北海道新幹線札幌駅は「地下」で最終調整か。タワマンが少し気になる

「現駅案」も「東側案」も行き詰まり

北海道新幹線の札幌駅のホーム位置問題は、「地下案」が有力となってきました。これまで調査してきた「現駅案」と「東側案」のいずれにもまとまらないためです。鉄道運輸機構は、「地下案」を検討対象に加えることを、近く正式表明する見通しです。

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1年近く議論

北海道新幹線は2030年度末に札幌駅まで延伸する計画で工事が進められています。当初計画では、現在の札幌駅の1、2番線の位置に新幹線ホームを作る予定でした。

しかし、計画を綿密に詰めていくと、1、2番線に新幹線ホームを作った場合に在来線ホームが不足し、現在の在来線の列車本数を維持できないことがわかりました。

このため、新幹線札幌駅ホームをどこに建設するかが大きな問題となり、建設主体の鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道運輸機構)と、JR北海道で話し合いが行われてきました。

2016年10月には、予定通り1、2番ホームに作る「現駅案」と、駅東側にホームを作る「東側案」に絞り込まれ、1年近くにわたり議論が続いています。

札幌駅

北側ホーム増設ができない理由

現駅案では、当初、JR札幌駅北側にホームを増設することが検討されました。しかし、朝日新聞2016年4月28日付によりますと、「北側に11番ホームだけを増設する案では在来線93本が入らなくなり、朝夕を中心に約3万人が影響を受ける」「11・12番ホームと12番線を増設する案でも75本の在来線が入らず、2万4千人に影響する」とのことで、ホーム増設では対応できないことが明らかになっています。

そもそも、駅北側にはすでにビルが建ち並んでいます。NHK2017年9月29日放送によりますと、北海道新幹線の開業予定が前倒しされて2030年になったことで、「建物の移転が間に合わないこと」がわかり、北側に新たなホームを作ることは困難だそうです。

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4面8線では捌けないのか

現在のJR札幌駅は5面10線あり、これを4面8線に減らしても、引き込み線を整備してダイヤを調整すれば、4方向の在来線を捌けるとの見方もあります。

しかし、北海道新聞9月23日付によりますと、「桑園駅周辺などへの引き込み線設置を検討したが、高架橋の大規模改修など難工事になることが判明」し、困難であることがわかりました。

1、2番線ホームに新幹線駅を建設する場合、工事期間中はこれまでと同じ本数の在来線列車を4面のホームで捌かなければなりません。そのため、引き込み線設置など在来線の容量増加策は短期間で行う必要がありますが、それも難題のようです。

東側案が難しい理由

一方、東側にホームをつくる案では、在来線ホームを減らさずに済みます。しかし、ホームの一部が、駅南側にあるJRタワーにかかるという問題が生じます。

JRタワーの一部を改修して新幹線スペースに回す予定でしたが、2000年に着工したJRタワーは、現行の耐震基準になる前につくられています。そのため、一部でも改修するなら、新耐震基準を満たすように全体を補強する必要があります。

NHKによると、この費用は「100億円規模」に達するそうで、コストが大きなネックになります。

東側案は、在来線とも地下鉄南北線とも離れているため、利便性にも難があります。そのため、巨費をかけて作る価値があるのかという指摘もあったようです。

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地下案が浮上

1年近く「現駅」か「東側」かで議論をしていましたが結論は出ず、最近になって、「地下案」が浮上しました。地下案そのものは当初からありましたが、建設費用が東側案よりさらに巨額になるのは間違いなく、これまで鉄道運輸機構もJR北海道も否定的な姿勢を見せていました。

しかし、9月に入ってから報道各社で「地下案」の検討が報じられました。北海道新聞10月7日付によりますと、「建設主体の鉄道建設・運輸施設整備支援機構とJR北海道は10日に記者会見を行い、駅地下にホームを造る『地下案』を検討対象に加えることを正式表明する」とのことです。

他に選択肢がなくなってきたため、地下案を検討せざるを得ない状況に追い込まれたようです。時期的にみて、このタイミングで検討するということは、地下案での最終調整が有力になってきたといえそうです。

石井啓一国土交通相も、9月26日の記者会見で、「地下案」の検討を容認しました。国交相が自ら発言したことでもあり、国交省としても地下案で進める姿勢を示したといえます。

地下案のメリット、デメリット

札幌駅位置問題は、そもそも2016年度中には決着しているべき話でした。しかし、いくら議論しても結論が出なかった以上、費用以外に大きな問題がない「地下案」に収束するのは必然ともいえます。

地下に新幹線駅を作った場合、在来線の運行に影響がないだけでなく、冬季の荒天時でも利用者はホームで快適に待つことができるといったメリットがあります。

また、設計の自由度が高いため、将来的に旭川や千歳空港へ延伸するときも作りやすいでしょう。道路地下に建設するなら、工事も容易です。

地下ホームは札幌駅南側の北5条通に建設される案が有力で、駅南側の商業エリアにも近く、地下鉄南北線や東豊線との乗り換えにも便利です。しかし、JR在来線ホームとはかなり離れますので、JR線同士の乗り換えは不便になります。それが最大のデメリットでしょう。

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どこで北5条通に入るのか

新幹線札幌駅が北5条通に建設されるなら、線路をどうやって引っ張ってくるのかも気になります。

現在の北海道新幹線建設計画では、小樽方面からの札樽トンネル(26.2km)がJR函館線に沿った形で琴似に至り、桑園~札幌駅間で地上に出る予定です。

札幌駅が地下化されるなら、桑園~札幌間で地上に出ることはなくなり、そのまま地下を東へ進むことになります。北5条通に入るなら、北5西8の伊藤邸と北5西7の京王プラザホテル札幌の敷地の下を抜けるルートが合理的に見えます。

タワーマンションが建設予定

ただ、伊藤邸の敷地の一部は住友不動産に売却され、「ラ・トゥール札幌伊藤ガーデン」という地上30階建ての賃貸タワーマンションが建つ予定です。竣工は2019年3月で、今からこの計画の変更を求めるのは無理がありそうです。

ラ・トゥール札幌伊藤ガーデン 敷地図
ラ・トゥール札幌伊藤ガーデン 敷地図。画像:住友不動産ニュースリリースより

タワーマンションの基礎は深いため、新幹線はその直下を通らない形でのルート設定をしたいところです。地図を見る限り、そこを避けるなら京王プラザホテル、札幌センタービル、三井ガーデンホテル札幌の地下を走ることになります。

新幹線の地下駅は、地下鉄東豊線の地下20mより深い位置に建設されますので、おおむね地下25m程度でしょうか。タワーマンションの基礎がどのくらいの深さなのかは物件によるのでわかりませんが、北海道新幹線がうまく避けられるのかが、少しばかり気になるところです。(鎌倉淳)

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