平成筑豊鉄道が「あり方」議論へ。法定協議会設置、年10億円の赤字を見込み

輸送密度646

福岡県の第三セクター、平成筑豊鉄道のあり方が議論されることになりそうです。沿線自治体が法定協議会の設置を県に求めることが明らかになりました。

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伊田線など3路線を引き継ぐ

平成筑豊鉄道は福岡県の第三セクター鉄道です。旧国鉄特定地方交通線の伊田線、糸田線、田川線の各線を引き継いだほか、2009年4月からは、北九州市からの委託で門司港レトロ観光線のトロッコ列車も運行しています。門司港レトロ観光線を除く営業キロは49.2kmです。

近年は人口減少などによる利用者減少に苦しんでおり、将来的に多額の赤字も見込まれています。

各社報道によれば、同社が門司港レトロ観光線を除く3路線の今後30年間の経営状況をシミュレーションしたところ、毎年約10億円の営業赤字が続くとのことです。

平成筑豊鉄道

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年度内に協議会設置

平成筑豊鉄道は、旧国鉄路線を引き継いだ経緯もあって、沿線9市町村からは補助を受けています。その額は、年間3億円程度。しかし、将来的に毎年10億円以上の赤字が続くとなると、沿線自治体が支えきれるのかは疑問です。

そのため、同社は6月の株主総会で、路線のあり方を含む法定協議会の設置を沿線9市町村に要請することを発表しました。

これに対し、沿線各自治体は受諾の方針を固め、法定協議会の設置を10月末に福岡県に要請することになりました。県は2024年度内にも協議会を設置する方針で、路線の「あり方」を含めた議論がおこなわれることになります。

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輸送密度646

日本経済新聞2024年6月28日付によれば、平成筑豊鉄道の2023年度決算は営業赤字が5億1800万円。補助金などを加味した最終赤字は5800万円です。沿線人口の減少などで利用者は減少傾向で、23年度の輸送人員は135万人と、ピークだった30年前から6割減っています。

鉄道統計年報によれば、2021年度の輸送密度は3路線で646となっていて、旧国鉄の第一次特定地方交通線の廃止基準(2,000人)を大きく下回ります。人口減少でさらに下がると予想される現状で、多額の設備更新をしつつ路線を維持していくのか、きちんと議論すべきタイミングなのは確かでしょう。

すでに沿線自治体の議会では、説明が開始されています。読売新聞9月3日付によりますと、みやこ町議会の全員協議会では、「鉄道の運営形態の変更や、バス高速輸送システム『BRT』、路線バスを代替案として示し、路線バス案が最も費用がかからないなどと説明した」とのことです。

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情報開示乏しく

現時点では、議論の方向性は不明確です。筆者が調べた限り、平成筑豊鉄道の協議に向けての資料などは公表されておらず、外部から先行きを推測するのは難しい状況です。

気になるのは、今回に限らず、平成筑豊鉄道の情報公開が乏しい点です。同社のウェブサイトをみても、利用状況や経営状況の記載はほとんどなく、各年度の貸借対照表が1ページ掲載されているだけです。損益計算書すら見当たりませんでした。

税金から億単位の補助を受けながら運行している鉄道会社にしては、納税者に対する情報公開がお粗末に感じられます。公費負担を増やす可能性があるのならば、積極的な情報開示をしなければ理解が得られないのではないか、と思わなくもありません。(鎌倉淳)

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