北海道新幹線の東京~新函館北斗の価格は21,240円? 「北陸新幹線基準」で特急料金を計算してみた

2014年3月開業の北陸新幹線の特急料金が決定しましたが、次に注目となるのは、2016年3月開業予定の北海道新幹線の特急料金です。これについては、現時点で何の発表もありません。

北陸新幹線では、JR東日本とJR西日本の境界駅である上越妙高駅をまたぐと加算料金が設定されました。一方の北海道新幹線は新青森駅以北の全線がJR北海道の運営で、新青森駅がJR東日本との境界となります。北陸新幹線と同様ならば、新青森駅を境界として加算料金が設定されることになりますが、どうなるのでしょうか。

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国土交通省の試算では「通算運賃」

整備新幹線の予定運賃に関する資料は乏しいのですが、一つあります。2012年3月の国土交通省「第9回整備新幹線小委員会」で配布された「収支採算性及び投資効果に関する詳細資料」です。この資料では、東京~新函館間の指定席特急料金が7,040円と試算されていて、当時の新青森までの料金6,500円との差額は540円となっています。新青森での打ち切り計算ではなく、東北新幹線の運賃テーブルをそのまま通算しています。これを見れば、東北・北海道新幹線の料金は通算になる、と考えてしまいます。

しかし、この資料では、北陸新幹線の料金テーブルも掲載されていて、東京~金沢間は5,330円とされていました。実際には上越妙高での加算があり6,780円となりましたので、この資料はとくに意味はなかった、ということになります。つまり、国土交通省の試算がどうであれ、運賃を決めるのはJRである、という単純な話です。

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北陸新幹線基準で計算すると

では、JRはどう考えるのでしょうか。北陸新幹線の特急料金の決定の過程は公表されていませんが、結論だけみれば、上越妙高で打ち切って両社の特急料金を単純合算した価格から、普通車で1割程度の割引を行った、と表現できます。グリーン車は完全打ち切りです。

同様の手法で、北海道新幹線の料金を計算してみましょう。新青森~新函館北斗(渡島大野)の区間距離を新幹線にあてはめると、指定席特急料金は、3,110円となります。これに「はやぶさ」の加算を100円とすると3,210円。それに、東京~新青森の「はやぶさ」特急料金7,200円を加算すると、東京~新函館北斗間の合計が10,410円。運賃は11,880円で、運賃・料金の総額は22,290円となります。これが新青森打ち切り・単純合算の場合の東京~新函館北斗間の値段です。

仮に、北陸新幹線同様に、特急料金を総額から1割を引くとなると9,360円となり、運賃とあわせた価格は21,240円です。これが、北陸新幹線に準じた場合の、北海道新幹線東京~新函館北斗間の運賃・料金となります。

もちろん、これは特急料金を合算から1割引きとしただけの単純な試算なので、「予想料金」というわけではありません。念のため。

対航空で競争力はあるか?

さて、北陸新幹線の料金設定では、対航空での価格競争力も意識されたとみられます。では、北海道新幹線において、この運賃・料金で、対航空での価格競争力はあるのでしょうか。

現在の羽田~函館間の航空運賃は、JALの場合で、普通運賃が35,200円、特便割引3が15,500円~28,300円、スーパー先得が12,000円~となっています。だいたい1週間先程度の実勢価格をみてみると、JALでもANAでも28,000円程度が相場になっていますので、それよりは安くなっています。しかし、3週間くらい先だと、15,000円程度が相場なので、それより高くなります。

航空運賃は流動的ですし、新幹線開業後は設定を変えるでしょうから一概にはいえませんが、新幹線の値段が21,000円程度に収まった場合、閑散期は航空優位、混雑期は新幹線優位となり、価格的には互角といえそうです。

時間的には新幹線は東京~新函館北斗間が最速4時間10分で、新函館北斗駅~函館駅間の接続列車の時間を含めれば東京~函館間は4時間30分程度です。最速列車以外では、4時間40分程度はかかるでしょう。一方の飛行機は、飛行時間が1時間20分、東京駅~羽田空港が1時間、出発まで40分、降機後函館空港~函館中心部まで30分として、3時間30分です。時間に余裕をみて移動したとしても飛行機なら合計4時間は超えないでしょうから、新幹線は時間的には飛行機に及びません。

まとめると、北海道新幹線は東京~函館間において対航空で時間的には不利、価格で互角となり、総合で優位に立つのは難しそうです。ただし、実際には割引きっぷなどが販売されるでしょう。

時速140kmでも「新幹線料金」を取るのか?

ところで、北海道新幹線には、もう一つ問題点があります。新在共用となる青函トンネルの特急料金をどう設定するか、という点です。新在共用でも時速200km以上で走れば新幹線料金で何の問題もないでしょうが、実際には時速140kmでの減速運転が予定されています。現在の在来線と同じ速度で、同じ線路を走るのに、料金だけ新幹線にするのが適切なのか、という疑問があります。

上記の「収支採算性及び投資効果に関する詳細資料」では、青函トンネル部分の料金についての言及は全くなく、問題視されている様子はうかがえません。

一方で、この資料では、九州新幹線長崎ルート向けに新幹線と在来線を通過する場合のフリーゲージトレインの料金について計算方法を例示しています。それによると、秋田新幹線と山形新幹線の実績から、「新幹線区間の通過距離に応じた新幹線料金」+「在来線区間の通過距離に応じた在来特急料金」×70%と設定しています。つまり、在来線区間では在来線の特急料金の7掛けを加算する、という計算方法です。新幹線と在来線の乗り継ぎ割引料金より少し割り増しする、という考え方でしょう。

考えてみれば、青函トンネル区間は、新幹線の軌間で在来線区間を通るのですから、「ミニ新幹線」といえなくもありません。しかし新幹線の速度でも走ること自体は可能なので、ミニ新幹線とも異なります。将来の速度向上も見込まれますので、ミニ新幹線と同じ価格にすると、速度向上時に値上げすることになりますが、速度を上げるたびに値上げするのも理解が得られにくいでしょう。そもそも、この区間だけ別立てでミニ新幹線価格にすると、全体では料金が高くなってしまう可能性があります。

また新幹線には、この他にも減速区間がありますが、料金を割り引いているわけではありません。こうした事情を考えると、青函トンネル区間が時速140kmだからだといって、割引運賃が適用される可能性は低そうです。

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