「ぐるっと九州きっぷ」の研究。3日間14,300円をどう活用するか

使いどころが難しい

JR九州が「ぐるっと九州きっぷ」を2022年4月以降も継続発売すると発表しました。普通・快速列車に3日間乗り放題というフリーきっぷの使いこなし方を研究してみましょう。

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2016年から発売継続

「ぐるっと九州きっぷ」は、JR九州の普通・快速列車に3日間乗り放題となるフリーきっぷです。別に特急券を購入すれば、九州新幹線や在来線特急にも乗車できます。

発売開始は2016年。それまで発売されていた「アラウンド九州きっぷ」と「HAPPY BIRTHDAY ♪ KYUSHU PASS」から、特急列車の乗り降り自由を切り離した形で発売されました。

以来、継続発売されていて、このほど、2022年4月以降も発売すると発表されました。2022年度の「ぐるっと九州きっぷ」の概要は以下の通りです。

「ぐるっと九州きっぷ」2022年度の概要

■利用期間:2022/04/01(金)~

■販売期間:2022/03/01(火)~

■有効期間:3日間

■きっぷの効力:JR九州全線の快速、普通列車の普通車自由席に乗り降り自由。九州新幹線や特急列車は、必要な特急券を別途購入すれば乗車可。

■価格:ネット14,300円、窓口15,800円

■販売箇所:JR九州インターネット列車予約、JR九州の主な駅、駅旅行センター、JR九州旅行支店、九州内の主な旅行会社

インターネット販売の価格は2021年度から据え置きです。窓口販売は14,800円だったところ、15,800円となり1,000円の値上げです。

36ぷらす3

1日あたり4,766円

「ぐるっと九州きっぷ」は、インターネット価格で14,300円。1日当たり4,766円です。似たきっぷにJR東日本の「週末パス」がありますが、そちらは8,880円ですので、1日あたり4,440円。ほぼ同水準といっていいでしょう。

「週末パス」にも共通することですが、1日あたり4,000円以上のきっぷに、普通・快速列車だけで元を取るのは簡単ではありません。

JR九州の運賃表と照らしあわせると、4,766円の元を取るには221km以上の乗車が必要で、門司~八代(226.8km)に相当します。この区間を乗るだけでも普通・快速列車なら4時間以上かかりますので、半日がかりです。それを3日間続けなければ元が取れません。

となると、基本的には新幹線・特急に、ある程度乗車する前提で使用するきっぷと考えたほうがいいでしょう。

普通・快速列車だけの旅を計画しているなら、「旅名人の九州満喫きっぷ」(3日間11,000円)があります。「旅名人」は私鉄にも乗車できますので、そちらのほうがお得でしょう。

もちろん、期間中なら「青春18きっぷ」(5日間12,050円)もお得であることは言うまでもありません。

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観光特急を乗り歩く

「ぐるっと九州きっぷ」のオーソドックスな使い方としては、新幹線・特急で目的エリアに至り、ローカル線で周遊する、といった旅行でしょう。

とくに、JR九州はローカル線の観光列車が豊富なので、乗り歩くなら、料金券を追加で支払えれば乗車できる「ぐるっと九州きっぷ」が適しています。

たとえば、博多を起点として、「36ぷらす3」(鹿児島中央~宮崎)「海幸山幸」(宮崎~南郷)「指宿のたまて箱」(鹿児島中央~指宿)を組み合わせて乗車する、2泊3日の旅を考えてみましょう。

乗車券:博多→(鹿児島中央)→宮崎→南郷→(南宮崎)→(鹿児島中央)→指宿→(鹿児島中央)→博多
運賃:7,370円+1,310円+4,400円+6,160円=19,240円

このルートの場合、「ぐるっと九州きっぷ」14,300円を使えば、通常運賃より4,940円お得となります。

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九州一周は?

きっぷの名称のとおり、九州を「ぐるっと」一周するとどうなるでしょうか。

乗車券:博多→(鹿児島中央)→(宮崎)→(大分)→博多
運賃:11,770円

九州を単純に一周する場合、乗車券は1枚で済んでしまうので、普通にきっぷを買って途中下車しながら回ったほうがお得です。

鹿児島中央往復

単純往復についても見てみます。九州新幹線を活用して博多~鹿児島中央間を往復するケースを考えてみましょう。

乗車券:博多→鹿児島中央→博多
運賃:5,610円×2=11,220円

こちらも元が取れません。しかし、たとえば宮崎~長崎(8,800円×2=17,600円)といった南九州と西九州の往復は、元が取れることもあります。

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「周遊」に威力

ここまで見てきたとおり、「ぐるっと九州きっぷ」は、九州内の単純往復や単純周回で元を取るのは難しい一方、途中で「周遊」する際に威力を発揮するきっぷです。とくに、D&S列車など、観光特急を乗り歩くのに相性がいいといえます。

博多起点の場合、南九州周遊が「定番」になりますが、残念ながら、肥薩線八代~吉松間が2020年豪雨で長期間不通になっていて乗車できません。その点で、いまの「ぐるっと九州きっぷ」には、使いどころが難しい部分もあります。

JR九州では期間限定で発売している「みんなの九州きっぷ」もあります。新幹線・特急も含めて乗り放題で、土休日2日間15,000円。これが使えるなら、「ぐるっと」より、お得感は強いでしょう。ただし、「みんなの九州きっぷ」は、4月以降の継続発売が発表されていません。

「ぐるっと九州きっぷ」は、平日も含めて、通年で使用できる点も長所といえます。新幹線・特急をどう組みあわせて使い尽くすか。利用者の「腕」が試されるきっぷかもしれません。(鎌倉淳)

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