昭和33年の北海道鉄道地図を見てみる。60年で鉄道網はどう変わったか

鉄道網の維持について議論が続いている北海道。かつては全道に鉄道路線網が張り巡らされていました。その往年の姿を、昭和33年の地図で見てみましょう。

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和楽路屋「最新 鉄道旅行図」

以下の地図は、昭和33年(1958年)の北海道鉄道路線を示したものです。鉄道地図として一時代を築いた和楽路屋「最新 鉄道旅行図」。横長ワイド折り畳み式鉄道路線図の、北海道エリアを切り取ったものです。

昭和33年北海道鉄道地図
和楽路屋「最新 鉄道旅行図」昭和33年2月修正版

北海道じゅうに、鉄道路線が張り巡らされています。赤線に太フチが「国鉄幹線」、赤線が「国鉄本線」、黄土色が「国鉄普通線」、水色が「会社鉄道線」という凡例です。

国鉄幹線は、函館~旭川の函館本線、旭川~稚内の宗谷本線、滝川~根室の根室本線の3線のみ。函館を起点に、北海道最北端と最東端を結ぶ路線が、当時は最重要幹線とみなされていたようです。戦後の地図ですが、樺太、千島を領有していた戦前の名残でしょうか。

千歳線は「普通線」

現在、JR北海道の屋台骨を支える千歳線は「普通線」の扱いです。札幌郊外の主力路線学園都市線(札沼線)も「普通線」。ちなみに当時の札沼線は、路線名の通り、札幌と石狩沼田を結んでいました。

オホーツク方面へは、池田~網走の網走本線と、名寄~遠軽の名寄本線が「本線」扱いで、新旭川~北見の石北線は「普通線」です。網走、名寄の両本線と石北線の地位が、その後逆転し、石北線だけが生き残っているのは、みなさんご存じの通りです。

ローカル線の建設は、まだ進められていました。当時、羽幌線は全通しておらず、留萌~初山別(羽幌線)と、遠別~幌延(天塩線)に分かれていました。全国屈指の赤字線として有名になった美幸線や白糠線は開業していません。

現在は重要幹線である石勝線も、未開業です。千歳空港駅(現・南千歳駅)や新千歳空港駅も、まだありません。

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多彩な私鉄

当時の鉄道最東端の駅は、根室でも東根室でもありませんでした。根室からさらに先へ伸びる根室拓殖鉄道があり、終点は歯舞。ここが、当時日本最東端の駅です。根室拓殖鉄道は、根室半島で収穫された海産物などを輸送する目的で敷設された路線でした。

地図には、この他にも私鉄が掲載されています。地図に書かれた路線名をそのまま転載すると、植民軌道、士別軌道、旭川電気、留萌鉄道、天塩鉄道、羽幌炭鉱鉄道、北海道拓殖鉄道、十勝鉄道、雄別炭鉱鉄道、釧路臨港鉄道、北海道庁植民鉄道、美唄鉄道、夕張鉄道、大夕張線、定山渓鉄道、寿都鉄道、大沼電鉄、函館市街線などがあります。

一部は、簡易軌道や植民軌道と呼ばれる、北海道特有の開拓用の路線でした。簡易軌道は全てが掲載されているわけではなく、主要な路線のみ地図に描かれていたようです。

北海道各地に多彩な私鉄が敷設され、地図上では充実していました。ただ、この時点で経営難の路線も多かったようで、北海道のローカル私鉄は昭和30年代から廃止が始まっています。上記の根室拓殖鉄道も、昭和34年(1959年)に廃止されました。

ローカル線の多くは廃止

札幌市電はこの地図に描かれていないので、地図に掲載されている私鉄のうち、現在も旅客営業をしているのは、函館市街線(函館市電)だけです。

北海道の民間企業の私鉄は、その多くが昭和40年代までに廃止されました。旅客を扱う路線としては、昭和62年(1987年)の三菱石炭鉱業大夕張線を最後に全廃されています。貨物を扱う私鉄としては、釧路臨港鉄道の一部が太平洋石炭販売輸送臨港線として、いまも残るだけです。

国鉄でも、地図に描かれているローカル線の多くは、昭和末期に特定地方交通線に指定され廃止されました。池北線(網走本線・池田~北見間)だけが平成元年(1989年)にちほく高原鉄道として第三セクター化されましたが、2006年に廃止されています。

ちなみに、この鉄道路線図を出版していた和楽路屋(ワラジヤ出版)も、2002年に破産して、いまはありません。

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いまの地図と比べてみると

最後に、現在のJR北海道の路線図をみてみましょう。

JR北海道路線図
画像:JR北海道ウェブサイト

この地図が発行された昭和33年から、60年あまり。当時に比べると、現在の北海道の鉄道路線網はスカスカになってしまいました。

残念なことに、JR北海道がこのスカスカの路線網すら維持できなくなってきているのは、みなさんご存じの通りです。2019年3月に石勝線夕張支線、2020年5月に札沼線非電化区間が、それぞれ廃止されることが決まっています。さらなる廃線計画もあります。

このまま時代が進んで、さらに60年経ったら、北海道にはどういう鉄道網が残っているのか。気がかりというほかありません。(鎌倉淳)

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