「フルムーン夫婦グリーンパス」が販売終了。40年の歴史に幕

国鉄時代からのロングセラー

「フルムーン夫婦グリーンパス」の販売が終了したことがわかりました。例年、10月~6月が利用期間ですが、2022年10月以降の発売はなく、事実上の廃止となりました。

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1981年発売のロングセラー

フルムーン夫婦グリーンパスは、2人の年齢の合計が88歳以上の夫婦が、同一行程で旅行する場合に利用できるJRの特別企画乗車券です。JR全線のグリーン車が5日間・7日間・12日間にわたり乗り放題で、2人で84,330円~130,320円という破格値が売り物です。

国鉄時代の1981年に発売が開始されたロングセラー商品で、2021年に40周年を迎えたところです。「青春18きっぷ」とともに、JR全線が乗り放題となる貴重なきっぷとして存続してきました。

例年、10月1日~6月30日が利用期間で、8月下旬に詳細が発表されてきました。しかし、2022年は公式発表がなく、筆者が問い合わせたところ、今後の発売が予定されていない旨が伝えられました。

JR各社のウェブサイトでも、フルムーン夫婦グリーンパスの情報は表示されなくなっています。1年ごとの企画きっぷなので、販売終了の明確な告知はありませんが、実質的な廃止と受け取ってよさそうです。

2022-2023年版の販売が行われないことにより、フルムーンパスは40年の歴史に幕を閉じたことになります。

グリーン車

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年間2万枚程度

JR東日本は、2016年度までフルムーンパスの販売数を公表していて、年間約1万~1万2000万程度でした。JRグループ全体としては年間2万枚前後の売上げだったとみられ、総額20億円程度の売上規模だったと推測できます。

青春18きっぷが60億円~70億円規模ですので、その3分の1程度ですが、シニア旅行の需要を喚起する意味で存在価値があるとみられていました。

リタイア世代の夫婦グリーン車旅行ですから、宿泊する旅館も相応の水準になるはずで、観光業全体への経済波及効果も小さくありませんでした。この点では、節約旅行のツールである青春18きっぷの及ぶところではなかったでしょう。その販売をにわかに終了したことには、驚きを禁じ得ません。

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時代に合わなくなり

JRグループがフルムーンの販売終了に踏み切った理由は、はっきりとはわかりません。ただ、フルムーンパスが、時代に合わなくなってきているという事情はありました。

まず、フルムーンの利用条件である夫婦合計88歳という年齢基準です。夫婦平均44歳という年齢は、フルムーンが登場した1981年には「シニアの入口」だったのかもしれませんが、令和時代では現役真っ盛りです。シニアの乗り放題きっぷを提供するには若すぎるように感じられます。

また、「夫婦」という利用条件に関しても、生涯独身の方が増えている状況で、結婚を選択した人にだけ破格の割引を提供する形が適切なのかという問いかけも浮上していました。さらに、近年は、同性婚カップルへの対応を求める声も上がっていました。

コロナの影響で、高齢者の旅行が激減したという状況も追い打ちをかけたことでしょう。

昭和的すぎて

インターネットに対応していない「紙のきっぷ」であることも、時代遅れになりつつありました。指定券の発券枚数に制限がなく、今となっては制度設計として緩すぎるようにも感じられます。

そしてなにより、価格が安すぎるという問題もありました。

フルムーンパスの発売当初の価格は7日間70,000円で、1日あたりの価格は今と大差ありません。

当時は東北新幹線開業前で、現在のように北海道から九州まで一日で移動できることを想定しておらず、その前提の価格設定だったのでしょう。

新幹線が延びるにつれて、フルムーンの利用価値は高まり、実質的な価格は安くなりました。青春18きっぷが、整備新幹線の開業にともなう並行在来線移管で利用価値を減じてきたのと対照的です。

要は、昭和の価値観で発案され、昭和の鉄道網を前提に、昭和のシステムで設計された、きわめて「昭和的なきっぷ」だったわけです。よく言えば、おおらかな仕組みでもあったのですが、経営が厳しくなってきたJR各社には、徐々に重荷になっていたのかもしれません。

国鉄民営化の経緯もあり、人気のある企画きっぷはJRになっても継続してきましたが、やめどきを図っていたようにも思えます。

そこへ、性や結婚を巡る価値観の変化があわさり、販売終了という判断になったのではないでしょうか。

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青春18きっぷは?

フルムーンパスの販売終了により、国鉄時代から続くJR乗り放題きっぷは「青春18きっぷ」だけになりました。

青春18きっぷには、指定席券の発券枚数の問題などはなく、結婚に対する価値観の変化とも無縁です。年齢も性別も制限しないので、誰にでも平等なきっぷといえます。

しかし、紙のきっぷで、自動改札非対応という扱いにくさがあり、いつまでも今の形でいいのか、という部分で課題もあります。

1年ごとに発売される企画きっぷは、次年度に発売される保証があるわけではない、という事実からすれば、「青春18きっぷ」もまた、いつまでもあると信じるわけにはいかないのでしょう。(鎌倉淳)

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