長期間不通となっていて、JR北海道が「単独では維持困難」としている日高線の鵡川~様似間について、代替交通導入コストの試算が明らかになりました。BRTは105億円、DMVが47億円、バスが2億円となっています。
コンサルタントが試算
JR日高線は高波の被害により、2015年1月から鵡川~様似間で運休が続いています。2016年11月にはJR北海道が「単独では維持困難」な路線に分類することを明らかにし、廃線を含めた協議を自治体に求めています。
これに対し、沿線自治体などでつくる「JR日高線沿線地域の公共交通に関する調査・検討協議会」は、鉄道の代替交通導入にかかるコストを試算した外部コンサルタントの調査結果を明らかにしました。
それによりますと、バス車両が専用レーンなどを走る「バス高速輸送システム(BRT)」が105億7000万円で最も高く、線路と道路の両方を走行できる「デュアル・モード・ビークル(DMV)」が47億1000万円、乗合バスが2億6000万円となりました。
専用道への工事費用が高額に
BRTの導入費用が高くなったのは、線路をバス専用道にするための工事費用が93億円にも上るためです。鵡川~様似間は116kmもあり、それをBRT道にするには相当の投資が必要であることが、改めて明らかになりました。
DMVの47億円も高額ですが、これは車両開発費として10億~20億円、車両導入費として20億円などを見込んでいるためです。DMVはまだ実用化されていない技術のため、厳密な試算にはなっていない可能性もあります。
乗合バスは、車両購入や停留所設置に経費がかかるだけなので、初期費用は安くなっています。
収支はいずれも赤字
運行開始までに要する期間は、DMVは車両開発に2年程度かかり、製作に8~9年かかるとしています。BRTは計画と施設整備にそれぞれ3年で、計6年かかるとしています。バスは2年程度です。
こちらも、未開発技術のDMVに関しては、営業開始まで十分な時間が必要であるとみているようです。
単年度収支はいずれも赤字を見込んでおり、DMVは9億5000万円、BRTは5億2000万円、バスは1億8000万円の赤字としています。
試算は現在の鉄道代行バスと同本数を運行すると仮定した場合で、運用によっては削減の余地もあるとしています。
専用道に意味はない
乗合バスは既存技術が確立していますし、設備投資もほとんど不要ですから、導入費用が安いことは、調べる前からわかっていた話だと思います。
それでもこの調査を行ったのは、BRTやDMVと乗合バスでは、ここまで大きな価格差があることを有権者に説明するためだったのでしょうか。
日高地方のような道路渋滞の少ない地域で、専用走行スペースを使うBRTやDMVを導入する意味はほとんどありません。
試算をみる限り、BRTを作るくらいなら鉄道復旧しても投資額は大きく変わらなさそうですし、観光装置としてDMVを投入するにしても、費用対効果には見合わない印象です。(鎌倉淳)