JR羽田新線の計画の全容が見えてきた。大井から羽田まで地下新線を建設へ。都心直結線計画にも影響か。

JR東日本が計画する「羽田新線」の全容が見えてきました。大井貨物ターミナルから羽田空港まで約6キロの地下新線を建設し、新宿駅や東京駅と直結する、というものです。総事業費が3000億円に及ぶ一大事業になります。

計画の概要は、日本経済新聞が報じました。それによりますと、JR東海道本線の田町駅付近から分岐する東海道貨物線を旅客用に転用。さらに羽田空港まで6キロの地下新線を建設するそうです。同時に、りんかい線大井町駅、東京テレポート駅への接続用の路線も建設。これにより、羽田空港から東京駅や新宿駅、新木場駅へ乗り換えなしで直結できます。新宿駅~羽田空港は23分になり、東京駅~羽田空港は18分になるそうです。上野東京ラインに乗り入れれば、大宮まで50分程度になるでしょう。

広告

地下新線を建設

東京貨物ターミナル駅から羽田空港までは直線距離で約6キロです。つまり、この報道が事実としますと、東京貨物ターミナル駅付近から羽田空港まで地下新線を建設するということになります。

当初、この計画が報じられた際は、東海道貨物線の天空橋付近から分岐すると見られていたため、その実現性に疑問を投げかける声もありました。地下区間の分岐工事は難航が予想されるうえに、完成したとしても東京貨物ターミナル以南の東海道貨物線は運行本数が多いため、線路容量の問題が発生するからです。

しかし、東京貨物ターミナルから地下新線を建設するとなれば、工事は容易になりますし、貨物線の営業路線と重なる部分は新線を建設するということですから、線路容量の問題からも逃れられます。一方で、工費は膨らみます。その金額が3000億円ということです。

e233
写真:JR東日本

都心直結線との優先順位は?

3000億円は巨額です。しかし、別に構想されている都心直結線の4000億円に比べれば安価です。都心直結線は、押上から新東京駅を経て泉岳寺に至る地下新線計画で、成田空港から京成、京急を経て羽田空港までを直結するものです。もし都心直結線も整備し、JR羽田新線も整備するとなれば、総額で7000億円もの巨費が東京の空港アクセス改善のために投じられることになります。

さすがにこれは大きすぎるので、もしJR羽田新線ができるのであれば、都心直結線構想は凍結になるかもしれません。JR羽田新線構想も、都心直結線構想も、公的資金を前提にした事業ですので、両方が同時に建設される可能性は低そうです。

では、JR羽田新線と、都心直結線のどちらが優先されるでしょうか。工費の絶対額が安いという点では羽田新線が有利ですし、新宿と羽田が直結されるのも魅力です。埼玉方面からの羽田空港アクセスも劇的に改善するでしょう。一方で、都心直結線は成田・羽田の両空港直結ができますし、成田空港と東京駅エリアの時間短縮効果が大きいという利点があります。

計画の推進力という点では、事業主体がはっきりしているJR羽田新線のほうが強いでしょう。JR東日本が本気で計画を推進しはじめたのであれば、JR羽田新線の実現性は大きく高まりましたし、そのぶん都心直結線の完成は少し遠のいたといえるかもしれません。

 JR新幹線・特急全車両大図鑑

広告
前の記事筑豊電鉄が新型低床車両を導入へ。JR直方駅までの延伸可能性も調査。
次の記事ジェットスターが「見舞金」制度を新設も、オプション運賃を値上げ。「Starter Plus」は1,480円に。