構造になりそうです。
しかし、いま、北陸新幹線で必要とされている以上にホームを長くとっても、工事費が増えるだけです。
北陸新幹線の「小浜・京都ルート」は、高額な事業費が大問題になっています。あえて新大阪駅の建設規模を大きくして、金額を膨らませるのは避けるのではないでしょうか。(鎌倉淳)