福岡空港は「混雑空港指定」でどう変わるか。路線開設が難しくなり、新規参入LCCには逆風。チケットは値上がり?

福岡空港が2016年3月27日から、混雑空港に指定されます。福岡空港はたしかに混雑していますから、混雑空港に指定されると聞いても、「そりゃそうだよね」程度にしか思わなかった人も多いのではないでしょうか。しかし、実際にはかなり大きな影響がありそうで、とくに航空券価格が値上がりする、という見方が出ています。

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混雑空港とは?

混雑空港とは、航空会社がその空港発着の路線を開設したい場合に、事前に国土交通大臣の許可(混雑空港使用許可)を受けなければならない空港を指します。

根拠法令は航空法107条の3で、混雑空港は「当該空港の使用状況に照らして、航空機の運航の安全を確保するため、当該空港における一日又は一定時間当たりの離陸又は着陸の回数を制限する必要があるものとして国土交通省令で指定する」としています。

国土交通省令では、成田国際空港、関西国際空港、東京国際空港、大阪国際空港の4空港を指定していますが、2016年3月からこれに福岡国際空港が加わるわけです。

福岡空港写真:福岡県空港計画課

「続けている限りは今のまま」

混雑空港に指定されると、定期便の新規就航は国の許可制となり、1時間あたりの発着回数に上限が設けられます。そのため、混雑時間帯では新規就航が困難になります。一方、これまで運航していた路線はそのまま運航が継続できますので、既存路線には影響はありません。影響を受けるのは増便や新規開設です。

小川洋・福岡県知事は、2015年9月11日の定例記者会見で、以下のように述べています。

「現在でも既に朝夕のピーク時間帯では、国内線、国際線とも、新規就航、増便が難しい状況になっています。しかし一方で、ピーク時間帯を除けば、新規就航あるいは増便が国際線を中心に続いています。その傾向はこれからも続きますが、ピーク時間帯について言えば、今、路線を持っているところは、休止等をしない限り、一度やめてもう一度手を挙げるというのは難しいですが、続けている限りは今のままですので、そこは航空会社の経営判断だと思いますが現状維持ができます。」

「休止をしない限り、現状維持ができます」。意地悪な言い方をすれば既得権益は維持されて、新規航空会社の就航が難しくなるわけです。すでに十分な発着枠を持っている大手航空会社やスカイマークにはそれほど大きな影響はなさそうですが、今後路線を開設したい新規航空会社には高いハードルになります。とくに、春秋航空日本や新生エアアジア・ジャパンといった、新規参入LCCには痛手でしょう。

2015-2016年冬ダイヤでは増便ラッシュ

混雑空港の指定は2016年夏ダイヤからですので、2015-2016年冬ダイヤまでが、国の許可の要らない新規就航の最後のチャンスになります。航空会社はそれをすでに察していたのか、2015年秋から冬にかけて新規就航や増便が相次いでいます。

とくに多いのが韓国路線で、10月25日には大韓航空が仁川線を1日3往復から4往復に増便、エアプサンが釜山便を1日3往復から4往復に増便、12月2日からはチェジュ航空が仁川線を1日1往復から2往復にします。

そのほか、香港エクスプレスが10月に香港線を増便、セブパシフィックが12月にマニラ線を開設などの動きもあります。国内線でもピーチやジェットスターが増便をしています。

これらが需給を反映した増便なのか、混雑空港指定を見越しての枠確保が目的はわかりませんが、需給にしては増便が多すぎる気もします。

空港枠は10年近く「プラチナ化」

知事発言にもあるように、これからも、混雑時間帯以外での増便や新規開設は可能なようです。ですから、福岡空港で新規路線や増便が行われなくなるわけではありません。

一方で、福岡空港の時間帯のいい発着枠は、これからは「既得権益」になってしまうわけです。手放せば二度と手に入らないプラチナ発着枠です。それが航空会社間の競争を鈍らせてしまうのではないか、と心配する人もいるでしょう。新規航空会社の参入が難しくなるのなら、旅客が増えれば航空券価格が値上がりする可能性は否めません。

福岡空港では二本目の滑走路建設が始まっていますが、供用開始は早くても2024年度だそうです。それまでは、福岡空港の発着枠は「プラチナ化」することになりそうです。

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