広島電鉄循環線が開業しました。広島市中心部を45分で一周する路線です。路面電車の環状系統としては札幌市電に続く国内2例目ですが、運行本数が極端に少ない異例の路線です。地元住民に加え、観光客をターゲットに据えるようで、定着するのでしょうか。
3月28日開業
広島電鉄の循環線は、広島市中心部の約7kmを約45分で一周する路線で、2026年3月28日に開業しました。
広電本社前を起点とし、皆実町六丁目、比治山下、的場町、紙屋町東などを経由して再び広電本社前へと戻るルートをたどります。運行系統は、時計回りに相当する「外回り」と、反時計回りに相当する「内回り」が設定されます。
日本国内の路面電車の環状系統としては、2016年にループ化した札幌市電に続く2例目です。

「広島駅にはまいりません」
開業2日目の3月29日、午後の外回りに、本通から乗車してみました。

やってきたのは「被爆電車」として知られる650系電車。停留所に停車すると、ドアがすぐに開かずに、「この電車は広島駅にはまいりません」と2度繰り返してから、開扉しました。すぐにドアを開けないのは、乗り間違いを防ぐ目的でしょう。

乗車すると、座席がおおよそ埋まる程度の混み具合で、前方に立ち客が集中しています。客の多くは、開業に駆けつけた「試し乗り勢」と見受けられました。紙屋町東や八丁堀を経由しても、地元の利用者とおぼしき人の乗降はみられません。

停留所も面目を一新
稲荷町を過ぎると、開業区間に入ります。といっても、2025年8月の駅前大橋ルートの開業前には電車が運行していた区間ですので、全くの新規開業区間というわけではありません。
ただ、停留所に新しい上屋が設置されていたり、軌道が真新しく整備されていたりして、面目を一新しています。

開業区間は比治山下までの3停留所間のみ。比治山下では、筆者とともに数人が降車して、5系統に乗り換えて、広島駅方面に向かっていました。
循環線開業にあわせて、比治山下も乗換指定電停に追加され、乗換券が発行されます。それを使えば、5系統で広島駅方面へ乗り継げます。

運転本数は少なく
循環線の運転本数は極めて少なく、平日は内回り・外回りともに約25分間隔で各15本の運行、土休日は約45分間隔で各8本の運行です。平日は2車両、土休日は1車両で回せる運行規模です。
また、平日・土休日ともに10時から16時の日中時間帯のみの設定で、朝夕のラッシュ時の運行はありません。
多くの需要は見込めず
政令指定都市の中心部を走る路線の運行本数が、これだけ限られているのは驚かされます。その理由は、循環線設定の経緯にあります。
循環線は、駅前大橋ルートの開通によって、当初は廃止が検討されていた的場町経由の既存区間を、地域住民に配慮して維持するために設定した系統です。

つまり、需要があるから設定したのではなく、メインルートから外れた停留所の救済のために作った系統です。そのため、そもそも多くの利用者を見込んでおらず、限られた運行本数となったようです。
実際、この日に乗った限りでも、沿線住民が実用で利用している姿は、ほとんど見受けられませんでした。
観光路線として活用
広島電鉄では、循環線を観光路線としても活用しようとしているようです。筆者が乗車した3月29日は、内回り、外回りとも被爆電車として知られる650系で運用していました。そのため、被爆電車同士のすれ違いもみられました。

被爆電車は、これまでも通勤時間帯などに運用されてきましたが、観光客が「狙って乗る」のは簡単ではありませんでした。しかし、土休日の循環線が被爆電車限定になれば、循環線の時刻表を確認することで容易に乗れるようになります。
広島電鉄は、循環線を被爆電車中心で運用すると明確にしているわけではありません。ただ、被爆電車に限らず、特別な車両を用いることで、「車両に乗るための路線」として位置づければ、循環線が新たな観光資源になりうるということです。
平日は片回り2運用で地元住民の通勤・通学需要に対応しながら、土日は1運用で車両を絞り、観光客をメインターゲットに据える、という手法でしょうか。
課題は外国人観光客
課題は、外国人観光客の乗り間違いでしょう。この日は、日本語で「この列車は広島駅にはまいりません」と、くどいほどアナウンスしていましたので、日本人の誤乗は見かけませんでした。
しかし、スーツケースを抱えた西洋人のグループが乗っていて、稲荷町を過ぎて、Googleマップを見ながら的場町で下車していきました。おそらくは、広島駅に近づいていたはずの列車が、予期せぬ方向に進んだので、慌てて降りたのでしょう。
「広島駅にはまいりません」のアナウンスの意味が伝わっていなかったようで、今後は、英語のアナウンスも徹底したほうがよさそうです。
誤乗は乗り換え電停で
また、外回りの誤乗客は、的場町で下ろすよりも、比治山下まで乗せてから、5系統に案内した方が親切に感じられました。
的場町で下ろされても、広島駅まで行く系統はありませんので、稲荷町まで歩いて戻るほかなく、スーツケースを抱えた一団は大変だったのではないか、と推察します。
とはいえ、誤乗の問題は、いずれ循環線が定着し、旅行者にも認知されていけば解決していくことでしょう。新たな系統が、広島市のシンボルとなるような路線に成長することを期待したいところです。(鎌倉淳)






















