2016年3月に開始されたえちぜん鉄道と福井鉄道の相互乗り入れで、結節点の田原町駅をまたいで両鉄道を乗車した利用客が、前年度の2.7倍になったことがわかりました。地方私鉄の相互乗り入れという珍しい試みは、ひとまず一定の成果を挙げたようです。
2016年3月に直通運転開始
この相互乗り入れは、えちぜん鉄道三国芦原線の鷲塚針原駅から田原町駅を経由し、福井鉄道の越前武生駅までを結ぶものです。田原町駅で両線のレールをつなぎ、2016年3月27日に相互乗り入れによる直通運転が開始されました。
福井県が2016年4月~2017年3月の利用状況をまとめたところ、田原町駅をまたいで両鉄道を乗車した利用客は1年間で約13万2600人にのぼり、2015年度を8万3463人も上回りました。実に2.7倍の増加です。
通学定期は4.3倍に
利用者数は切符、定期券、回数券、共通一日フリーきっぷの発売枚数から推測したもので、相互乗り入れの開始前にあった連絡乗車券の販売枚数と比較した数字です。そのため、前年との比較では必ずしも正確な統計とはいえませんが、大幅な利用者増をもたらしたことは間違いなさそうです。
とくに通学定期の伸びが著しく、1年間の販売数は1,118枚に達し、前年度比4.3倍となりました。利用者増の約6割を通学定期客が占めるそうです。沿線に福井大学や仁愛女子高校などの学校があるためとみられます。
相互乗り入れの効果もあり、えちぜん鉄道全体の2016年度利用者数も過去最高を記録、2015年度を9万7671人上回り、355万8628人となりました。
毎時1本程度しか直通しないのに
両社の場合、相互乗り入れといっても、直通運転する列車の本数は日中で毎時1本程度にすぎません。それでもこれだけの効果があるのですから、「乗り換えをなくす」ことが、鉄道利用において大きな意味があることを、改めて感じさせます。
複数の鉄道事業者が存在する地方都市はあまりなく、似たような試みが各地で起こるとは思えませんが、一つの参考事例にはなりそう。鉄道事業者間の垣根を越えたシームレスな鉄道網の構築は大切なようです。(鎌倉淳)