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姫路城、入場料2500円の衝撃。「観光インフレ」で値上げが広まるか

名所旧跡にも値上げの波

姫路城の入場料が2,500円に値上げされます。国内の歴史的建造物の入場料としては、おそらく最高値です。各地の名所旧跡でも値上げが相次いでおり、観光インフレは高まりそうです。

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2.5倍の大幅値上げ

姫路市は姫路城の入場料にあたる「縦覧料」を、現行の1,000円から2,500円に値上げする方針を明らかにしました。ただし、姫路市民は1,000円で据え置きます。また、6歳以上18歳未満の小人は、現行の300円を無料とします。

姫路城の入場料は、かつて、大人600円、小人200円でした。平成の大修理を終えた2015年3月に大人1,000円、小人300円の現行価格に値上げされました。今回は、およそ10年ぶりの改定で、一気に2.5倍とする大幅値上げです。

姫路市では、関連する改正条例案を17日開会の市議会に提案し、周知期間を置いたうえで2026年3月に新価格を導入する予定です。

姫路城

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マイナンバーカードで確認

市民かどうかは、マイナンバーカードで確認する方針です。詳細は明らかではありませんが、姫路市民のマイナカードを持っている人が、市民料金で購入できる形にするのでしょう。マイナカードを持っていない人がどうなるかは不明です。

また、新たに1年間入場できる年間縦覧料も設定します。価格は5,000円です。

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必要経費を積み上げた結果

姫路城には、城内にある姫路市立動物園を移転させたうえで、江戸時代の施設「作事場(さくじば)」を復元する計画があります。また、石垣の耐震補強もおこないます。

姫路市によると、人件費増や物価高の影響も続くことから、こうした整備のために、今後10年間で約280億円がかかると見込んでいます。

今回の値上げは、そうした見通しに基づいたものです。清元秀泰市長は「単純に縦覧料が2.5倍になるというよりも、必要経費を積み上げた結果が2,500円」と理解を求めました。

外国人観光客が急増していることから、外国人料金を設定する案もありましたが、判別が難しいなどの理由で見送られました。

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混雑緩和は?

最近の姫路城は、混雑が深刻になっています。筆者も2024年に姫路城を訪れましたが、午前中に訪問しても、天守閣に入るまで大行列。内部でも階段ごとに列ができ、最上階は通勤電車のラッシュ時のような状態で、見学どころではありませんでした。

姫路城の高い価値は認めるとしても、あの混雑で2,500円か…、と想像すると、割にあわない気もします。

姫路城混雑

姫路市によると、入場者の減少を織り込んだ価格設定にしたそうなので、値上げによる混雑の緩和も期待しているようです。

しかし、印象としては、いまの姫路城の訪問客の多くが外国人です。遠方から日本に来て、価格を理由に姫路城訪問を取りやめる旅行者は少ないでしょう。

日本を訪れる外国人観光客は、今後も増加が予想されています。ならば、値上げにもかかわらず、姫路城の混雑がより深刻になる可能性もあるでしょう。

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デジタルチケットを試験導入

混雑への対応として、姫路市は、時間帯を指定して優先的に入場できるデジタルチケットを、2025年4月1日から試験導入します。

デジタルチケットは、9時~15時30分の30分毎に各500枚を設定します。入場日3カ月前から販売し、指定された時間帯のチケットで待ち時間なく優先入場できます。

今回は試験導入ですが、最近の混雑をみるにつけ、いずれデジタルチケットによる時間指定入場が標準になっていく可能性が高そうです。

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各地で値上げ相次ぐ

日本の城郭施設では、値上げが相次いでいます。

国宝5城では、彦根城が2024年10月に800円を1,000円に値上げしたのを皮切りに、2025年4月には、松本城が700円を1,300円に、松江城が680円を800円に、それぞれ値上げします。

国宝以外でも、大阪城が2025年4月に600円を1,200円に値上げする予定です。

姫路城の2,500円は、これらを上回り、国内の城郭施設への入場料としては最高値になります。

他の史跡や歴史的建造物と比較しても、法隆寺が2025年3月1日に1,500円を2,000円に値上げしますが、2,500円を上回る場所は、調べた限り、国内には見当たりません。おそらく、姫路城が日本最高水準になるでしょう。

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各地で値上げ相次ぐ

気になるのは、この値上げの影響です。日本の史跡や歴史的建造物の入場料は数百円が相場で、比較的手頃でした。

国宝5城でも、犬山城は550円と安価です。国宝以外の現存天守では、弘前城520円、丸岡城450円、備中松山城500円、高知城420円、松山城520円、丸亀城400円と、500円前後が相場となっています。宇和島城に至っては200円です。

しかし、昨今のインフレによる人件費増や、補修費増の負担が大きくなっていることから、これらの城にも、値上げが広まる可能性は高いでしょう。姫路城という「トップ」の価格が大きく切り上がったことで、各施設の値上げの許容度が高まるからです。

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「観光インフレ」が高まるか

国内旅行を巡っては、最近は宿泊施設の価格が高止まりしています。交通機関の運賃も値上げが相次ぎ、割引きっぷの割引率も縮小傾向です。テーマパークもダイナミックプライシングで値上がりし、スキー場ではリフト券の大幅値上げが続いています。

いわば「観光インフレ」が起きているわけです。そのなかで、国内旅行の名所旧跡は、比較的手頃な価格で訪れることができていました。

しかし、観光インフレの波は、名所旧跡にも及び始めています。姫路城の大幅値上げはその象徴にも感じられ、日本人にとって、国内旅行が手が届きにくくなってしまわないか心配です。(鎌倉淳)

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