JR西日本が、関空特急「はるか」に新型車両271系を投入します。2023年には北梅田駅への乗り入れも決まっており、「はるか」は新しい時代を迎えます。
3両6編成を製造
「はるか」は、米原・京都~関西空港間を結ぶ空港アクセス特急で、1日30往復を運転しています。車両は281系を使用し、6両編成が基本。編成定員は248名ですが、近年のインバウンド需要の激増で、輸送力が不足するようになってきました。
そこで、JR西日本は、「はるか」に増結用の3両付属編成を投入すると発表しました。投入するのは新型車両271系で、3両6編成の計18両を製造し、既存の281系6両編成と併結して運転します。
新型車両271系の営業開始時期は2020年春頃です。
座席数は1.5倍
現在「はるか」で使われている281系は6両が9編成、3両が3編成です。多くの「はるか」は6両編成で走っていますが、一部列車は6両+3両の9両編成で走っています。
新型271系は3両を6編成投入しますので、「はるか」用車両は、6両が9編成、3両も9編成となります。これにより、全ての「はるか」を、「6+3」の9両編成で統一できることになります。
9両編成で運転することで、「はるか」1列車あたりの座席数は、現在の約1.5倍となります。
全席モバイルコンセント
271系の外観は、現行281系「はるか」(下写真)のイメージを継承したデザインです。
281系と較べると、271系は、先頭車両は運転台の位置が高くなっていて、広い貫通扉が設置されています。デザインは281系を踏襲していますが、作りは683系に似ている印象を受けます。
車内では訪日外国人向けフリーWi-Fiサービスを提供するほか、全座席にモバイル用コンセントを設置します。車内LEDディスプレイは4カ国語対応で、停車駅・運行情報などを案内します。
これまでデッキ部にあった大型荷物スペースは、客室内に設置。スーツケースなどを置けるようにします。セキュリティ対策として、荷物スペースやデッキ部に防犯カメラを設置します。
車体の安全性の向上も図ります。衝突対策や衝撃吸収構造の採用などで車体構造を強化。EB-N装置(運転士異常時列車停止装置)の設置や、運転台計器類の二重系化をおこないます。
JR西日本の在来線特急としては、最新装備を備えた車両になりそうです。
基本編成はどうなる?
今回の新型車両271系は、付属編成として登場します。となると、気になるのは、基本編成の281系でしょう。
「はるか」の既存車両281系は、1993年~1995年に製造されました。車齢約25年で老朽化が進んでおり、JR西日本では、2024~2027年に、新型車両に置き換えることを公表しています。
となると、正式発表はないものの、「はるか」基本編成281系も、この時期に271系に置き換えられる可能性が高そうです。
北梅田駅乗り入れ
「はるか」の変身は、車両だけではありません。JR西日本では、うめきたエリアで梅田貨物線の地下化をすすめていて、2023年春に完成します。同時に北梅田駅が設けられ、「はるか」も停車する予定です。
つまり、2023年春には、「はるか」が、大阪市中心部である梅田エリアに停まるようになるわけで、利便性は大きく高まります。
将来的には、北梅田から建設予定のなにわ筋線を経由して、JR難波を経て天王寺に至るルートを走ることも決定しています。
283系、681系も更新
JR西日本では、2024~2027年に、281系だけでなく、283系と681系の更新も予定しており、約110両を新製車両に置き換える計画です。
283系は「オーシャンアロー」と呼ばれる車両で、紀勢線特急「くろしお」に使用されています。681系は、北陸線特急「サンダーバード」に使用されています。
つまり、関空特急、紀勢線特急、北陸線特急の車両が、2020年代半ばに、一気に更新されるわけです。
在来線特急再編のとば口に
北梅田駅開業と同じタイミングの2023年春には、北陸新幹線の敦賀開業が予定されています。北陸線は敦賀以北の交流区間がJR西日本から切り離されるため、関空、紀勢、北陸の各特急は、全て直流車両で運用できるようになります。
一方、JR西日本は、中期経営計画で、「関西空港アクセスおよび広域ネットワークの強化」を掲げています。となると、関西空港アクセスを担う「はるか」の運転区間が拡大する可能性もあります。
北陸線特急と「はるか」が同時期に車両を更新し、一体的に運用できるのであれば、「はるか」が北陸新幹線と接続する敦賀まで運転することもありうるでしょう。271系の683系に似た外観は、その可能性を感じさせます。実現すれば、北陸エリアから関西空港へのアクセスが、格段に向上します。
新型車両271系は、「はるか」付属編成での投入という、やや小規模なスタートとなります。しかし、関西エリアの在来線特急再編のとば口となるのかもしれません。(鎌倉淳)