国土交通省が、羽田空港の発着枠を争う政策コンテストの審査結果を発表しました。鳥取、石見、山形、大館能代の4空港に3年間の配分が決まり、三沢と下地島に1年間のトライアル運航を認めました。
4空港が枠獲得
国交省では、羽田空港について、地方自治体と航空会社が共同で提案した取り組みを競わせ、優れた提案に発着枠を配分する制度を取り入れています。「羽田空港政策コンテスト枠」などと呼ばれるものです。
2019年12月に、2020年冬ダイヤから3年間使用できる5枠についてのコンテストの提案が募集され、このほど結果が発表されました。応募があった全国7空港のうち、鳥取、石見、山形、大館能代の上位4空港への配分が決定しました。
また、僅差だった5位の三沢と6位の下地島(みやこ下地島)の2空港に対しては、トライアル運航を認めました。6位の羽田~下地島線はスカイマークが提案したもので、実現すれば初めての路線となります。7位の佐賀空港は、コンテスト参加空港で唯一、発着枠を獲得できませんでした。
コンテスト参加空港と共同提案航空会社、得点は以下の通りです。
1. 鳥取空港 ANA 1225点
2. 石見空港 ANA 1192点
3. 山形空港 JAL 1163点
4. 大館能代空港 ANA 1033点
5. 三沢空港 JAL 997点
6. 下地島空港 SKY 994点
7. 佐賀空港 ANA 918点
3空港は継続配分
政策コンテスト枠の募集は2回目ですが、今回は、配分する発着枠数を前回の3枠から5枠に拡大しました。
提案に対する評価は、外部有識者が行いました。評価基準は、関係機関の連携体制や、需要の開拓に向けた施策、運航コスト削減のための施策などです。総得点1位が鳥取(1225点)、2位が石見(1192点)、3位が山形(1163点)と続きました。
この3空港は、2020年夏ダイヤまで前回の政策コンテスト枠を持っており、継続して配分されることになります。
4位の大館能代空港(1033点)までが発着枠獲得確定で、2020年冬ダイヤから1枠ずつ配分されます。
5位の三沢(997点)と6位の下地島(994点)は、得票点差が3点と僅かだったため、両者に対して2021年夏ダイヤから1年間のトライアル運航を認めました。準備期間として前後各半年間の枠も付与されるため、2020年冬ダイヤから2022年夏ダイヤまで、実質2年の発着枠が付与されます。その後、実績を有識者が再度評価し、1枠の最終配分先を決めます。
新規は下地島のみ
政策コンテスト枠は、2014年夏ダイヤで初めて設定されました。前述したように、このときは3枠で、ANAに鳥取線と石見線、JALに山形線が配分されました。
今回は、当面、上記6空港に配分され、ANA鳥取線は1日5往復に、JAL三沢線は4往復に、ANA大館能代線は3往復に、ANA石見線とJAL山形線は2往復に、スカイマーク下地島線は1往復になります。下地島線のみ新路線で、それ以外は増便または増便継続です。
5枠の配分期間は2020年冬ダイヤから2022年冬ダイヤ(2020年10月25日~2023年3月25日)まで。2023年夏ダイヤ以降は、2022年夏ダイヤ途中までの取り組みや成果などを検証した上で、原則2年間の継続使用やコンテストの再実施などを検討します。
前回コンテストの際も、当初は2年間の枠配分でしたが、2度にわたり計6年半に延長されています。そのため、今回もある程度の実績を残せば、5~6年の運航継続が可能になりそうです。
ジェットスターは残るのか
今回の結果の注目は、なんといっても羽田~下地島路線でしょう。みやこ下地島空港という、新しいターミナルを作ったばかりの空港に、業界3位のスカイマークが就航するという点で斬新です。
ただ、不安点もあります。下地島へは成田空港からジェットスター・ジャパンが就航しており(新型コロナで運休中)、客の奪い合いが起こる点です。成田~下地島線の搭乗率は、74.4%(2019年10~12月)で、LCCの搭乗率としては高いとはいえません。
そこへ格安運賃のスカイマークが羽田路線で参入すれば、競合が激しくなります。スカイマークの参入により、十分な需要が掘り起こせればいいのですが、成田空港の立地の不利を理由にジェットスターが撤退する可能性もありそうです。
地元自治体としては、それでも羽田路線を優先したい、ということなのかもしれませんが。
佐賀はなぜ落ちたのか
今回のコンテスト枠では、結局のところ、落ちたのは佐賀空港だけです。ただ、佐賀の提案がひどかったかというと、そうでもありません。各空港の提案内容を見てみましたが、どれも似たり寄ったりで、佐賀だけが取り立てて劣るというわけではありません。
それでも佐賀が最下位になった理由ははっきりしませんが、議事録を見ると、福岡に近い立地で福岡のビジネス客をターゲットとしていること、すでに1日5枠も配分されていること、などが理由と察せられます。
佐賀は福岡空港も近いですし、すでに1日5往復も羽田路線があるのなら、他地域に比べて新たな羽田枠を必要とする理由に乏しいと判断されたのでしょう。
枠拡大は可能か
個人的な感想を書けば、下地島路線がなければ、今回のコンテストはつまらない結果だったと思います。したがって、トライアル運航とはいえ、スカイマークの下地島線に発着枠が配分されたのは何よりでしょう。
下地島は、こうしたコンテストでもなければ、なかなか羽田発着枠が配分されなかったでしょうし、政策コンテスト枠の存在価値を示すためにも、枠配分には意味があったと思います。
今回の政策コンテストの応募資格は、1便・3便ルール(転用制限のある少便数路線枠)の適用を受けている18路線、年間旅客数平均が50万人程度の路線(帯広、出雲、米子、青森、釧路、女満別、岩国、富山)、新規路線のいずれかに該当する空港です。
隠岐や五島などといった離島空港への羽田空港路線が増えれば活性化につながるとは思いますが、コンテスト応募資格のある空港が多いのに枠は少なく、離島や過疎地の空港が上位に入るのは難しそうです。
コンテスト枠を増やせればいいのですが、羽田空港の発着枠は貴重で、簡単な話ではありません。既得権益化している1便・3便ルール適用の全枠をコンテスト枠に移すという議論もあるようで、今後はそういう形で枠拡大を検討してもよさそうです。(鎌倉淳)