岐阜県が、LRTの導入に向けての議論を開始します。岐阜駅付近を中心に、岐阜羽島駅や長良川国際会議場、岐阜大方面に向かう3ルートを検討します。具体的な事業計画を検討するための調査費3,000万円が、9月の補正予算案に計上されました。
新しい交通システム導入
岐阜県は、新しい交通システムの導入可能性を検討するための調査費3,000万円を盛り込んだ、一般会計補正予算案を発表しました。新しい交通システム導入に係る事業スキーム検討業務が1,000万円、交通再編検討業務が2,000万円です。
江崎禎英知事は、7月の県議会一般質問で、岐阜県内のまちづくり政策について、「高齢者に加え、子どもや若者の活動範囲を拡大するためにも新たな交通インフラの整備が必要」と述べ、「LRTを有力な候補として検討を始めた」ことを明らかにしています。
具体的な整備区間は、岐阜羽島駅~岐阜県庁~岐阜駅、岐阜市内~岐阜大学~岐阜インターチェンジの南北縦走路線と、岐阜駅~金華山~長良川国際会議場の周回路線の3ルートです。
開業時期は10年後をめどとしています。調査は年度内におこない、年度末には一定の結論を出す予定です。
関ルートの検討も
岐阜県のLRT検討の動きを受けて、岐阜市東部地区の自治会連合会が、9月11日に江崎知事を訪れ、岐阜市と関市を結ぶルートについても検討を要望しました。
岐阜市東部には、かつて名鉄美濃町線が走っていましたが、2005年に廃止されています。要望書によると、廃線後は慢性的な交通渋滞が発生し、路線バスも高齢者や障害者にとって利用しづらくなっているとして、LRTの整備を求めました。いわば「美濃町線復活」を要望したわけです。
読売新聞9月12日付によりますと、知事は「まず構想が出ている基幹の路線を検討し、できた段階で広げていくことも含めて考えていく」と答えたそうです。
岐阜市の姿勢
一方、LRTが敷設される岐阜市の柴橋正直市長は、9月11日の市議会の一般質問で、「現在実施している事業の実現を大前提として宇都宮市や富山市など国内はもとより、架線レス車両を導入している台湾をはじめとした海外の先進事例を幅広く調査研究するなど、より詳細な課題の整理を行ってまいります」と答弁しました。
岐阜市では、現在、市街地の再開発事業や名鉄の高架化事業を実施しています。そのため、新たな費用負担が大きいLRTについては慎重な様子とも報じられてきました。
これに対し、柴橋市長は「反対しているということではなく、課題を一つずつしっかりと対応して検討を進める必要がある」とし、前向きな姿勢を強調しています。
実現できるのか
現時点では、LRTの実現性については、何ともいえません。岐阜羽島駅~岐阜ICの南北路線だけで約25km、さらに周回路線を加えれば、30km前後にも達する大構想だけに、そう簡単に整備できるものではないでしょう。
とはいえ、バス運転士不足が深刻化し、今後も解決の見通しが立たないなか、輸送力が高い市内交通機関として、LRTが有力な選択肢となり得るのは確かです。どのような調査結果となるのか、楽しみにしたいところです。(鎌倉淳)