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北海道新幹線「320km/h化で5分短縮」の大きな意味。JR北海道が正式発表

たった5分の短縮だけど

北海道新幹線の320km/h運転が実現しそうです。JR北海道が120億円を自社負担して、最高速度の向上を求めることを、正式に発表しました。

追加工事費120億円

JR北海道は、2030年度末の開業を予定している北海道新幹線の新函館北斗~札幌間212kmについて、320km/hで走行するための関連工事の実施を国土交通省に要請しました。

同区間のうち、トンネル区間の約170kmでは、約30か所のトンネル坑口に設置される緩衝工を延長します。トンネル区間以外の約42kmについては、約30kmで防音壁を嵩上げし、それに伴って高架橋の強度を上げる工事をします。

北海道新幹線の建設工事は、鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構)が主体となって進められています。JR北海道では追加工事費を約120億円と見積もり、それを同社が負担することによる最高速度の向上を、国土交通省に要請したわけです。同社は、120億円の費用の一部負担を、国に求めています。

現在、同区間は260km/h運転を予定していますが、320km/h運転が実現すれば、新函館北斗~札幌間の所要時間が5分短縮します。

北海道新幹線高速化
画像:JR北海道プレスリリース

法令では260km/h

北海道新幹線は全線が整備新幹線として建設されています。整備新幹線の最高設計速度は、全国新幹線鉄道整備法第7条第1項の規定に基づく整備計画において、260km/hと定められています。したがって、北海道新幹線も全線が最高設計速度260km/hを前提に設計されています。

ただ、東北新幹線ではすでに320km/hでの営業運転が行われており、半世紀前に作られた東海道新幹線ですら、最高速度は285km/hです。整備新幹線の規定は時代遅れで、とくに、北海道新幹線は首都圏との長距離輸送を担うため、最高速度の向上については以前から議論されていました。

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「費用」と「着工時期」がハードルに

2010年8月27日の整備新幹線問題検討会議では、北海道新幹線について、青函共用走行区間における運行形態のあり方、並行在来線の経営のあり方と並び、最高設計速度の向上が課題として挙げられました。

しかし、このときは、「最高速度を360km/hに設定した場合、時間短縮は図られるが、騒音防止の対策等により費用が増大するため、費用対効果が縮小」「整備計画の変更(中央新幹線の場合、審議会への諮問~答申まで1年3ヶ月)や環境影響評価の実施(3~4年間)により、着工が大幅に遅れることとなる」の2点を理由に、最高設計速度の見直しは行わないとの結論に至っています。(平成24年1月27日整備新幹線小委員会資料)

積極的に解決するべき課題

その後、2012年1月~3月に開催された整備新幹線小委員会では、北海道新幹線速度向上問題が改めて議論され、4月のとりまとめ(整備新幹線未着工区間の「収支採算性及び投資効果の確認」)では、以下のように記されました。

「整備新幹線の整備区間における新幹線列車の最高設計速度は、現時点では、昭和40年代の検討に基づき、時速260kmと設定されている。しかしながら、我が国や諸外国においても、線区によっては既に時速300kmもしくはそれ以上の速度で営業運転が行われている。最高設計速度の向上には、相応の環境対策の検討が必要となるが、全体としては、収支採算性や投資効果を高めるものと期待される。このため、最高設計速度の向上に向け、制度的・技術的な制約要因を整理し、できるだけ早期かつ積極的に課題を解決していく必要がある。」

つまり、2012年の段階で、北海道新幹線の320km/h化は、国交省で「積極的に解決するべき課題」として認識されたわけです。それから7年を経て、ようやく、最高設計速度の向上が実現に向け、具体的に動き出すわけです。やっとという感じでしょうか。

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東北新幹線でも速度向上

議論の過程で課題とされた「費用」の問題については、今回、JRが負担をすることで決着します。一方「着工が大幅に遅れる」ことについては、すでに着工済みなので、直接的な影響はありません。速度向上の追加工事により、開業時期が後ろ倒しになるとの発表もありません。

前述したように、北海道新幹線とつながる東北新幹線では、宇都宮~盛岡間で320km/hでの営業運転がすでに行われています。整備新幹線区間となる盛岡~新青森間についても、正式発表はありませんが、JR東日本が320km/h運転を実現する方針を固めたとの報道がなされています(朝日新聞2019/01/13)。

東京~札幌4時間半

JR北海道は、長期経営ビジョンで「東京~札幌間4時間半」を目標にすると記しています。今回の記者発表でも、JR北海道の島田修社長は「札幌~東京間4時間半に挑戦したい」と改めて意欲を示しました。

東京~札幌4時間半、というのは、北海道新幹線着工前から意識されていた数字です。第8回新幹線小委員会配布資料(2012年3月15日)では、盛岡~札幌間の全線で320km/h運転を実施した場合、東京~札幌間は4時間33分で結ばれると試算しています。

北海道新幹線所要時間
画像:「収支採算性及び投資効果の確認」に関する参考資料(国交省)

現状では、盛岡~新青森間と、新函館北斗~札幌間について320km/h運転の方向が固まったものの、青函共用区間の最高速度向上がどこまで可能なのかは見通せません。島田社長も記者会見で、「青函トンネル内は勾配がきつく、260km/hが限界だろう」と述べ、北海道新幹線全区間での320km/h運転には悲観的な見方を示しました。

360km/h運転は実現するか

一方で、JR東日本は360km/hでの運転を目指す新型車両「E956(ALFA-X)」の開発を進めています。開発が順調に進めば、近い将来、東北新幹線では360km/h運転が実現する可能性が高くなっています。

今回、JR北海道は、320km/h運転を目指すとしていますが、将来的には、当然360km/h運転も視野に入っているはずです。青函共用区間を除く、北海道新幹線全線で360km/h運転が実現すれば、共用区間の速度が遅くても、4時間半に近い所要時間で、東京~札幌間を結ぶことは可能でしょう。

今回の発表内容だけを見れば、「5分の短縮」です。しかし、整備新幹線全体で見ると、昭和時代に決められたカビの生えたルールを改める大きな一歩になりそうです。(鎌倉淳)